高齢者の深刻な悩み「同居する娘婿が不快…」に毒蝮三太夫が緊急提言【連載 第6回】
ますます絶好調の「マムちゃんの毒入り相談室」。高齢者の心の機微を誰よりも知る毒蝮さんが、親子や違う世代との関係に悩む迷える子羊に、愛と実用性にあふれたアドバイスを贈る。悩んでいるのは若い側だけではない。今回は、同居している娘婿との関係に悩む高齢者からの相談。さて、マムシさんの回答やいかに!?(聞き手・石原壮一郎)
今回のお悩み:「同居している娘婿が好きになれない」
じつは俺も、最近「YouTube」とやらを始めてみた。チューブなんて自転車のチューブしか知らないって言ったんだけど、まわりがやれやれって言うからさ。その名も「マムちゃんねる」。毎回、ゲストに来てもらってあれやこれやおしゃべりしてる。
さっそく俳優の古谷敏とか、タレントの玉袋筋太郎やマッハ文朱が駆けつけてくれた。実際にやってみると、なんせ自分のチャンネルだから、何でも好きに話せるのがいいね。ここでしかできない話もしてるから、よかったらのぞいてみてくれ。
さて、今回の相談は73歳の親世代からだ。性別は書いてないけど、文章の雰囲気は何となく女性かな。でも、男女どちらでもあり得る話ではある。
「同居している娘婿が好きになれません。結婚前後は気色悪いほど気を遣っていたのが、孫ができると私を排除し自分たちだけで出かけます、ものすごくおしゃべりなのに私はいっさい無視。私が悪いからだと陰で言っているようです。娘には猫なで声。娘は結婚する前に家を購入し、多額のお金を援助しました。ひとり暮らしをしたくても、もうお金がありません。毎日不快な日々。どう思案するべきか悩みは尽きないのです」
回答:「そのストレスは大変だ。別居しなさい。まずは行動あるのみ」
かなりこじれちゃってるみたいだな。こうなると、一緒に住んでいる限り「またいい関係に戻る」というのは不可能だ。どうにかして家を出る方法を考えたほうがいいね。だいたい、ここまで悩んだり恨んだりできるっていうのは、十分に元気だってことだろ。
誰かに相談しても「あなたもいい歳なんだから、我慢して仲良く一緒に暮らさなきゃ」と言われそうだし、自分でもそう言い聞かせているかもしれない。だけど、いい歳だからこそ残りが減ってきた人生を充実させるために、しなくていい我慢はしちゃいけないんだ。
いきなりあらたまって、娘夫婦の前でこう切り出してみよう。
「私はこのままでいると、毎日が気詰まりで仕方ない。自分の第二の人生、第三の人生を楽しみたいから、ひとりにしてほしい。だったら、あなたたちが出て行くより、私が出て行ったほうがいいんじゃない? この家を建てるときに、私があなたたちにしてあげたことがあるでしょ。私がひとりになるために、小さい部屋でいいから借りてちょうだい」
子どもたちだって、そこまで嫌ってるんだったら、親が別々に暮らしたいって言い出したのは渡りに船なんだよ。ただ、月々多少の援助は必要になるだろう。それがもったいないとか、追い出したみたいで世間体が悪いとか、そういう身勝手な理由で反対するかもしれない。だったらもう、脅すしかないね。「じゃあ、家で死んでやる」って。
これは冗談じゃなくて、関係が悪くなったまま同居を続けるストレスっていうのは、並大抵じゃない。大学の先生に聞いたんだけど、ひとり暮らしの老人より、子どもたち家族と同居している老人のほうが、はるかにストレスが多いそうだ。毎日毎日「また嫌なことを言われた」なんて思いながら暮らしてたら、そりゃストレスが溜まるよな。
独居老人の自殺より、家族と同居している老人の自殺のほうが何倍も多いっていう調査結果(編集部註:高齢労働統計協会資料より)もある。家族の中で孤独感や疎外感を味わうっていうのは、それだけ辛いってことだ。もちろん、子どもの側だけが悪いわけじゃない。人間関係はお互いさまだ。どっちが悪い何が悪いって話じゃなくて、合わないものは仕方ないんだよ。
こういうことは、ひとりで考えてても出口は見つからないし、どんどん思い詰めていくだけだ。たとえば民生委員とか、役所にいるケースワーカーに相談してみるのもいいな。当事者同士で話し合って解決する段階はとっくに越えてるんだから、第三者の力を借りるのが賢明だよ。健康状態によっては、施設っていう選択肢を考える必要もある。
今まで一緒に住んでいたのに別居するとなると、なんか「親子の縁を切る」みたいに考えちゃうかもしれないけど、そうじゃない。お互いにとって無理がかからない距離を取って、もう1回「いい関係」を取り戻すためでもある。子どもの側だって親孝行は離れていてもできるし、孫だってたまに会うほうがかわいく思えるんじゃないか。
悩んでたって始まらない。毎日「不快だ不快だ」と思いながら、やがてもっと歳を取ってそのまま死んじゃったら、自分が可哀想じゃねえか。まずは行動あるのみだ。
毒蝮さんに、あなたの悩みや困ったこと、相談したいことをお寄せください。※今後の記事中で、毒蝮さんがご相談にズバリ!アドバイスします。なお、ご相談内容、すべてにお答えすることはできませんことを、予めご了承ください。
毒蝮三太夫(どくまむし・さんだゆう)
1936年東京生まれ(品川生まれ浅草育ち)。俳優・タレント。聖徳大学客員教授。日大芸術学部映画学科卒。「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の隊員役など、本名の「石井伊吉」で俳優としてテレビや映画で活躍。「笑点」で座布団運びをしていた1968年に、司会の立川談志の助言で現在の芸名に改名した。1969年10月からパーソナリティを務めているTBSラジオの「ミュージックプレゼント」は、現在『土曜ワイドラジオTOKYO ナイツのちゃきちゃき大放送』内で毎月最終土曜日の10時台に放送中。85歳の現在も、ラジオ、テレビ、講演、大学での講義など精力的に活躍中。最新刊『たぬきババアとゴリおやじ 俺とおやじとおふくろの昭和物語』(学研プラス)は幅広い年代に大好評!
YouTubeでスタートした「マムちゃんねる【公式】」(https://www.youtube.com/channel/UCGbaeaUO1ve8ldOXX2Ti8DQ)も、たちまち絶好調!毎月1日、11日、21日に新しい動画を配信中。
取材・文/石原壮一郎(いしはら・そういちろう)
いしはら・そういちろう 1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」など著書多数。最新刊は「【超実用】好感度UPの言い方・伝え方」。この連載では蝮さんの言葉を通じて、高齢者に対する大人力とは何かを探求している。
撮影/政川慎治
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