オクラ、きのこ、トマトは冷凍で…すりおろし野菜のパワーと食べ方【管理栄養士解説】
旬の野菜は、含まれる栄養素もたっぷり。トマトやきゅうり、オクラ、みょうが…しかし、そのまま食べるだけでは損!? 野菜や果物はすりおろすと、食べやすいだけでなく、栄養素の吸収率や効果がグッと上がるものも。おろし野菜のパワーについて、管理栄養士に聞きました。
1.酵素が豊富な大根おろしは殺菌作用も
「おろし」と聞いてまず思い浮かぶのは、やはり大根。焼き魚や肉料理など、和食のつけ合わせの定番の大根おろしは、驚くべき作用を持っている。管理栄養士の望月理恵子さんが言う。
「大根は酵素が非常に豊富で、炭水化物を分解する『アミラーゼ』、たんぱく質を分解する『プロテアーゼ』、脂質を分解する『リパーゼ』のすべてが含まれています。
炭水化物が多くなりがちな寿司や丼もの、ステーキやハンバーグなどのこってりした肉料理のほか、揚げ物と一緒に食べてもいい。どんな料理と合わせても消化をよくして栄養素の吸収を高めてくれます」
なかでも“最強”の組み合わせは、とんカツやしょうが焼きといった豚肉料理と一緒に食べること。管理栄養士の中沢るみさんが言う。
「豚肉には糖質の分解を助けるビタミンB1が、牛肉の約10倍も含まれています。ポークソテーに大根おろしをのせて、和風ステーキのようにして食べると、相乗効果で糖質を分解・燃焼しやすくなります」
また、大根の先端が辛いのは、「イソチオシアネート」という成分によるもの。殺菌作用があり、かぜやインフルエンザの予防にもつながる。
イソチオシアネートは大根のほか、かぶ、ブロッコリー、菜の花、ケールといったアブラナ科の野菜にも豊富で、すりおろすことで活性化する。
「イソチオシアネートには、殺菌作用のほか、強い抗酸化作用があり、動脈硬化やがんの予防にも役立ちます。ブロッコリーの新芽のブロッコリースプラウトはすりおろすのが難しいため、細かく刻むことで同様の効果が得られます」(中沢さん・以下同)
2.長いも・山いものとろろは消化を助ける
長いもや山いものとろろも、おろし野菜の定番。炭水化物の消化を助けるアミラーゼが豊富に含まれているので、山かけご飯がおすすめだ。
また、脂質の代謝を高めるビタミンB2が豊富なまぐろと一緒に食べると、脂質と糖質の代謝が上がる。
3.モロヘイヤやオクラもすりつぶすとパワーアップ
とろろに限らず、モロヘイヤやオクラのように、粘り気がある食材は、すりつぶすか細かく刻むのが定石だ。
「オクラやモロヘイヤに含まれる水溶性食物繊維は、細かくすることで粘度が上がります。すると、脂肪の吸収を抑えるほか、腸内で老廃物を吸着する作用が高まるため、便秘の改善やダイエット効果が期待できます」
年間を通してスーパーで安く手に入る玉ねぎも、すりおろすことでパワーアップする代表食材。玉ねぎの血液サラサラ効果も、すりおろすことで格段に高くなる。
4.玉ねぎ・にんにくのすりおろしは疲労回復に
「玉ねぎに含まれるアミノ酸の一種『アリイン』は、すりおろして細胞を傷つけることで『アリシン』に変化します。アリシンには抗菌・抗酸化作用や疲労回復効果があり、夏バテ予防にもぴったり。また、血液をサラサラに保ち、血液中のコレステロール値の上昇を防ぐ作用もあります」(望月さん)
アリシンは、にんにくやにらなど、香りの強い野菜に多く、疲労回復を助けるビタミンB1の吸収を高める働きもある。豚肉やかつおなどと合わせれば、より効果が上がる。
「かつおのたたきに、すりおろしたにんにくと、細かく刻んだにらをかければ、究極の疲労回復メニューができあがります。にらは葉先よりも根元の白い部分にアリシンが多いので、根元は細かく刻み、葉先はビタミンの流出を抑えるために大きめに切ってスープなどにするのがおすすめです」(中沢さん)
アリシンは油に溶けやすく、加熱すると血栓予防効果のある「アホエン」に変化するため、油でサッと炒めても、そのまま料理に使ってもよい。
ただし、食べすぎると粘膜が荒れることもあるため、にんにくのすりおろしなどは薬味として使う程度の量にとどめてほしい。
にんにくのほか、薬味に欠かせないしょうがやみょうがも、すりおろしで効果が上がる健康食材だ。
5.しょうがのすりおろしは食べる直前に
「みょうがには血行促進作用があり、香りに食欲増進効果があります。生のしょうがに含まれる『ジンゲロール』は体の熱をとる働きがあり、夏のほてった体にぴったりの食材です。ただし、揮発性が高く、時間とともに成分が失われてしまうため、できれば市販のチューブは使わず、食べる直前にその都度すりおろすのがベストです」(望月さん)
生で食べればほてりを冷ましてくれるおろししょうがは、加熱すると体を温める食材に変化する。
「ジンゲロールは、加熱によって血行を促進する『ショウガオール』に変化します。ただし、加熱しすぎると、消化酵素のプロテアーゼが働かなくなってしまうため、煮詰めたりはせず、60~70℃程度の温かいつゆや紅茶に加えるようにしてください」(中沢さん)
6.にんじんをすりおろして効率よく摂取
熱に強く、油との相性がいいのは、にんじんに含まれるβカロテン。高い抗酸化作用を持ち、老化防止や血行促進に効果が期待できる。バターなどで炒めたにんじんをミキサーにかけてスープにしたり、オリーブオイルなどと合わせてドレッシングなどにすると、効率よく摂取できる。
7.きゅうり✕大根おろしで相乗効果も
意外にも、夏野菜の中で最もすりおろしに適しているのはきゅうり。90%以上が水分で、ほとんど栄養素がないなどともいわれるが、すりおろすことで真価を発揮する。
「きゅうりには、脂肪分解酵素の『ホスホリパーゼ』が含まれており、すりおろすことで活性化します。
すりおろしたきゅうりを土佐酢や三杯酢と合わせて緑酢にするほか、ポン酢をかけて肉料理や魚料理のつけ合わせにするのもおすすめです。
また、ドレッシングに少し混ぜたり、たこや帆立など魚介類とあえたりと、そのまま食べるより栄養価も使い勝手もアップします」(中沢さん)
さらに、“最強のおろし野菜”である大根との相性も抜群。
「大根おろしときゅうりおろしを合わせて、しょうゆを少しかけて食べてみてください。よりさっぱりと食べやすくなり、大根の酵素との相乗効果が期待できます」(望月さん・以下同)
すりおろしたものが“薬”とされていた野菜もある。じゃがいもに豊富なビタミンCやミネラルは熱に弱いため、生のままの方が摂取効率がよい。
8.じゃがいものすりおろしは整腸作用もあるが注意ポイントも
「昔は、生のじゃがいもをすりおろしたものは、胃腸を整える生薬として使われていました。空腹時に少量のおろし汁を飲むことで胃の痛みや胸やけが改善するといわれています」
ただし、生のじゃがいものでんぷんは消化しにくく、かえって胃腸を痛める恐れがあるため、食べすぎないようにしたい。
9.パインやキウイはすりおろすのがおすすめ
果物をすりおろすなら、パイナップルやキウイがいい。
「酢豚のパイナップルには、たんぱく質分解酵素で肉をやわらかくする効果だけでなく、一緒に食べることで消化を助ける働きもある。すりおろして下ごしらえに使ったり、ドレッシングに少し加えるのがいいでしょう」
10.トマトは冷凍してすりおろしやすく
なかには、柔らかくてすりおろしにくい野菜もある。トマトは、先に冷凍しておくことですりおろしやすくなり、皮ごと食べられるほか、より栄養価を高めることができる。
「冷凍すると、細胞内の水分が膨張して細胞壁が壊れるので、酵素やほかの栄養素が活性化し、吸収もしやすくなります。
トマトには認知症の原因となるアミロイドβの発生を抑える『アスタキサンチン』や、高い抗酸化作用とコレステロール値の上昇を抑える作用がある『リコピン』が豊富に含まれています」
リコピンは熱に強く、油と摂取することで吸収率が上がるので、冷凍トマトをすりおろしてそのまま薬味がわりに使ったり、スープにしたり、さまざまな食べ方ができる。
「トマト缶に使われる品種は、生食用のものよりリコピンの含有量が多いので、冷凍してすりおろす時間がなければ、市販のトマト缶でもいいでしょう」(中沢さん・以下同)
11.えのきたけは冷凍するとパワーがアップ
トマトと同じく、きのこ類も、細かく刻んで冷凍することで、健康効果が驚異的にアップする。
「きのこには脂肪吸収を抑える『キノコキトサン』が含まれており、ダイエットに最適な食材です。キノコキトサンは特にえのきたけに多く含まれ、冷凍することで12倍にまで増えます。
加熱しても壊れにくいので、ミキサーや包丁で細かくして冷凍しておけば、そのままみそ汁に加えたり、あえ物や炊き込みご飯などに使えます」
12.野菜や果物をすりおろす注意ポイント
野菜に含まれる酵素を活性化させるには、おろし器はできるだけ目の細かいものを使おう。
ただし、酵素よりもビタミンやミネラルなど、流出しやすい栄養素を摂りたい場合は、目の粗いおろし器を使ったり、包丁で刻んだ方がいい。
「野菜や果物の栄養は、皮の近くに多く含まれるので、すりおろすときは、ぜひ皮ごと。また、酵素やビタミンなどは一部を除いて熱に弱いので、加熱する際は60℃以上にならないように。
すりおろしたものは、その瞬間から、酵素が揮発していきます。毎回使い切るか、使わない分はすぐに冷凍保存するようにしてください。ほとんどの酵素が冷凍している間も減っていくので、できるだけ早く食べきるようにしてほしい」
野菜や果物は”すりおろし”て、冷蔵庫の残り野菜をパワーアップさせてみては?
教えてくれた人
管理栄養士・中沢るみさん、管理栄養士・望月理恵子さん
※女性セブン2020年9月2日号
https://josei7.com/
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