薬を減らすために今日からできる5つのこと 高血圧ほか病気別・減薬法を医師が解説
普段の生活をするなかで、風邪薬や便秘薬、高血圧薬など薬に頼る場面は多い。特に、持病を抱えている人は、毎食のように多種類の薬をのんでいるだろう。しかし、薬を多く使用することで弊害がある場合もある。体調を整えながらも減薬をしていくにはどうすれば良いのか、医師に聞いた。
風邪薬や便秘薬ののみすぎに注意
薬の「のみすぎ」の弊害は、医師や薬剤師の目が届かない市販薬にもおよぶ。多くの医師が警鐘を鳴らすのは風邪薬だ。新潟大学名誉教授で医師の岡田正彦さんが言う。
「熱や咳、鼻水など広い症状を抑える総合感冒薬には、さまざまな成分が含まれています。つまり、それだけ副作用が出やすいということ。そもそも風邪そのものを治療する薬は存在しない。つらい症状を緩和したいときだけ、必要最低限のむことを推奨します」(岡田さん)
たかせクリニック院長の高瀬義昌さん(高ははしごだか)は、特に高齢者は注意が必要と話す。
「高齢で体が弱っている人は、薬の成分をうまく消化できず体に負担がかかってしまう。特に市販薬は量の調整がしづらいゆえ、この傾向は顕著です。また、認知症の人は、総合感冒薬の抗ヒスタミン剤が原因でせん妄が起きることもあります」(高瀬さん)
手軽に買えて常用しがちな便秘薬も、のみすぎは問題だ。
「市販薬に多い“刺激性”の便秘薬は使う量に比例して耐性ができて服用量が増えていき、次第に効き目がなくなっていく。腸のぜん動運動を促すのは食物繊維の摂取と適度な運動がいちばんの薬です」(あきはばら駅クリニック院長・大和田潔さん)
薬を減らすために医師選びも重要
健康を取り戻すための一粒が、かえって体をむしばむ要因になっている――。悪循環を断ち切るためには医師の適切な指導のもと、薬を減らすことが肝要だ。とはいえ、専門家の診療にもとづいて処方されたものを「減らしたい」と切り出すのは抵抗があるという人も多いだろう。しかし水野さんは、まずは意思を伝えることが大切だと主張する。
「減薬は医師と相談して行うもの。相談を持ちかけて怒ったり聞く耳を持たなかったりするようならば、それ以上の関係は望めません。説得するよりも別の病院を当たった方が賢明です」(内科医・水野雅登さん)
坂東さんは、患者に触れようとしない医師には要注意とアドバイスする。
「高血圧診療では血圧値だけを見て、薬を処方されることが多いのですが、高血圧では合併症を併発しているか否かが重要です。大動脈弁狭窄症や心房細動などは、実際に聴診器で音を聴いて見つけています。患者に触れて診察せずに、血圧値だけを見る医師は見逃しが多く、避けた方がいい」(ハートクリニック院長・坂東正章さん)
いい病院を探す際はホームページなどで治療方針を確認するのも有用だ。
「ただし、『薬を一切使いません』と過剰に喧伝する医師や病院は避けた方がいい。体質的な高脂血症、高血圧や糖尿病の状態によっては薬を減らすことが難しい場合が多い。行きすぎた減薬は無治療と紙一重で健康を損ないます。
一方で患者に丁寧に薬の説明をし、処方する医師たちは医学的根拠のもとに取り組んでいる場合が多い。ひとつの指針となります」(大和田さん)
減薬のためにできる予防策
スムーズな減薬のためには自分の体の状態を知り、予防策を講じておくことも大切だ。
「たとえば血圧など数値によって薬の量が変動するものは普段から計測し、結果を把握しておくことで医師への相談も円滑になる。
また、ワクチンを打っておくことで予防できる病気もあります。帯状疱疹は50才から予防接種が可能。発症しなければ薬をのまなくてすむ。60才以上が対象の肺炎球菌のワクチンも同様です。病気そのものを遠ざけられれば人生をトータルしてのむ薬は劇的に減少します」(髙瀬さん)
人生100年。10年後にのむ薬を少しでも減らすためにいまからできることがある。
減薬のために今日からできる5つのこと
1.コミュニケーションが取れない医師は避ける
薬を減らしたいと申し出たとき、真っ向から否定したり不機嫌になったりする医師は、その後も協力してくれることは少ない。
2.減薬を強くうたいすぎる病院には注意
適量の薬は治療に必須。強く「薬なし」の治療をうたう病院の方針は無治療と紙一重。一方で処方の前に丁寧に説明する医師は信頼に足る。
3.診療時に体に触れながら判断する医師を選ぶ
数分の問診ですぐに薬を出そうとする医師は、じっくり減薬と向き合ってくれる傾向が低い。
4.血圧を測る
自身で数値を把握しておくことで、医師にも相談しやすい。
5.ワクチンを有効活用する
帯状疱疹は50才から、肺炎球菌は60才から接種が可能。