脳科学者が教える記憶力アップのカギは、あえて不便に、日常を丁寧に過ごすこと
普段からパズルや計算などをして、脳を活性化させています! という方も多いだろう。もちろんそれも有効だが、私たちが何気なく過ごしている生活の中にも“脳活”になる事はたくさんある。ながら食いをしない。これも十分に脳活だ。その他にはどんな事があるのか、今問題視されている脳疲労の解決方法も合わせてご紹介する。
「外部から入ってきた情報を一時的に保管して処理を進めるワー
不便を感じることで脳に刺激を与える
人は便利を求める生き物だが、それに頼りすぎた「日常」を見直すことも脳活につながる。
「自粛生活で、お弁当や日用品など何でも家に届けてもらえるようになり、いまは家から一歩も出なくても過ごせます。でも、そんな生活をあえて少し不便にしてみると脳活になります」(脳神経科学者・枝川義邦さん・以下同)
たとえば、
・お茶やコーヒーをちゃんとした手順で淹(い)れる
・人とよく話をする
・“ながら食い”せずに、ちゃんと向き合って食べるなど、
日常を丁寧に過ごすことで、脳は活性化する。
五感を感じることも大切
「目から入る光の情報を感じる視覚、耳から入る音を感じる聴覚、鼻の嗅覚、舌で感じる味覚、皮膚の触覚―そういった五感のアンテナから積極的に情報を取り込むことで脳は活動的になり、脳への血流も自然とよくなります」
実際、女性セブンの調査(回答者1524人)(※)でも、物覚えがよい人は「人と話す」のに積極的で、「わからないことはちゃんと調べる」傾向が強い。そんな、日々の雑事を面倒くさがらない点が記憶力のよさにつながっているといえよう。
※調査内容(女性セブンメルマガ会員組織「女性セブン倶楽部」会員アンケートより)
★自粛生活中でも電話やリモートで人と話しますか?
「物覚えがよい」人の6割が他人とよく話しているのに対し、「物覚えが悪い」人は、その数値がガクンと下がる。同様に、他人とほとんど話さない人が、「物覚えが悪い」人では約3割だったが、「物覚えがよい」人ではゼロだった。
★わからないことは放っておかず、自分で調べますか?
「物覚えがよい」人も、「物覚えが悪い」人も、「わからないことは放っておかず、自分で調べる」という人がほとんどだった。これは、スマホなどですぐに調べられるという環境が、1つの要因となっているようだ。
書き留めることで脳疲労を緩和
一方、テレワークなどでパソコンを長時間使用したり、スマホにかかりきりになったりすることによる脳の疲れも問題になっている。
「外部から入ってきた情報を一時的に保管して処理を進めるワーキングメモリー(作業記憶)の容量がいっぱいになった状態が、脳過労です。これを改善するには、5分くらいボーッとする時間を作ったり、覚えておきたいことやその日の出来事などをノートや日記帳に書いて、“記憶”を“記録”に変えることが有効です」
書くことで思考が整理できると、記憶力もよくなり、アイディアも出やすくなるのだ。
物覚えがよい人の日課とは?
「女性セブン倶楽部」アンケートでは、物覚えがよい人は、“ちょっとした努力”をしていることがわかった。その一部を見てみよう。
■1週間に1冊本を読み、感想をノートに書いています。
(75才・定年退職・東京都)
■簡単な計算を毎日しています。
(49才・主婦・福島県)
■家事をしながらラジオや音楽、落語を聴いています。
(61才・パート・栃木県)
■利き手ではない方の手で歯磨きをするようにしています。
(49才・主婦・静岡県)
■初めてのお店で新メニューに挑戦するようにしています。
(47才・パート・福岡県)
■料理はなるべく季節の食材で彩りや香りを考えて作ります。
(43才・主婦・新潟県)
教えてくれた人
枝川義邦さん/脳神経科学者
早稲田大学 理工学術院教授。著書に『「脳が若い人」と「脳が老ける人」の習慣』(明日香出版社)、『記憶のスイッチ、はいってますか~気ままな脳の生存戦略』(技術評論社)など。
取材・文/北武司 データ集計/武田まゆみ イラスト/田中斉
※女性セブン2021年6月17日号
https://josei7.com/
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