iDeCo・イデコ50代の加入3つの注意ポイント|年金制度改正によるメリットも
iDeCo(イデコ)は老後資金を自分で積み立てることができる年金制度のひとつだ。節税対策にもなり、運用益により老後資金を増やすこともできる制度だが、50歳以降で加入するなら、注意すべきことがあるという。ファイナンシャルプランナーの大堀貴子さんに解説いただいた。
iDeCoとは?
iDeCo(イデコ※)とは、国の年金制度のひとつ、個人向けの確定拠出年金のこと。
年金は主に、会社員や公務員が加入する「厚生年金」、自営業者や専業主婦などが加入する「国民年金」があり、これらは、自分が支払った保険料を自分で受け取るのではなく、現役世代が収めた保険料と国が年金給付額をまかなう賦課(ふか)方式だ。
一方、iDeCoは、自分が支払った保険料を全額自分で受け取ることができ、かつ自分で運用する積立方式。自ら運用する金融機関などを選び、自分で手続を行うものだ。
※iDeCo =individual-type Defined Contribution pension planの略。
なお、確定拠出年金には個人向けの他に、会社で加入し、会社が拠出(掛け金の払い込み)をしてくれる企業型(DC)もある。DCの中には、自己拠出が認められているものもあるが、iDeCoとの併用はできないなどの条件がある。
現行の制度では、iDeCoは60歳から受け取ることができるため、原則65歳から受給となる「国民年金」や「厚生年金」の不足分を補うこともできる。将来、年金だけでは不安なのでiDeCoで老後の資金を備えたいと考える人も多いだろう。
また、iDeCoの拠出金額は、全額所得控除となり、所得税や住民税を軽減することができ、運用益も非課税なので、節税対策としても有効だ。
50歳以降にiDeCoを始める注意ポイント3つ
iDeCoを始めるなら早い段階から長期で積み立てて運用するのがおすすめだ。しかし、親世代の介護が始まったり、自分の老後資金の不安が現実的となる50歳以降にiDeCoを始めようと考える人も多いのではないだろうか。
50歳以上で加入する場合、以下の注意点が挙げられる。
【1】運用期間が短い
iDeCoは、基本投資信託で運用する(保険や預金も選べる)。投資信託とは、株式や債券など価格が常に動く投資商品で元本の保証はない。そのため、初心者でも損をせずに運用益を得るためには、少額の長期積み立てがおすすめだ。
相場が高いときも安いときも変わらずに毎月少額で投資信託を購入し続けることで、高値掴み※などの失敗を防ぐことができるからだ。
iDeCoの場合も、積立期間が長期になるほど損をしにくいといえる。60歳までの運用を考えると、50歳から始めた場合、10年程度積立ができるが、55歳超から始めると積立期間は5年未満となってしまう。長期積み立て投資は、最低でも5年以上が理想だ。
※相場が高いときに購入し、その後、値下がりしてしまうこと。
【2】加入期間が10年以上必要
iDeCoは、加入期間が通算10年以上あることが条件となる。
たとえば、50歳で加入した場合、10年後の60歳から受け取り可能となるが、55歳で加入すると65歳からしか受給できない。
ただし、加入期間の10年は、会社に勤めていたときにDCに加入していた期間も通算できるので、その期間を含めて10年あれば60歳から受け取りは可能だ。
【3】60歳以降は積み立てできない
60歳以降は積み立てはできなくなり、運用指図(既にある資産の運用先の変更等)のみとなるため、長期運用によるメリットが享受できない。
しかし、これら3つの注意ポイントは、年金の新制度により条件が変わる。以下で解説する。
新制度により50歳以降も有利に!?
昨年(令和2年)の5月29日に年金制度改正法が成立。iDeCoについても見直しが行われ、加入年齢が現在の60歳未満から65歳未満に引き上げられた。ただし、施行は2022年5月からとなっている。
これまでの制度では、50歳以上で加入した場合は60歳までしか積み立てできなかったため、長期投資のうまみを享受できなかった。
しかし、新制度により、たとえば55歳以上で加入しても10年間の積み立てが可能に。投資信託の運用で損しないために欠かせない長期積立運用ができるようになるわけだ。
50歳以上でiDeCoの加入を考えている人は、引き出せない期間中の10年は、積み立てを続けることがおすすめだ。元気なうちにできるだけ長期運用をして老後資金として備えておくといいだろう。
文/大堀貴子さん
ファイナンシャルプランナー おおほりFP事務所代表。夫の海外赴任を機に大手証券会社を退職し、タイで2児を出産。帰国後3人目を出産し、現在ファイナンシャルプランナーとして活動。子育てや暮らし、介護などお金の悩みをテーマに多くのメディアで執筆している。