最大の後悔は「子育て」。65才以上女性600人調査で見えた他人ファースト世代の嘆き
あの時、ああしておけば…後から悔いても過ぎ去った時間は取り戻せない。シニアになった時に後悔しないよう、先人たちの嘆きを参考に、よりよい未来をつくっていきたい。そこで女性セブンは65才以上の女性600人を対象に「65才になるまでにやっておけばよかったこと」をたずねるアンケートを実施した。設問の選択肢で最も後悔しているものを1つずつ選び、理由とともに回答してもらった。ここでは「暮らしと人間関係」に焦点を当ててご紹介。600人の声を、「転ばぬ先の杖」としてほしい。
■【人間関係・暮らしの面】65才までにやっておけばよかったことアンケート結果
・もっと、子供の気持ちに寄り添って子育てすればよかった…69
・趣味を作る…53
・資格の取得…45
・家族旅行をする…43
・気の合う友達をつくる…35
・勉強…34
・もっと、子供を厳しく育てて、自立させればよかった…15
・親と話す、仲よくする…15
・夫と話す、仲よくする…15
・独身をつらぬく…12
・離婚する…11
・近所づきあい…9
・兄弟・姉妹と話す、仲よくする…8
・ボランティア…7
・恋人(パートナー)を見つける…5
・仕事に打ち込む…4
・子供と話す、仲よくする…3
・再婚する…2
Q.人間関係や暮らしについての後悔はありますか?
■ある…75%
■ない…25%
65才以上の女性600人が回答。
※アンケートの結果は1人以下の項目を割愛。2人以上回答があった項目を掲載した。
「もっと子供に寄り添えばよかった」
<忙しさにかまけて、子供の気持ちに寄り添っていなかったと後悔している>(73才)、<子供の将来を考えてしつけをしてきたつもりだが、子供にとってよい親ではなかったかもしれない>(69才)。
人間関係にまつわる後悔のなかで、65才以上の女性が最も気に病んでいるのは、子育てに関することだった。過去に遡ってやり直すことができないだけに、思いは募るばかりかもしれない。
『70歳のたしなみ』の著者で、精力的に活動する昭和女子大学理事長の坂東眞理子さん(74才)は「自分なりに一生懸命やったのだと認めるよりほかない」と話す。
「私も母を大切にすればよかった、もっと親切にすればよかったと思っているけれど、昔の未熟な自分について後悔しすぎることは、いま周囲にいてくれる人や自分が持っているものを否定することになってしまう。そもそも日本の女性には、家庭の仕事は女性の責任で、たとえ仕事をしていても育児や家事をきっちりこなしていないと手抜きをしているようで後ろめたく感じてしまう人が多い。専業主婦と同じように家事や育児を行い、専業主婦に支えられている男性と同じように仕事をするというのは不可能なことです。当時の自分を認め、未来を大切にしてほしい」(坂東さん)
<自分の時間が増えることは間違いない。何か没頭できるものをしっかり体に覚えさせておけばよかった(67才)>のように、子育てに関する後悔に次いで多かったのは趣味や資格を持てばよかったという声。この世代の女性の多くは夫や義父母に尽くしながら子育てを全うしてきた世代。後悔の根本には<思い返せば自分の時間がなく、いつも他人ファーストだった>(70才)という思いがあるのだろう。
趣味や勉強は70才からでも始めればいい
坂東さんは彼女たちに、こうアドバイスを送る。
「忙しいときに趣味を持つことができなかったのは当然のこと。嘆いていないで、70才からでも新しい趣味や勉強を始めればいい。これまで自分の時間を持ったことがなく、何をやればいいかわからないという人は、幼い頃を思い出し、何が好きだったかを振り返ること。『そういえば絵を描くのが好きだった』とか『家の中にいるよりも、外で運動している方が楽しかった』といった記憶がヒントになります」(坂東さん)
しかしこれまで「他人ファースト」で家族に尽くしてきた妻が趣味や勉強に没頭するためには、“配偶者の自立”も大きな課題になる。男性にとっても65才は定年を迎える大きな節目。仕事上の人間関係もなくなり、家にいる時間が増えた夫の自立をどう促すか。定年後の夫婦関係に詳しい臨床心理士の西澤寿樹さんが言う。
「男性は会社以外の人間関係に慣れていないため、定年後にイチから居場所をつくるのは難しい。まずは奥さんのコミュニティーに連れ出して顔を売るのがいいでしょう。そこで夫同士の交流が生まれる場合もある。また、料理教室など何かひとつ同じ目的を持った集団に属するのもいい。特に日本人男性はシャイで引っ込み思案な人が多いですから、目的のある場所の方がコミュニケーションを取るきっかけをつくりやすいのです」(西澤さん)
後悔せずに生きる秘訣は?
健康に留意し、しっかり貯金をして子育てを全うする──これがすべて実現したとしても、生きている限りなんらかの後悔につきまとわれる可能性があることは否めない。坂東さんは、後悔せずに前を向いて生きる秘訣は“心のありよう”に存在すると語る。
「過去のことを思い出すときは失敗や後悔じゃなくて、自分にいい言葉をかけてくれた人とか、親切にしてくれた人のことを思い出すようにすること。人間、自分がされた嫌なことや親切にしても報われなかったことはよく覚えているのに、人から親切にされたことはケロリと忘れていることが多いのです。まずは1日3人、自分に優しい言葉をかけてくれた人を思い出してみてください。その日に起きたことではなく、過去のことでもかまいません」(坂東さん)
“先に立たず”と嘆いた先人の後悔を、役に立ててほしい。
※女性セブン2021年4月15日号