便秘のいきみが死を招く!トイレで死なないために
急激な温度変化により、血圧が急上昇することで起こる「ヒートショック」。寒暖差が激しい時期、場所でのヒートショックによる死亡事故は要注意だ。お風呂場での危険を耳にする人は多いかもしれない。
しかし、危険なのはお風呂場だけではない。
トイレでいきんで脳の血管が切れた47才の妻
「昨年の3月初め、とても冷え込んだ朝のことでした。妻は普段から便秘がちで、トイレが長い。でもそのときは30分経っても出てこない。“大丈夫か?”と声をかけましたが、返事がない。鍵がかかっていたので、慌ててドライバーを使ってドアを開けると、妻が前のめりに倒れていたんです。お尻も便座から外れてしまっていて、床はおしっこまみれだった」
そう話すのは、高島光夫さん(55才・仮名)。幸い、妻は一命を取り留めたものの、脳出血のために左半身にマヒが残り、1年経ったいまもリハビリ生活を送っているという。
「寒いトイレのなかで強くいきんだために血圧が上昇し、脳の血管が切れてしまったのが原因とのことでした。妻はまだ47才で血圧も正常値でしたから、いまでも信じられない気持ちです」(高島さん)
トイレでいきむと血圧が200まで上がる可能性も
平成横浜病院・総合健診センター長の東丸貴信さんは、排便時の「いきみ」のリスクについてこう話す。
「いきむことで体が緊張状態になり、交感神経が活発化して血圧が30~70も上昇するというデータがあります。例えば血圧が130で正常な人でも、いきみによって200にまで上がる可能性がある。血圧が200を超えてしまうと、血管が切れ、脳出血などを起こすリスクが高まります。特に動脈硬化や高血圧などの持病がある人は、非常に危険です」
→朝の入浴は要注意!交感神経が優位になって血圧が変動しやすい
普段から女性は便秘に悩まされがちだが、冬場は特に便秘が悪化しやすいので注意が必要だ。
「胃腸などの消化管の働きをコントロールしているのは副交感神経ですが、冬場は寒さのために緊張状態になり、交感神経が活発化して消化管への血流も悪くなる。そのため消化管の働きが鈍くなり、便秘が悪化しやすいのです」(前出・東丸さん)
さらに、東丸さんによれば一般的に室温が18℃以下になると血圧が上がり、脳出血や脳梗塞、心筋梗塞などの脳血管系の病気のリスクが上がるという。一戸建ての場合、冬場のトイレは18℃を下回っていることも多い。それに加えて排便時にいきむことで、血圧が急激に上昇し、命にかかわるような病気につながってしまうのだ。
がまんしすぎたおしっこ、排尿で血圧が一気に下がる危険
おしっこのがまんのしすぎも禁物だという。
「排尿をがまんしていると血圧が上がりますが、排尿するとそれが一気に下がり、血圧の上下変動は70~80にも達します。血圧が一気に下がると血流が減り、脳貧血で倒れたり、場合によっては心筋梗塞も起こり得る。特に自律神経のバランスが崩れがちな高齢者や血圧の薬(降圧剤)をのんでいる人は、一気に血圧が下がりやすいので注意が必要です」(前出・東丸さん)
トイレで死なないためには、暖房器具を置いてトイレの室内を暖かくしたり、便座を温められる温便座に替えるなどの対応が推奨される。水分や食物繊維をしっかり摂取して便秘の解消に努め、排便時はロダンの「考える人」のようなイメージで、かかとを少し上げて前かがみの姿勢になると、直腸と肛門の角度が広がり便が出やすくなるとのことだ。
トイレで死なないために、普段から対策を怠らないようにしたい。
教えてくれた人
東丸貴信さん/平成横浜病院・総合健診センター長
※女性セブン2020年3月19日号
https://josei7.com/