健康

おでこを冷やしてぐっすり快眠!睡眠の質を向上させやせるメカニズム【専門家解説】

「頭寒足熱」は健康の基本だ。冷えやすい足元は温めて、熱がこもりやすい頭は冷やす──これは、現代医学においても理にかなっている。頭を氷で冷やすことで、健康はもちろん、理想的な睡眠やスリムな体まで手に入るという。専門家にそのメカニズムと冷やし方を聞いた。

 はやりの糖質制限は好きなものが食べられないし、運動はきらい。かといって、高価なダイエット器具を買うほどでもない…。

 毎日鏡を見るたびに「やせたい」とは思うものの、どうしてもダイエットが続かない人は多いだろう。だが、あきらめる必要はない。お金や手間がかかって続けられないなら「何もしなくてもやせる体」になってしまえばいい。その最も簡単な方法が「おでこを冷やすこと」だ。

「冷やすだけ」で全身が好調に

【冷やし方】

 氷のうかビニール袋に氷と水を入れ、塩を少し加えて口を閉じる。めんどうなら、保冷剤などでも可。あお向けになり、氷のうをおでこに直接のせ、目を閉じて1分間冷やす。冷たすぎる場合は、ティッシュペーパーなどをはさんでもよい。冷やしすぎないよう、必ず1分間でやめること。

【ココがすごい】

 睡眠の質が上がると、脂肪の燃焼を促す「成長ホルモン」や、食欲抑制効果のある「レプチン」がよく分泌されるようになり、寝ているだけでダイエットできるように!

 急激に冷やすことにより、体が温まろうとして血流がアップ。基礎代謝の20%は脳で消費されるため、「生きているだけでやせやすい体」に! 全身の血行がよくなって筋肉の緊張がほぐれて代謝が上がり、痛みも改善。全身のリンパ液と脳脊髄液の流れも改善し、自律神経のバランスが整い、熟睡できるようになる。

おでこを冷やすと全身がポカポカに

 ただおでこを冷やすだけで、なぜダイエットできるのか。

 柔道整復師でタンタン整骨院院長の小林敬和(のりかず)さんは、おでこを冷やすことで全身の血行がよくなることが、やせ体質になれる第一の理由だと話す。

「真冬に冷たい水で手を洗うと、当然ながら手は氷のように冷たくなります。ところが、しばらくするとポカポカと温かくなってきます。これは、人の体に備わっている、体温や血圧といった体の状態を常に一定に保とうとする『ホメオスタシス(恒常性)』によるもの。

 ある一か所が急激に冷やされると、体は本来あるべき体温を維持するために、その部分の血液量を増やして温めます。筋肉が薄くて冷えやすいおでこに氷を当てることで、そこから一気に、全身の血行をよくすることができるのです」(小林さん・以下同)

 全身の血行がよくなって体温が上がると、筋肉の緊張がほぐれてよく動くようになる。

「普通に生活しているだけでも筋肉をより使うようになり、消費カロリーが上がります。肩こりや腰痛などの改善も期待できるでしょう」

 そして、筋肉の動きがよくなることで、全身をめぐるリンパ液の流れも向上する。筋肉が動くことでポンプのような役割を果たし、リンパ液の流れを促進するためだ。

「リンパ液は、体にたまった余分な水分や老廃物などを回収・排出する役割を担っています。運動不足などで筋肉がこわばっているとリンパ液の流れが滞るので、これを解消すれば、むくみや冷えがなくなり、落ちていた代謝が上がってやせやすくなります」

 おでこを冷やすと、むしろ全身が温まり、血液とリンパ液の流れがよくなるということだ。

 さらにもう1つ、「脳脊髄液(のうせきずいえき)」の流れをよくする効果もある。脳脊髄液とは、血液をろ過してつくられる液体で、頭蓋骨の内側と脊髄に流れ、脳を守るクッションのような役割を果たしている。

「脳脊髄液は、脳や脊髄の神経から出る老廃物を回収し、脳への栄養補給も担っています。血液やリンパ液と比べれば量は少ないですが、不足すると脳機能が低下したり、手足にしびれが出たりします。脳脊髄液が充分につくられて、脳と脊髄にしっかり流れるようになれば、脳機能が向上するほか、脳と脊髄が調整している自律神経のバランスが整います」

 自律神経は、呼吸や消化、睡眠など、全身のすべての機能を24時間常に調整している。活発に活動しているときは「交感神経」が優位に働いて体のアクセルを踏み、リラックスしているときは「副交感神経」に切り替わり、ブレーキをかける。小林さんによれば、いまはこの自律神経の切り替えがうまくいかなくなっている人が多いという。

「コロナ禍のストレスで自律神経のバランスが乱れて、布団に入ってもなかなかリラックスできずに充分な睡眠が取れなくなるなど、さまざまな不調を感じる人が増えています」

寝ている間に脂肪が燃える

 あなたがもしコロナ太りを感じているなら、それは自粛による運動不足や食べすぎではなく、自律神経の乱れによるものかもしれない。

「自律神経が乱れていると、食欲の調節もうまくいかなくなり、太りやすくなります。“眠れなくて夜中に食事をしてしまう”といった単純な話だけではありません。脳が“強いストレスにさらされているので、闘うためのエネルギーを蓄えなくてはいけない”と判断し、食欲を増し、脂肪の蓄積を促す『グレリン』というホルモンの分泌量が増えるのです。

 一方、自律神経が正常に働き、充分な睡眠が取れていれば、食欲を抑制する『レプチン』というホルモンが出ます」やせやすい体になるためには、充分に眠ることも不可欠。特に、寝つきをよくすることが重要だ。

 というのも、眠りについてから約30分後に訪れる「ノンレム睡眠」のときに分泌される成長ホルモンは、眠っている間に脂肪を燃やしてくれる。

「成長ホルモンは別名“やせホルモン”とも呼ばれ、代謝を上げると同時に脂肪の燃焼を促したり、血中コレステロール値を下げたりする働きがあります」

 ノンレム睡眠とは、体だけでなく脳も休息している“熟睡状態”のこと。つまり、スムーズに寝つき、30分後には熟睡した状態になれば、眠っている間に脂肪燃焼が促され、やせることができるのだ。寝つきをよくするためには、一時的に脳の温度を下げる必要があるという。

「布団に入った状態でおでこを急激に冷やすと、全身の血行がよくなって一時的に体温が上がります。ところが、頭は布団から出ているので、徐々に脳の温度が下がり、そのときに自然な眠気が訪れ、理想的な睡眠を取ることにつながります」

 充分な睡眠が取れれば、当然、脳の働きもよくなり、よりカロリーを消費しやすくなる。呼吸や消化などのために使われる「基礎代謝」は、その20%が脳によって消費されているため、わざわざ運動などをしなくても、脳の働きがよくなればなるほど、やせやすい体になることができる。

 一般的に、成人女性の基礎代謝は1日あたり約1200kcalといわれる。その20%は、約240~280 kcalほど。体を動かさなくても、脳だけで1日にご飯1膳分くらいのカロリーを消費することができるのだ。

「実際に、寝る前におでこを冷やすことを習慣にした結果、大幅に体重が減った人もいます。睡眠不足の解消が目的だったので、食事制限や運動などは一切していなかったのに、知らず知らずの間に4kgも減量していました」

「塩少々」でさらに効果がアップ

 ただ冷やすだけで寝ている間にやせる体が手に入るなら、やらない手はない。だが、冷却シートや湿布薬などでは効果は得られないという。

「冷却シートでは、皮膚の表面しか冷やすことができず、脳の血流を増やすことにはつながりません。氷のう、または氷水を入れたビニール袋をおでこに直接当ててあお向けになり、1分ほど冷やしてください。塩を少し加えるとマイナス1~2℃ほどまで温度が下がるので、より効率よく冷やすことができます。ただし、冷やしすぎるとかえって交感神経が優位に働いてしまうほか、凍傷のおそれもあるため、必ず1分以内にとどめてください」

 冷たすぎると感じる場合は、氷のうとおでこの間にティッシュペーパーなどをはさんでもよい。

「タオルでくるんでもよいですが、その場合は5分程度冷やすのが効果的です。発熱時に使う氷枕を頭の下に敷く場合も、髪の毛にさえぎられるので、同様に5分ほど冷やしてください」

「やせたいなら、食事と運動を見直して努力すべき」という考えはもう捨てて、果報は寝て待つべし。ただし、かぜをひかないよう、首から下はしっかり温かくするのをお忘れなく。

教えてくれた人

小林敬和(のりかず)さん/柔道整復師でタンタン整骨院院長

※女性セブン2021年11月11・18日号
https://josei7.com/

●”温めてめぐらせる”キレイな人が実践している簡単3stepメソッド|美容家千波さん

●老後健康のために始めてはいけないこと5つ|昼寝、長時間のテレビほか【医師監修】

●50才からのダイエットは「がんばらない」1年で6kgやせる食ベ方を専門家が解説

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