シニア世代に注目「リバースモーゲージ」とは メリット・デメリットをFPが解説
自宅を担保に資金を借りられる金融商品“リバースモーゲージ”を知っているだろうか?シニア世代をターゲットに大手銀行も参入し、徐々に広まりつつあるリバースモーゲージとは、どんなものか?メリット・デメリットについて、ファイナンシャルプランナーの大堀貴子さんに解説いただいた。
リバースモーゲージとは?
リバースモーゲージとは、自宅を担保にして老後資金などを借りることができる金融商品のことで、ここ最近注目されはじめている。
内閣府の「平成30年版高齢社会白書」※では、高齢社会における金融サービスとして、「リバースモーゲージの普及」が掲げられている。
リバースモーゲージで借りた資金は、死後に返済するか、または担保としていた自宅を売ることで返済する。
借りた資金は、老後資金として使うことができ、借りている間に元金の返済は必要なく借りている間の利息のみを支払えばよい。借りた資金の受取り方法は、「一括」「年金形式」など自分で選ぶことができる。
また、自宅を担保に入れても、生存中はそのまま家に住み続けることができる。
死後に元本を返済する資金がない場合は、自宅を売却して支払うことになる。自宅の資産価値が高く、死後自宅に住む人がいない場合は、自宅を有効活用できるというわけだ。
※参考/平成30年版高齢社会白書(概要版)
リバースモーゲージのメリット
メリットとしてあげられるのが、老後資金の資産寿命を延ばすことができることだ。
核家族化が進み、老後資金が枯渇しても子供に頼れないという人もいるだろう。
現在の現金・預金などの資産と、老後の支出を計算して、マイナスになりそうであれば、リバースモーゲージを検討してもいいだろう。
例えば、70才時点で現金預金などの資産が500万円あり、年金と支出の収支で毎月5万円の赤字が出るとすると、女性の平均的な寿命である87才まで生きたとすると、老後資金は1020万円必要となり、500万円の資産だと78才頃に老後資金が枯渇してしまう。
そんな状況下で病気や介護が必要になると、子供や親戚に援助してもらうことにもなりかねない。そんなとき、自己所有の自宅があれば、リバースモーゲージの利用で老後資金を捻出できる。
また、認知症などになった場合、子供が親の家を売却して介護資金にあてたいと考えることもあるかもしれない。
しかし、認知症など判断能力が低下した親が所有する家は、子供であっても売却できなくなる。そんなときに備えてリバースモーゲージを利用して現金預金を保有しておく手もあるだろう。
親の死後、自宅が空き家になるケースも増えており、相続人が処分に困るようであれば、リバースモーゲージで有効活用したほうがいい。
リバースモーゲージのデメリット
リバースモーゲージのデメリットは、受け取れる資金は借入となるため、借りている間は利息を支払う必要があることだ。
また、住宅ローンのような低金利ではない点に注意したい。「変動金利」を採用している商品が多く、おおよそ年利3%~4.5%が相場といえそうだ。今のように低金利下では、最も金利が低い「変動金利」は魅力だが、金利上昇時には支払利息が増える可能性もある。
さらに、死後自宅を売却して返済する場合には、長生きして借入期間が長くなるほど、支払う利息も嵩んでいく。
また、二世帯など他に同居人がいる、賃借人がいる、資産価値が低いなどの場合には、想定した資金を借りられなかったり、売却額が借入額を下回った場合、その返済は相続人に引き継がれるという点にも注意が必要だ。
リバースモーゲージにはどんな商品がある?
リバースモーゲージはあくまで“借入”なので、お金を借りている期間は、常に利息を払うことになるため、金利は低いに越したことはない。
返済時に利息を組み込めるタイプの商品もあるが、その分借りられる金額の上限は低くなる。
以下に大手銀行3行が販売するリバースモーゲージの特徴をまとめてみた。
■三菱UFJ銀行
・変動金利
・リフォーム資金、サービス付高齢者向け住宅の入居一時金のための借入ができる。
・毎月の支払は利息のみで終身利用可能
・返済は担保にした自宅の売却などで一括返済
・保証人不要
■三井住友銀行
・変動金利
・住宅購入、リフォーム資金、サービス付高齢者向け住宅の入居一時金、住宅ローンの借換えのための借入ができる
・毎月の支払は利息のみで終身利用可能
・本人が死亡しても配偶者は住み続けることが可能
・自宅売却代金が借入資金を下回っても相続人は返済不要
・返済は担保にした自宅の売却などで一括返済
・保証人不要
■東京スター銀行
・変動金利
・住宅購入、リフォーム資金、サービス付高齢者向け住宅の入居一時金、住宅ローンの借換え、相続対策のための借入ができる
・毎月の支払は利息のみで終身利用可能
・毎月の利息の支払い不要型もあり、その場合は死後返済予定の返済金額に組入
・本人の死後、配偶者に借換えして引き続き資金を借りることも可能
リバースモーゲージに興味がある場合、まずは、普段から使っている銀行など自分が安心できるところに相談してみるといいだろう。
親の持ち家とはいえ、相続する子供に負担がかかることもあるため、リバースモーゲージのメリット・デメリットを、親子でよく相談してから利用するようにしたい。
文/大堀貴子さん
ファイナンシャルプランナー おおほりFP事務所代表。夫の海外赴任を機に大手証券会社を退職し、タイで2児を出産。帰国後3人目を出産し、現在ファイナンシャルプランナーとして活動。子育てや暮らし、介護などお金の悩みをテーマに多くのメディアで執筆している。