お酒を久々に飲むと酔う理由 酒が強い人と弱い人の違い「日本人の40パーセントは酒豪と下戸の中間タイプ」
「久しぶりの飲酒で、思ったより量が飲めなかった」「お酒に弱くなっていた自分にビックリした」という経験がある人は多いかもしれない。なぜそのようなことが起こるのだろうか。肝臓専門医に「正しい飲み方」を聞いた。
Q.久しぶりのお酒で、すぐ酔ってしまうのはなぜ?
A.お酒を飲まない日が続くと、アルコールを分解する酵素の働きが弱まるため
久しぶりに皆と楽しい酒を飲んだ――しかし、「2年ぶりの忘年会や新年会だっただけに、“自分なりの飲み方”を忘れていて、やらかしてしまった…」という声も。
久しぶりの飲酒で早く酔いが回ったり、思ったより量を飲めなかったりするのはなぜだろう。肝臓専門医でアッヴィ合同会社所属の浅部伸一さんが解説する。
「日本人は酒豪が約50%、下戸(げこ)が約10%。残りの約40%が強い遺伝子と弱い遺伝子の両方を持つ中間層。中間層タイプはもともと弱いのですが、ほどほど飲めるくらいまで酒に強くなれるタイプです」
酒が強い人と弱い人の違いは「アセトアルデヒド(エタノールの代謝産物で、顔が赤くなったり二日酔いの原因となる物質)」の分解酵素である「ALDH2」酵素の活性遺伝子の型によるといわれている。どの遺伝子を持っているかで、「飲める」「飲めるようになる」「飲めない」の3つに分割されるのだという。
■「ALDH2」酵素の活性遺伝子の型
●活性型(酒に強い人)
飲んでも顔が赤くならない。
●不活性型(酒に強くなれる人)
酒は飲めるが、顔が赤くなりやすい。分解能力は「強い人」の16分の1しかないが、ある程度は飲める。
●失活型(弱い人)
酒に弱く、ほとんど飲めない。奈良漬けを食べただけで顔が赤くなる人も。
「強い人は飲まない期間があってもお酒との向き合い方は変わりません。弱い人は体質的にお酒を受けつけないため、もともと飲もうとは思わない。そして、強くなれる人は飲めば変化が生じる。そのわけは前述の分解酵素にあるのです」(浅部さん)
適度な飲酒で健康に注意
酒を常飲していると、「ALDH2」が活性化する。酒に強くなれるタイプは飲酒を繰り返すうちに、アルコールの分解能力が高まるのだ。
また、ミクロゾームエタノール酸化系(MEOS)という肝臓に多くある酵素群の働きも大切で、頻繁な飲酒により、このなかの「CYP3A4」や「CYP2E1」という酵素が活発に働くようになる。
「飲酒を控えた生活が続くと、これらの酵素の働きが鈍くなります。だから、久しぶりの飲み会に参加すると、以前は平気で飲めた量でもフラフラになってしまうのです。私も1か月ほど酒を断つという実証実験をしたところ、禁酒明けは少量の酒で酔っ払ってしまいました」(浅部さん)
となると、欠かさず酒を飲む方がいいのだろうか。
「毎日の飲酒には弊害があって、その1つが『CYP2E1』がアルコール代謝を行ったときに生じる活性酸素の存在です。アルコール性の肝機能障害を引き起こす可能性があります」(浅部さん)
常飲によって酒に強くなれる人もいるが、体はダメージを受けると理解しておこう。
教えてくれた人
アッヴィ合同会社(自治医科大学附属さいたま医療センター消化器内科元准教授) 浅部伸一さん
取材・文/藤岡加奈子 イラスト/ナガイクミコ
※女性セブン2022年2月3日号
https://josei7.com/
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