猫が母になつきません 第264話【でんたる】
母の口の中は大工事の真っ最中。先生に「うちの患者さんの中でも一二を争う仮歯の多さ」だということで「仮歯王」と命名されるほど。仮歯王にはたくさんのアイテムが与えられる。抜歯後の傷口の感染予防に口腔内の洗浄液、歯間に汚れが残らないように歯間ブラシ、歯間と歯茎のきわにはとんがった形の歯ブラシ(ワンタフトという)、舌苔を取るための舌ブラシ。これに普通の歯ブラシが加わるので、全部をこなすのはなかなか大変です。歯医者さんで歯磨きの指導されるとき、最初に「ご自分で磨かれていますか?」と質問され、私が母の歯を磨く、ということも想定すべき段階なのかとあらためて思う。むしろ磨かせてくれるならそのほうが完璧にできるし、よけいな心配をしなくていい気も…でも今はまだ母の方が絶対に受け入れないと思います。私自身は歯ブラシも歯磨き粉も常に2〜3種類をそのときの状況によって変える歯磨きマニア。歯ブラシを買い換えるときはいつも今までのと違うものを選びます。だって、くらくらするほどのドラッグストアに並ぶの歯ブラシの種類の多さ…いつものアレを探す方が大変でしょう。いろんな歯ブラシを試すのも楽しいです。母が完璧に歯磨できているとは思いませんが、今はできるだけ「自分でやる」ことが大事と思って、仮歯王の大事なアイテムの数々を清潔に保つことだけこっそりお手伝いしています。
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作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母とくらすため地元に帰る。典型的な介護離職。モノが堆積していた家を片付けたら居心地がよくなったせいかノラが縁の下で子どもを産んで置いていってしまい、猫二匹(わび♀、さび♀)も家族に。