”二度寝”が引き起こす4つのリスク 太りやすい、うつ、認知症も【医師解説】
少しずつ季節は移り変わり、「秋の夜長」がやってきた。暑さのあまり汗だくで目覚めていたこれまでとは違い、朝方までぐっすり眠って、目覚ましを止めてもう一眠り…しかしこの至福のひとときがあなたの体をむしばんでいた。
国民的アイドルも虜にする二度寝
「ぼく、眠るのがとにかく大好きなんですよ。一日、好きなだけ眠れるとしたらもちろん目覚ましはかけない。起きては寝るを繰り返し…理想は“四度寝”ですね。二度寝だと、どう考えても少ないんですよ。三度寝もちょっともの足りない感がある」
ファッション雑誌のインタビューで「睡眠は最高のご褒美」だと明かしたのはKing&Princeの平野紫耀(24才)。国民的アイドルをも虜にする二度寝の快楽。確かに、朝、まどろみながら時計をチェックした後、安心して再び眠りに落ちるときの幸福感はこたえられない。
二度寝が脳を疲れさせていた
しかし、二度寝を繰り返すのはアルコールよりも体に悪いと断言する声もある。日本ショートスリーパー育成協会の堀大輔さんが言う。
「二度寝をするとき、多くの場合、一度アラームが鳴った時点で目を覚まして、起きるかどうかを悩むことになる。この“このまま起きるかもう一度寝るか決断する”という作業は、脳を疲弊させます。
そのため、二度寝を経て起床した時点で脳疲労が起き、その結果、思考能力や認知機能が著しく低下します。そのうえ、何度も繰り返せば脳はアラームの音に反応しなくなり、習慣化してしまう。こうなると二度寝の連鎖から抜け出すことは困難です」
寝坊防止のスヌーズ機能も疲労回復の妨げに
寝坊を防ぐために目覚まし時計やスマホのスヌーズ機能を使い、二度寝、三度寝と繰り返すケースもあるが、雨晴クリニック副院長の坪田聡(さとる)さんはこの方法を否定する。
「スヌーズ機能によって短時間のうちに何度も目覚めるのは、浅い睡眠を繰り返しているということ。一般的に浅い睡眠から、脳と体をしっかり休ませることができる深い睡眠に入るまで90分かかるため、10分おきにアラームが鳴ってしまえば深い睡眠の前に起きることになる。こうした眠り方は疲労回復に適さない、非常に効率の悪い方法だといえます」
肥満、うつ病を引き起こす可能性も
疲れやすいうえに、日中の活動にも影響を及ぼす二度寝。さらに恐ろしいのは繰り返すことで体にさまざまな悪影響が出るということ。
堀さんがまず指摘するのは「肥満」のリスクが上昇することだ。
「二度寝が習慣化して初めに懸念されるのは太りやすくなること。人間の体は、起床後の活動に備えて、朝にステロイドホルモン『コルチゾール』が多く分泌され、自然と血糖値が上がる仕組みになっています。本来ならそのまま起きて活動するため、エネルギーで相殺されて血糖値は下がりますが、再び眠りについてしまえば血糖値は上がったままになります。これは食事をした後にすぐに眠るのと同じ状況です」(堀さん・以下同)
起床時に分泌量が増えるコルチゾールだが、二度寝が常習化すると一転、体が不要だと判断し、減少する。
「二度寝が習慣化して2週間ほど経過すると、コルチゾールは減少するとされています。コルチゾールの働きには血糖値の上昇に加え、ストレスの中和もあるため、分泌量が減れば気力が低下し、うつ病のリスクも上昇します」
認知症リスクを上昇させる危険性も
コルチゾールの減少は認知症リスクも上昇させる。米ボルチモアの国立老化研究所が行った実験によれば、朝の唾液腺コルチゾールの高い高齢者は、脳の容積が保たれて認知機能検査では思考処理速度が速い傾向が示されたという。つまり二度寝によって朝の分泌量が減れば、それだけ認知機能が落ちるということだ。
さらに、二度寝をすると全体の睡眠時間が延びる人が大半だが、8時間以上の睡眠は認知症リスクを上げるとされている。
二度寝をやめたらライフスタイルが変わった人も…
二度寝をやめることで肥満や病気になるリスクが下がるのはもちろん、堀さんの経験ではライフスタイルが好転したという人も多くいる。
「起床時間が一定になり、体内時計が整って自律神経がうまく作用するようになったのか、起き上がれないほどだった生理痛が緩和されたという女性がいました。二度寝をやめたことで、時間を有効活用できるようになったという人も多い。これまでは出社時間ギリギリに起きて電車に駆け込んでいた人が、朝に資格の勉強をするほどに時間と心の余裕ができたという声もあります」
休日の二度寝が最も危険
体の調子もよくなり、朝の時間に余裕もできる―「二度寝断ち」で得られるのは理想的な生活だが、朝決まった時間から仕事や家事を始めなければならない平日にとどめ、休日は心ゆくまで眠りたいと思う人も多いだろう。しかし医師たちは揃って「週末のみの二度寝」に警鐘を鳴らす。
「休日と平日で起床時間が大きくずれると、体内時計が狂ってしまう。そもそも体内時計は、約25時間の周期で動いており、朝、太陽を浴びたり決まった時間に食事を摂ったりと規則正しい生活をすることで24時間周期にリセットされることがわかっています。ただでさえ1時間ずれている体内時計の周期に睡眠時間の大幅なずれが加われば、リセットの難易度は大きく上がります」(坪田さん)
肥満外来の医師で、睡眠指導も行う佐藤桂子さんも、休日の長時間にわたる二度寝は、気づかないうちに体に大きな負荷がかかっていると指摘する。
「起床時間のずれは、“時差ボケ”と同様の状態です。週末に二度寝を繰り返すのは休みのたびに、地球の裏側に旅行して時差ボケの状態になって帰ってきているようなもの。体への負担は相当大きいです」(佐藤さん)
体内時計の乱れから来る“時差ボケ”はあらゆる病気に影響することが明らかになっており、2018年の日本糖尿病学会の発表によれば2型糖尿病、肥満、心血管疾患、がんのいずれも発症リスクが高まるとされている。
二度寝が引き起こす病気・不調の4大リスク
■肥満
睡眠から覚醒する際に出る「コルチゾール」と呼ばれるホルモンは、血糖値を上昇させる働きが。分泌されているタイミングで眠ってしまうのは、食後血糖値が高い状態で眠るのと同じこと。
■うつ病
特に週末や休日など、時間が許す限り二度寝してしまい、午後になって目覚める習慣がついてしまうと日光を浴びる時間が減り、体内のセロトニン分泌量が減る。結果、うつ病リスクが上がる。
■認知症
二度寝を繰り返すことで脳の容積が減り、認知機能が下がるうえ、二度寝した結果睡眠時間が延びると認知症リスクが上がる。実際、8時間以上の睡眠はリスクを上げるという調査結果も。
■糖尿病
長時間の二度寝は、「時差ボケ」に似た体の状態をつくる。これによって体内時計が狂ってしまうと、生活習慣病リスクが上がる。特にインスリンの機能低下を招きやすいとされており、糖尿病は要注意。
教えてくれた人
堀大輔さん/日本ショートスリーパー育成協会、坪田聡さん/雨晴クリニック副院長、佐藤桂子さん/肥満外来の医師。睡眠指導も行う。
※女性セブン2021年9月16日
https://josei7.com/
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