猫が母になつきません 第251話「いす」
再び歯医者。黄色、ぴかぴか。いくつもの小部屋に区切られた診察室の隅には付き添いの人用の椅子が一脚置かれています。前回と同じように私はそこに座って治療の様子を見守り、母の代わりに治療内容の説明を聞いたりします。今回は麻酔をしたので、「ちくっとしますねー」などと言われると自然とこちらも身構えて固まってしまう。最初、私はその椅子が「高齢者の患者さんに付き添う人のための椅子」と思っていました。しかし待合室の親子連れを見てそれは基本的には小さな子どもに付き添うお母さんのための椅子なのだ、と気がつきました。そしてそんな当たり前のことが思い浮かばなかった自分にちょっとショックを受けました。小さな子どもや若いお母さんには全く縁がないとはいえ、狭い世界で自分たちのことだけ考えて生きていると、考え方やものの見方がほんとに狭くなってしまうのだなぁと。母の思い込みにはいつも苦労していますが、最近は私も思い込みが多くなってきて…母のふり見て我がふり直しているところです。
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作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母とくらすため地元に帰る。典型的な介護離職。モノが堆積していた家を片付けたら居心地がよくなったせいかノラが縁の下で子どもを産んで置いていってしまい、猫二匹(わび♀、さび♀)も家族に。