猫が母になつきません 第238話「しんぶん」
私が知らない間に新聞が届くようになっていました。10年以上もとっていなかったのに、母がなぜ急にまた新聞をとることにしたのかわかりませんでしたが、読むならと反対はしませんでした。後日、買い物から戻ると家の前で景品をかかえた新聞勧誘員の若者と出くわしました。人あたりの良い好青年という感じではありましたが、ちょっと苦手な馴れ馴れしさ。母と会ったのは勧誘に来た日以来二度目だと思いますが、昔から知っているかのような雰囲気で母に接しています。ぴちぴちの若者に「おかあさん、おかあさん」と言われて母はきゃぴきゃぴ、うれしそう。契約は3ヶ月だけと言っていましたが、それ以降もとり続けるのはほぼ間違いない。読むなら新聞をとる事は別にかまわないのです。でも高齢者に長期契約をさせたり、解約を認めなかったりと勧誘にまつわる問題は多いと聞きます。このたび気になったのは彼がいつも私の留守に来ていること。考え過ぎかもしれませんが、家の前に車がなければ私がいないことはわかってしまいます。そして私が知らないうちに契約がされたのは事実…。偶然かもしれませんが、そのことは今もひっかかっています。にこにこと何でも話を聞いてくれる若者…求めてるんだろうな、そういうの。
作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母とくらすため地元に帰る。典型的な介護離職。モノが堆積していた家を片付けたら居心地がよくなったせいかノラが縁の下で子どもを産んで置いていってしまい、猫二匹(わび♀、さび♀)も家族に。