巣ごもり便秘が4割超…10秒で簡単”手伸ばしストレッチ”で改善【専門家が解説】
コロナによって強いられた外出自粛や在宅勤務による生活の変化は、私たちの体に大きな影響を与えている。そのひとつが「巣ごもり便秘」だ。「新型コロナウイルス対策とうんちに関する実態調査」(※1)によると、排便やうんちの状態が「変わった」と回答した人のうち、「回数が減った」は56%、「便秘になった」は43.3%にも上ったという。その原因と簡単な解消法を専門家が解説!
(※1)うんち記録アプリ『ウンログ』のユーザー3000人を対象に、2020年4月13~20日に実施した調査。
便秘の原因は運動不足と姿勢が原因かも?
便秘に悩むと、ヨーグルトや発酵食品を積極的に食べて腸内環境を改善したり、スムーズな排便を促すために腸をマッサージしたりするのが一般的。でも、「それでは満足のいく効果が得られない人がいる」と言うのは、鍼灸師で柔道整復師の高林孝光さん。
「巣ごもり生活で運動不足が続くと、日常的に体を伸ばすことが減る。すると筋肉が縮こまり、全身のバランスが崩れます。さらに、テレワークなどで座る時間が長くなり、猫背になっていくと、上のイラストのように内臓が下垂する。そして胃や肝臓が腸を圧迫してストレスがかかり、うんちが詰まってしまいます」(高林さん・以下同)
また、猫背になると頭が前に出るため、体のバランスをとろうとして骨盤が後ろに傾きやすくなる。
「その結果、仙骨の前に位置する直腸も傾いて、うんちの出口(直腸肛門角)が曲がり、出にくくなってしまうのです」
この状態は、腕を回す簡単なストレッチで改善できるという。
手伸ばしストレッチで腸を正し位置に整える
腸を正しい位置に整えるには「まず手を伸ばすことから」と、前出の高林さん。
「筋肉は、使いすぎると縮んだままで元に戻りにくくなります。特に、日頃からスマホやパソコンなどにかかりきりで手を酷使していると、手の筋肉が硬くなって腕が縮こまり、全身のバランスが崩れます。手の筋肉は体の深いところで全身につながっているので、手を伸ばすストレッチを行えば、全身のバランスが整うのです」
★手伸ばしストレッチで効果を発揮する筋肉
マッサージや指圧は体の表面にアプローチして症状を緩和するが、姿勢に大きく影響を与えるインナーマッスルは刺激できない。
しかし、手を伸ばすとインナーマッスル(※4)がついている骨が引っ張られるため、緊張していたインナーマッスルが伸びて緩み、それに連動してアウターマッスル(※4)も緩む。筋肉が緩めば、圧迫されていた血管が広がって血行がよくなり、痛みの緩和など、不調が改善するという。
「便秘の場合は、腸内環境を整えることも大切ですが、手を伸ばして体のバランスを整えた後で、うんちがスムーズに通れる道を作ることが先決です。それには、手伸ばしストレッチが簡単。ただ刺激するよりも筋肉が緩むので、効果を得やすいですよ」
(※4)「インナーマッスル」は、腸腰筋など、体の深い部分にある筋肉。「アウターマッスル」は、僧帽筋など、体の表層にある筋肉。
早速、ストレッチの方法を見ていこう!
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【Step1】手を伸ばして猫背を解消!
<基本>勢いよく回せば効果大!「伸ばしてぐるぐる腕回し」
縮こまった手を伸ばす基本体操。片手でわきを押さえるのは、肩甲骨を安定させて、手を回しやすく伸ばしやすくするためだ。
「速く勢いよく回すほど、遠心力が働いて、手が伸びやすくなります」(高林さん)。
【1】鏡の前で両足を腰の幅に開いてまっすぐ立ち、バンザイをするように両手を上げる。背筋を伸ばし、手のひらは正面に向けて指先を伸ばす。このとき、左右の手の長さを確認しておこう。
【2】右手は上げたままの状態で手のひらを内側に向け、指先までまっすぐ伸ばす。左手でわきの下を押さえる。
【3】右手のひらを内側に向けたまま、前から後ろへ7回、腕を大きく回す。1秒で1回転を目安に。速く行うほど手の重みと遠心力が加わり、手が伸びやすくなる。
【4】次に、後ろから前へ、同様に腕を7回大きく回す。続いて、左手も前回しを7回、後ろ回しを7回行う。最後に両手を上げて伸ばし、手の長さの変化を確認する。
<応用> 手が上がらないなら 「前ならえ体操」
五十肩などで手を回せなかったり、回しにくい場合は、手を床と平行に前に伸ばして肩甲骨を動かそう。座ったままでも行える。
【1】両足を腰幅に開いてまっすぐ立ち、ひじを曲げて「小さく前にならえ」をする。このとき、手のひらは内側に向けてわきを締めること。
【2】両手を床と平行に伸ばしたら、肩を前に出すようなイメージで指先を遠くに伸ばす。そこからさらに、左右の肩甲骨を開くイメージでグーッと前に両手を伸ばし、呼吸をしながらゆっくり7つ数える。(1、2を続けて3回行おう。)
【Step2】骨盤&便の通り道を整える
<骨盤1> 背中~太ももの後ろを緩める“腕ロック”で「骨盤おこし」
腰と背中、太ももの後ろ側を伸ばして腰のこりを緩め、骨盤を立てるストレッチ。行う前後に前屈をして、緩み具合を確認して行おう。
【1】椅子に浅く座り、両足のひざを直角に曲げ、両手を太ももに置く。
【2】体を前に倒し、胸を太ももにつけたら、両手で太ももをギュッと抱え込む。
【3】両手、胸、太ももが離れないように固定したまま、椅子から立ち上がる。背中と太ももの後ろ側を気持ちよく伸ばし、ゆっくりと呼吸をしながら10数える。
<骨盤2> 骨盤を立てたままキープし「くびれ押し」を行う
骨盤をまっすぐにする筋肉である腹横筋を刺激して、よい状態をキープさせる「くびれ押し」。親指は、体の中心に向けてまっすぐ押し込むこと。
両足を腰幅に開いてまっすぐ立つ。両手を腰に置き、親指を骨盤の出っぱりの上の骨のない部分に当て、真横にギュッと押し込む。呼吸をしながら、ゆっくり10数える。
<直腸> 和式トイレの排便姿勢に近づける「寝たまま腰ひねり」
横になって左腕を伸ばすことで筋肉を緩め、猫背を改善して直腸をまっすぐに。便秘の人は、腸を押していくと痛みを感じる場所があるので、そこをほぐしながら行って。
【1】仰向けになり、右手をお腹にのせ、右下からおへそを中心に腸の形に沿って、上、左、下へと軽く押しながら、張りを感じるところを探す。このとき、左腕が耳の横にくるように上に伸ばし、手のひらは上に向ける。両足はそろえてつま先までまっすぐ伸ばす。
【2】両ひざをそろえて上げ、ひざと股関節がそれぞれ直角になるようにする。これで、腸の出口にある直腸がまっすぐになる。
【3】左手を上にもうひと伸ばししながら、右手で腸を軽く押して刺激する。両ひざはそろえたまま左右交互に10回ずつ倒す。手を替えて同様に行う。
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【Step3】腰をひねって、たまった便を絞り出す
<腸1> 腰回りを緩めて腸を刺激「手伸ばし腰ひねり」
腰をひねるだけでも腸を刺激できるが、手を上げて回すことで、腸の周囲の血行がよくなり、排便力がアップする。
【1】両足を腰幅に開いてまっすぐ立ち、両手は体側に沿ってまっすぐ下ろす。
【2】足は動かさないようにして、腰を右にひねって上体を真横に向ける。前側にある左手を上げ、手のひらを内側に向けてひじと指先を伸ばす。
【3】左手を上げた状態で、勢いよく前回しを7回、後ろ回しを7回行う。1の体勢に戻り、今度は腰を左にひねって右手を上げ、同様に回す。
<腸2> 手を横に伸ばしてもOK「腕クロス腰ひねり」
手が上がらない場合は、こちらのストレッチを。腸の活動の活性化が期待でき、便が直腸までスムーズに移動するようになる。
【1】両足を腰幅に開いてまっすぐ立ち、左手を床と平行になるように上げ、体の右側に伸ばす。右手を垂直に曲げ、左手とクロスさせる。
【2】足を動かさずに右手で左腕を引っ張りながら腰を右にひねり、上体を真横に向けてキープし、呼吸をしながら10数える。反対側も同様に行う。
ストレッチを行う場合の注意点
今回紹介したストレッチは、いずれも10秒以内に完了するもの。特に【Step1】の「伸ばしてぐるぐる腕回し」は、最低1日1回でOKだ。
「タイミングを決めた方が継続しやすいので、朝起きたときや歯磨き後、トイレの前、入浴の前後など、自分で決めて行うといいでしょう。
【Step2】と【Step3】は、トイレに行く前に行ってください。いくら腸内環境を整えても、うんちの通り道が曲がっていては、出すのが大変です。逆に通り道が整っていれば、力を入れなくてもスルッと出すことができるのです」(高林さん)
腰をひねると腸のねじれを正しい位置に戻せ、ガスだまり解消の効果が得られ、滞留便が直腸へ移行し、スッキリ出し切ることもできるようになる。全身のバランスを整え、腸を刺激する新習慣で、内側からスッキリしよう!
教えてくれた人
高林孝光さん/アスリートゴリラ 鍼灸接骨院院長
取材・文/山下和恵 イラスト/うえだのぶ、勝山英幸
※女性セブン2021年4月15日号
https://josei7.com/
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