コロナ禍で痛感する友人の大切さ、老いて輝く友情を教えてくれるNetflix傑作3選
外に出られない生活の中で、遠く離れた家族に思うように会えないのは辛いけど、気晴らしの散歩コース、(感染に配慮しながら)通うデイケアでの友人との会話のひとときは何ものにも代えがたく貴重なもの。『愛の不時着』『梨泰院クラス』などの大ヒットで知られるNetflixの膨大な作品群から、「生涯の友」をテーマに、ゲーム作家・米光一成さん絶対に面白い3作を選んでもらった。
大人の友情を描くNetflixの傑作
内閣府の国際比較調査で、日本の高齢者は約3割しか親しい友人がいないと回答、4カ国の中で割合が最大だったことが報道された。(『共同通信』2021/5/12 「高齢者「親しい友人なし」3割 」参照 )
親しい友人を新たに作るのも、友情をずっと続けるのも、むずかしい。
年齢と友情について考えさせられる『コミンスキー・メソッド』『ファイアフライ通り』『デレク』を紹介します。
『コミンスキー・メソッド』:毒づきながらも一緒にいる友人
シニアの友情を描いた傑作といえば、これ。
主演がマイケル・ダグラス。『ウォール街』でアカデミー主演男優賞を受賞(もちろん他にも『氷の微笑』『トラフィック』『危険な情事』『ローズ家の戦争』などなど幅広い作品で活躍)、ハリウッドを代表する俳優だ。そのマイケル・ダグラスが演じる主人公サンディ・コミンスキーは、高齢の演技スクールの先生。俳優の仕事はもうほとんどない。
そして、『リトル・ミス・サンシャイン』のアラン・アーキンが、エージェントであり、長年の親友でもあるノーマンを演じる。
ノーマンの妻が亡くなり、その喪失を軸にドラマは展開していく。そのうえ、さまざまな老いがもたらす苦みや辛さを描いているのだが、暗くはならない。老いてなお良いことは起こるし、波乱万丈だ。が、それ以上に、ふたりの会話の軽妙さが輝く。
毒舌、ブラックジョークが連発。お互い遠慮なく言い合う姿は、「仲良く喧嘩しな」的ないちゃいちゃに見える。「やれやれ」と言いながら、毒づきながらも、ユーモアを忘れずに一緒に行動してくれる。そういう友人のありがたさをしみじみ感じさせるドラマだ。
ゴールデングローブ賞作品賞受賞。各話30分でシーズン1全8話、シーズン2全8話。待望のシーズン3が5月28日配信開始だ。
『コミンスキー・メソッド』
出演:マイケル・ダグラス、アラン・アーキン、サラ・ベイカー原作・制作:チャック・ロリー
『ファイアフライ通り』:永遠の友情を誓い合ったふたりの女性
友情はいつまでも続くのか。『ファイアフライ通り』は、永遠の友情を誓い合った女性ふたりの人生の物語。原作は、同名のベストセラー小説『Firefly Lane』(未訳)。
派手で奔放なタリー・ハート(キャサリン・ハイグル)と、地味でまじめだがちょっとドジなケイト・マラーキー(サラ・チョーク)は、10代の少女時代に出会う。このふたりの人生を、時系列をシャッフルしながら(10代の少女時代、20代の新社会人の時代、40代のベテラン時代!)描くドラマだ。
短い間にめまぐるしく時間がシャッフルされるので、最初は、その縦横無尽な跳躍っぷりに戸惑うかもしれない。だが、どんどんふたりのことに詳しくなってく長い長い人生の話をしてくれているような気持になってくる。
シーズン1、全10話。いくつもの伏線を張り巡らせ、ラストで強烈な出来事を見せる。「バラバラでも最高だが2人一緒だと1日で世界征服できる最強コンビだ」と言われるふたりの友情はどうなってしまうのか。シーズン2が待ち遠しい。
『ファイアフライ通り』
出演:キャサリン・ハイグル、サラ・チョーク、ベン・ローソン原作・制作:マギー・フリードマン
『デレク』:外野には理解されなくてもいい友情がある
舞台は、高齢者用ケアホーム。主人公のデレクは、ここで働いている49歳の男性だ。ドキュメンタリーのカメラが入っていて、それに向かって喋ったり、インタビュー映像が挟み込まれるという構成。各話30分、全13話+スペシャル回。リッキー・ジャーヴェイス監督主演脚本のビター・スィート・コメディだ。
第2話で、議員がやってきてケアホームを視察する。
「彼(デレク)はハンデが?」
「善良すぎて損してる」
「そうじゃない。自閉症か?」
嫌がるにもかかわらず、自閉症の検査を受けさせようとする議員。同僚であり友人のダギーはクビになるのを覚悟で、「あなたは全員を怒らせた。すぐに立ち去れよ」と、議員を追い出してしまう。
補い合い、受け入れ合って続けているコミュニティに、外からやってきて軽率な判断で決めつけてしまう人がいる。
デレクの友人は、入居している老人たちであり、ダギーであり、そしてケアホームに転がり込んでくるホームレスで下ネタしか言わないケブだ。クセが強いやっかいなメンバーと老人たちの交流が、ある種のユートピアにも見えてきて、何度も不意に泣かされてしまう。外野には理解されなくてもいい友情がある。
『デレク』
出演:リッキー・ジャーヴェイス、ケリー・ゴッドリマン、カール・ピルキングトン
原作・制作:リッキー・ジャーヴェイス
文/米光一成(よねみつ・かずなり)
ゲーム作家。代表作「ぷよぷよ」「BAROQUE」「はぁって言うゲーム」「記憶交換ノ儀式」等。デジタルハリウッド大学教授。池袋コミュニティ・カレッジ「表現道場」の道場主。