”尿もれ”は20代以上の女性の2人に1人が経験!その実例と対策|トランポリンで予防!? 摂るべき食材は?
20代以上の女性の2人に1人が経験している尿もれ(※20~60代4万人を対象に2019年P&Gジャパンが調査)。ただでさえ、寒い時期はトイレが近くなるのに、コロナ禍での運動不足で筋力が低下し、尿もれや頻尿に悩む人がさらに増えているという。
「それほど多くの人が経験しているなら」と、安心するのは危険。老化や筋力低下以外の原因が潜んでいる可能性も──そこで、とりわけ40代以上の女性に多い尿トラブルの対処法を紹介する。
出産経験者は「腹圧性尿失禁」、がまんできない尿意は「切迫性尿失禁」
「おしっこががまんできず、トイレにたどり着く前にもらしたことが。幸い自宅だったからよかったものの、これが外出先だったらと思うと怖くて、電車に乗れなくなりました。恥ずかしくて夫にも言えませんが、外出時はおむつをしています」(59才・主婦)
こういった、誰にも言えない尿トラブルを抱えている女性は少なくない。
「尿もれには、腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁、溢流性(いつりゅうせい)尿失禁の3種類があります。このうち女性に多いのは、腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁の2種類で、腹圧性尿失禁は、妊娠や出産経験者がなりやすいといえます。
軽症なら薬や漢方による治療、骨盤底筋や尿道括約筋を鍛えるのが効果的。重症の場合でも、尿道の周囲にある組織をテープで吊り上げるなどの手術で90%以上が改善します」
こう話すのは、順天堂大学大学院医学研究科泌尿器外科学主任教授の堀江重郎さん(「」内、以下同)だ。
もうひとつの切迫性尿失禁は、がまんできない尿意が起こる。
「前出の女性のように、尿意をコントロールできず、もらしてしまうのが切迫性尿失禁です。がまんできない強い尿意が就寝時も含めて1日のうちで複数回起こる『過活動膀胱』の症状の1つで、主に加齢などが原因となります」
過活動膀胱は40才以上の男女の14.1%(約1040万人)が罹患しており、その約半数が切迫性尿失禁を伴う。
「この病気は、薬物治療が有効とされていますが、電気や磁気をお腹やお尻に当てることで急な尿意を抑える治療の研究も進んでいます」
尿もれには3つのタイプがある…女性がなりやすいのは?
■腹圧性尿失禁
特に、40才以上の女性に多く見られ、咳やくしゃみをしたときや笑ったとき、自転車をこぐときなど、お腹に力をいれたときにもれてしまう。主な原因は出産と加齢。男性に比べ、女性の尿道は短く、尿道括約筋やその周辺の筋力も弱い。さらに、出産でこれらの筋肉組織がダメージを受けたり、尿道を圧迫して尿を止める骨盤底筋が衰えてしまう。
■切迫性尿失禁
膀胱が過敏になり、急に強い尿意を感じて、トイレに行くまでに間に合わずもらしてしまう。過活動膀胱の症状の1つ。頻繁にトイレに行く、あるいは、トイレに駆け込むようになるので、外出や車・電車での移動に不安を感じる人も。
主な原因は加齢、便秘、運動不足などによる骨盤底筋の衰え。また、脳障害や泌尿器の炎症によって起こるケースもある。
■溢流性尿失禁
男性の前立腺肥大症によって起こる場合が多い。排尿時に尿を出し切れず、残った尿が無意識のうちにダラダラもれてしまう状態。
夜中2回以上トイレに起きる人はすぐ受診を
このように、尿もれは比較的身近な症状で、原因も加齢などだが、頻尿は別だ。特に夜間頻尿の場合、ほかの病気が潜んでいる可能性がある。56才の会社員Nさんは言う。
「夫(62才)は夜中、3時間に1回程度トイレに行きます。そのたびに隣で寝ている私は睡眠が中断されて大迷惑。とはいえ、私も1回はトイレに起きていて…。ここ数年、2~3時間のコマ切れ睡眠が続いているせいか、疲れが取れません」
正常な排尿の回数は、1日に5~7回。8回以上トイレに行く人は頻尿だという。また、寝ている間に1回以上トイレに起きる人は、夜間頻尿とみなされる。40~50代の半数が夜中に1回はトイレに起き、60代以上の約8割が1回以上トイレに起きているというデータもある。
「夜間頻尿の原因を探ると、ほかの病気が見つかるケースも多いんです。たとえば、重症の糖尿病。糖尿病になると体内の水分が不足するので、それを補おうと水分を摂りすぎて多尿となり、夜中もトイレに起きることに。
また、高血圧、高脂血症、動脈硬化などの生活習慣病にかかると、膀胱に柔軟性を与える一酸化窒素が生成されづらくなります。すると、膀胱が硬くなり、ためられる尿の量も減るため、トイレが近くなるのです」
夜中に2回以上トイレに起きる人は、すぐに泌尿器科で診てもらおう。
「特に男性の場合、夜中に3回以上トイレに起きる人は、死亡率が2倍になるので要注意です」
膀胱を過敏にするカフェイン、アルコール、たばこは夜間頻尿の原因にもなるため、習慣化している人はやめるだけでも改善が期待できる。
尿もれ予防に…トランポリンで筋力アップ
尿もれも頻尿も、予防するには運動が効果的だ。
「尿もれも頻尿も骨盤底筋の筋力低下が大きくかかわっています。ヨガや水泳などもいいですが、おすすめはトランポリン。1日1回3分跳ぶだけで効果があります」
→尿もれ&頻尿予防!寝たまま骨盤底筋を効率良く鍛える方法|骨盤底筋を確認する体の位置とは?
近年は、自宅で楽しめる小型のトランポリンが量販店などで売られている。もし、トランポリンがなければ縄跳びでもいいという。
そして、もう1つ気をつけたいのがサビない体を作ること。
「老化を促進する活性酸素が多くなると、体内が酸化します。酸化とは、体がサビること。膀胱の血流が低下し、細胞がサビると機能低下が起こって、さまざまな尿トラブルを引き起こします」
体がサビる主な原因は過食。米などの糖質、果物の果糖は摂りすぎないこと。ただし、食物繊維の多いもち麦などはおすすめだという。
「腸内環境を整えることは、酸化防止につながりますし、便通にも有効です」
便秘になると、大腸が膀胱を圧迫するのでおしっこも近くなるというわけだ。尿トラブルの予防は運動と食事から。尿活のためにおすすめする食材と控えたい食材のリストは以下を参考に。
膀胱の柔軟性を保つ食材は?
膀胱や膀胱周辺の筋肉に柔軟性を与える 「アルギニン」と「シトルリン」が鍵に!
「膀胱に柔軟性があると、おしっこをたっぷりためられます。柔軟性を維持している一酸化窒素の材料・アルギニンとシトルリンをしっかり摂りましょう」
●アルギニンを多く含む食材
・肉類/鶏胸肉、豚ヒレ肉、牛もも肉など
・魚介類/えび、ほたて、あじ、いわし、かれい、さけ、さばなど
・種子類/アーモンド、えごま、カシューナッツ、ごま、くるみ、松の実、落花生など
●シトルリンを多く含む食材
・うり科の野菜や果物/きゅうり、ゴーヤー、すいか、冬瓜、メロンなど
過活動膀胱の人は控えるべきNG食材
過活動膀胱の症状がある人は、 利尿作用、刺激、酸化ストレスを与える食品には注意を!
「さらに気をつけたいのが水分摂取量。トイレの回数を減らすため水分摂取を控えがちですが、これは逆効果。過活動膀胱の原因は水分の摂りすぎではなく膀胱の機能低下です。脱水を防ぎ、体内循環をよくするためにも水分は1日1.5~2Lは摂りましょう」
●控えるべき主な食材
コーヒー、紅茶、緑茶などのカフェインを含む飲み物、炭酸飲料、アルコール、柑橘系の果物、トマト、生の玉ねぎ、チョコレート、高塩分の食べ物、スパイシーな食べ物、アスパルテームなどの人工甘味料など
過活動膀胱の最新治療法とは?
排尿に関する神経に電気刺激を与える治療法が研究されている。手術の必要はないが、現在は自費診療のみ。薬の効果がない人や副作用(便秘など)に悩んでいる場合は、下記に問い合わせを。
◆こんなかたに…
□過活動膀胱に対する治療薬を12週間以上のみ続けても症状がよくならない
□過活動膀胱に対する治療薬の副作用により、治療薬をのみ続けられない
□治療期間中(5週間)の排尿日誌を記載できる
<お問い合わせ>
順天堂大学医学部附属順天堂医院泌尿器科のホームページ(下記)
https://juntendo-urology.jp/contact/
教えてくれた人
順天堂大学大学院医学研究科泌尿器外科学主任教授・堀江重郎さん/腎臓病・ロボット手術の世界的リーダーであり、尿トラブル改善のスペシャリスト。主な著書に『寿命の9割は「尿」で決まる』(SBクリエイティブ)。
取材・文/佐々木めぐみ イラスト/ユキミ
※女性セブン2021年3月4日号
https://josei7.com/
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