猫が母になつきません 第237話「はるとおからじ」
もう来ないのかもしれないな…いつもそう思ったころにやって来るシロ。毎年1月くらいに姿を見せ、春いっぱい、長い時は初夏くらいまでうちにごはんを食べに通って来ます。去年は3月までしかいなかったので9ヶ月ぶりの来訪。それなのにひょこっと、まるで昨日も来ていたかのような顔で、いつもの人懐こい「にゃにゃっ」という挨拶をしてきます。こっちはもう「ひさしぶりー」とか「元気だった?」とかいろいろ言いたいのですが、とり急ぎすぐだせるドライフードを「つきだし」にして、シロがそれを食べている間に大急ぎで好物のツナを器に出してほぐす…もうイソイソが止まりません。ツナをわしわしと美味しそうに食べるシロの背中をじっくり観察すると、相変わらず光っているかと思うほど真っ白で尻尾はふさふさ、痩せていないし傷もなくて元気そう。いない間はどこで暮らしているのか、ふらっとやって来ていつの間にかいなくなって…その自由さはうらやましいし、美しくて凛とした姿を見ると元気が出ます。今や、私にとってシロの訪れは「春もそう遠くない」という知らせになっています。
【関連の回】
第85話_せいする
第150話_週末の恋人
第151話_みせつける
作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母とくらすため地元に帰る。典型的な介護離職。モノが堆積していた家を片付けたら居心地がよくなったせいかノラが縁の下で子どもを産んで置いていってしまい、猫二匹(わび♀、さび♀)も家族に。