”肺”の食養生「息切れ、喉のつかえ」など4つの症状別おすすめの食べ物を専門家が指南
マスク生活や運動不足から、肺機能が衰えている人が多くなっているという。しかし、肺は症状が出づらい臓器で、自覚症状が出たときには手遅れになっていることもある。そこで、国際中医薬膳師が東洋医学ならではの「肺」の捉え方と、食べ物で不調を改善する方法を紹介。この時期、多くの人が気になる花粉症対策も含む「肺にいい食養生」を身につけたい。
肺の状態は大腸や皮膚、免疫にも影響する
「中医学では、体内にある臓器を五臓六腑と表し、肺はその1つで“肺臓”とも呼ばれます。肺臓は、肺だけでなく鼻や喉の粘膜も含めて呼吸器全般を指し、西洋医学より広く捉えるのが特徴です」
そう話すのは、国際中医薬膳師の瀬戸佳子さん。
「肺の調子を整える場合は、肺や呼吸に関連するところだけでなく、ほかの臓器との連携も考えます。特に、肺は大腸や皮膚の状態とも深くかかわっていますから、食べ物を選ぶ際も、これらの状態に合わせてアプローチすることが大切です」(瀬戸さん・以下同)
具体的には、自分の体の状態を、「空咳(からぜき)が出やすい」「息切れしやすい」「痰が多い」「喉がつかえる」の4つのタイプに分け、それぞれにおすすめの食品と好ましくない食品があると、瀬戸さんは言う。
「季節や体調に応じて、いまの自分がどのタイプに当てはまるか、特徴をまず把握します。そして、おすすめ食材中心に食事を摂るようにすると、症状は緩和していきます。新型コロナの感染が気になるいまはタイプを問わず、多様な発酵食品で腸を整えることが、万人向けの肺活につながります。空咳が出る人や、新型コロナ後遺症で咳が出る場合は、喉に潤いをもたらす山いもやりんごを摂るのも有効です。一方、気をつけたい食品の1つが、女性が好んで飲むしょうが湯。しょうがは香辛料なので空咳の人が摂ると、症状が悪化する可能性も。また、痰が多く、絡みやすい人は花粉症になりやすいのですが、痰を溶かす大根や海藻、きのこ類などの食材を摂り、油っこいものや乳製品の摂りすぎを控えると痰も抑えられ、花粉症予防につながります」
便秘や肌荒れなど、一見関係ないように思える不調がスムーズな呼吸の妨げになっていることもある。症状を悪化させないよう食事にも気をつけ、肺の健康を保とう。
体の不調別 肺活にいい食べ物はこれ!
■空咳が出やすいタイプ(肺陰虚・はいいんきょ)
<特徴>
空咳が出やすく、喉がイガイガしやすいタイプ。肺に供給される水分が不足している状態で、すぐに喉が渇き、口の中や粘膜がつねに乾燥している。また、やせ型の人に多く、寝汗をかくという特徴も。汗を大量にかくサウナや、冬はホットカーペットなどで体を乾燥させるのはNGだ。
<おすすめの食べ物>
体全体が乾燥しているので、肺や呼吸器を中心に潤してくれるものを摂るといい。たとえば、山いも、梨、りんご、ビワ、柿、ユリ根、白きくらげ、アーモンド、銀杏、落花生など。逆に、唐辛子やしょうがなどの香辛料、カレーなどの発汗を促す辛いものの摂りすぎは避けよう。
■息切れしやすいタイプ(肺気虚・はいききょ)
<特徴>
肺の力が弱く、ちょっとしたことでもすぐ息切れしてしまうタイプ。元気がないうえ、疲れやすく、呼吸が浅い。また、少し動いただけでも汗をかく、風邪をひきやすいといった特徴も。このタイプの人は、睡眠不足が大敵。しっかり休息を取って養生することが大切だ。
<おすすめの食べ物>
免疫力全体が下がっているので、体力、気力を補い、なおかつ肺を元気にしてくれる食べ物がおすすめだ。たとえば、山いも、ご飯などの穀類、いも類、豆類、干ししいたけ、肉、魚などをしっかり摂ろう。NGなのは食事を抜くこと。体力が回復するまで、ダイエットはお預けに。
■痰が多いタイプ(痰湿・たんしつ)
<特徴>
体の中に余分な水分がたまりやすく、痰や鼻水が多いタイプ。太り気味でがっしりした人に多く、体力はあるのに体が重だるく、動くのが億劫になってしまう人も。また、喉に痰が絡んでいる状態が続くので、肺の通りも悪くなり、コロナの重症化リスクも考えられる。
<おすすめの食べ物>
水分代謝を高め、体の中にある余分な湿気を取ることが大事。たとえば、大根、海藻、玉ねぎ、きのこ、里いも、しょうが、あさりなどがおすすめ。NGは乳製品やバター、揚げ煎餅など油っこいもの、刺身などの生もの、甘いもの、冷たいもの、もち米などで、過食も避けること。
■喉がつかえるタイプ(気滞・きたい)
<特徴>
実際には何もないのに、喉に何かがつかえているように感じるタイプ。咳払いが多く、つねに喉がイガイガしているため、喉の粘膜を傷めたり、風邪をひきやすい傾向に。ストレスが主な原因で、イライラしやすい、頭痛がする、胸や脇が張って、胸苦しさや息苦しさを感じる人も多い。
<おすすめの食べ物>
気の巡りをよくし、ストレス発散作用のあるものを摂りたい。たとえば、柑橘類、ミント、しそ、セロリ、せり、三つ葉など香りのあるもの。ジャスミンやラベンダー、バラなどアロマ効果のあるハーブティーも◎。避けたいのは、乳製品の摂りすぎと暴飲暴食。お酒の飲みすぎは要注意。
教えてくれた人
国際中医薬膳師 瀬戸佳子さん
国際中医薬膳師で、源保堂鍼灸院(東京・表参道)にて漢方に基づく食養生のアドバイスを行っている。著書に『季節の不調が必ずラク~になる本 花粉症 夏バテ カゼ』(文化出版局)。
取材・文/北武司 イラスト/青木宣人
※女性セブン2022年3月17日号
https://josei7.com/
●マスク生活で肺機能低下に…肺の老化チェックリスト&肺年齢テストで危険度を確認