最期まで自宅で「おひとりさま暮らし」する方法|どんな準備すれば大丈夫なのか
「夫には先立たれたけれど、夫との思い出の詰まった自宅で最期まで過ごしたい」(74才女性)
「入院したら何かと束縛される。独り身の自由な暮らしをずっと続けたい」(72才女性)
高齢者が最期まで、自宅でひとり暮らしをするのは難しい―介護の世界では、そういわれ続けてきた。一方で、冒頭のように“おひとりさま”となっても、自宅で過ごすことを望む高齢者は多い。
まず、“ひとりでは生きられない”ことを受け止めて、それから体制づくりを
65才以上のひとり暮らしは全国で約600万人(2015年)にのぼる。2040年には1.5倍の約900万人に達すると予想され、高齢のおひとりさまは今後も増えていくだろう。
病院に頼らず、ひとり暮らしを続けることは可能なのだろうか。高齢者の生活支援企業『アライアンサーズ』代表の久保渉さんが話す。
「まず、高齢者は“ひとりでは生きられない”ことを受け止めることが大切です。判断能力が落ちることを自覚し、ひとり暮らしをサポートしてくれる存在をつくりましょう」
在宅医療を専門とする、かかりつけ医や看護師は最低限必要となる。さらに、“見守り援助”のネットワークづくりが重要だという。
「医師や看護師が訪問できるのは多くても週3回。頼れる同居人がいないおひとりさまの場合、それだけでは不測の事態に対応しきれません。ケアマネジャーやホームヘルパー、知識を持った地域のボランティアなどが連携して、“いつでも誰かがかけつけられる”見守り体制をつくることが理想です」(介護ジャーナリスト)
理想的な見守り体制をつくるには
●相性のいいケアマネを探す
介護評論家の佐藤恒伯さんは、ケアマネジャーの重要性について、次のように語る。
「理想的な見守り体制をつくるには、ケアマネ選びに慎重を期すことが重要です。ケアマネを選ぶとき、“近くだからこの事業所でいいか”と、多くの人は簡単に決めてしまいがち。ですが、介護業界では『ケアマネ格差』という言葉があるくらい、ケアマネによって介護・医療のサービスが大きく変わるんです。じっくりと検討を重ね、相性のいいケアマネを探しましょう」
●任意後見人を決めておく
高齢者のひとり暮らしにおいて大きなリスクは、認知症の発症だろう。認知症を患ったままひとり暮らしを続けていると、食事管理や排泄管理ができなくなったり、火の不始末によって生命の危機にさらされることもある。そうしたリスクを減らすため、「任意後見人」を決めておくことも重要だ。
「任意後見制度は、認知症などを発症した高齢者の暮らしを支え、役所への手続きなどを代わりに行う人を前もって決めておく制度です。その最大のメリットは、法的手続きだけでなく『自分がやりたいことを、あらかじめ託せること』だと私は考えます。例えば“認知症になっても毎年1回は海外旅行に行きたい” “死んだら瀬戸内海に散骨してほしい”など、自分の老後の過ごし方を託すことができるんです」(久保さん)
そうした任意後見人などと相談し、生活環境を整えられれば、おひとりさま暮らしの準備は万端だ。実際、高齢でもおひとりさま暮らしをする人は増えている。デイサービスや施設への短期入所をうまく使いながら、「半分施設、半分自宅」という暮らしも悪くない。自宅での不測の事態に備えるサービスも日進月歩だ。
●「緊急コールシステム」、24時間つながる「テレビ電話システム」…発展する技術の利用
急な発作や体調の急変で倒れても、「ボタンを押せばすぐに訪問介護を呼べる」緊急コールシステムや、「タッチパネルに触れるだけで、24時間いつでも訪問介護ステーションにつながる」テレビ電話システムが普及するなど、ひとり暮らしを支える技術は発展を続けている。
●インフラ整備をされた物件に住み替える
高齢者が暮らすことを前提にインフラ整備された物件も増えているので、住み替えも含めて検討してみるのもいいだろう。おひとりさまが最期まで自由な自宅暮らしを謳歌(おうか)するためにも、早々の準備が肝心だ。
※女性セブン2020年7月2日号
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