猫が冬にかかりやすい病気…おしっこに異変!? 正しい水の飲ませ方とは…
猫は他の動物に比べて膀胱や尿道など泌尿器系の病気にかかりやすく、おしっこに異常が現れる。泌尿器トラブルによる猫のおしっこの異常は、とくに冬場に注意が必要だという。どんなケアを心がけるといいのか? 猫が冬にかかりやすいおしっこにまつわる病気について獣医師が解説する。
猫が冬に発症しやすい泌尿器系の病気とは…
現在の飼い猫や野良猫は、リビアヤマネコの子孫だと言われている。
「リビアヤマネコは、砂漠地帯に生息しており、少ない水分でも生きていける体に進化しました。その遺伝子を受け継ぐ現代の猫も、のどの渇きを感じる感覚が鈍いと考えられています」
こう話すのは、目黒アニマルメディカルセンター/MAMeC顧問の獣医師・佐藤貴紀さんだ。つまり猫はのどの渇きを感知しにくく、水をあまり飲まずにいることで、水分不足になることもあるという。
水分不足が原因で発症する病気
猫の水分不足が原因で発症しやすいのが“下部尿路疾患”だ。
下部尿路疾患とは、膀胱から尿道にかけて起こる疾患の総称のこと。中でも特に多いのが、膀胱が炎症する“特発性膀胱炎”と、尿路に結石がたまってしまう“尿石症”だ。
特発性膀胱炎・尿石症…こんな症状に注意!
・トイレに行く回数が増える
・排尿中に痛がる
・おしっこがまったくでない
・おしっこが濁っている
・おしっこに血が混じる
などがある。
「膀胱炎か尿石症かの区別は、家庭では難しいため、上記のような症状が見られたら、すぐにかかりつけ医の相談したほうがいいでしょう」(佐藤さん、以下同)
猫の下部尿路疾患が冬に発症しやすい理由とは
これらの症状は、特に冬場に発症するケースが多いという。
「人間と同じように、猫も寒くなると水を飲む量が減ります。水の摂取量が減ることで膀胱内で産生される尿も少なくなり、膀胱内に尿が長く滞在することになります。
その結果、尿路に結石ができたり、刺激の強い尿によって粘膜が炎症を起こす膀胱炎を発症したりしやすくなってしまうんです」
猫の泌尿器系のトラブル予防策4
では、家庭ではどのようなことに気を付ければいいのか?ポイントは以下の4つだ。
1.水分量を増やす工夫をする
予防の基本は、水を飲ませること。それには工夫が必要だ。
「猫は新鮮な水を好むので、水飲み場の水はこまめに交換する。さらに流れる水も好きなので、噴水タイプの給水器を用意するのもおすすめです」
・水を飲みやすい高さや大きさの容器に変える
・水を飲む場所を変える
・ペット用のミネラルウオーターを与えてみる
・猫の草に霧吹きをして水分を含ませておく など。
猫の様子を見ながらできるだけ水を飲みやすい環境にしてあげるといいだろう。
2.食事を見直す
食事は、ドライフードだけでなく水分を含んだウェットフードにするのも手だ。また、特発性膀胱炎は、ストレスが原因のことも多い。ストレスを軽減するための成分が入っているフードや、膀胱炎や結石症を予防する専用の療養食に切り替える方法も。
3.おしっこをチェックする
日ごろから、おしっこの回数・量・色・排泄時の様子を観察しよう。
量が極端に少ない、頻繁にトイレに行くわりに出ていないなど、いつもと様子が違う場合は、一度かかりつけ医で相談しよう。
4.定期的に尿検査を受ける
見た目ではわからないおしっこの成分や体の調子を知るためにも、病院にて定期的に尿検査を受けるのもおすすめだ。
→新型コロナとペットの謎を獣医が解説|NYの猫2匹感染…犬は?
猫に必要な1日の水分量の目安は?
猫に必要な水分量は、体重にもよるが成猫で1日に最低50~80mlが目安だ。
理想としては、成猫の体重が約4kgとした場合には200mlくらい水分を摂れると脱水の心配もなくなるという。ただし、運動量が多い猫の場合はもっと水分が必要になる場合も。
水分不足による病気は冬場に多いが、反対に「水を異常に飲むようになる」と腎不全などの疑いもあるという。
猫がおしっこをしやすいようにトイレを清潔に
なお、猫のおしっこは、犬に比べると臭いがきつい。それは、猫の尿には、フェニリンとコーキシンという臭気が強い成分が含まれているからだ。
特に、スプレーと呼ばれる、オス猫のマーキング行為は強い臭気を伴う。去勢手術をするとマーキングをしなくなるが、まれにクセが抜けないという猫もいる。水分不足によって濃縮された尿は、臭いが強くなるケースも。トイレが汚れていると猫は嫌がり、おしっこを我慢することがあるため、こまめに掃除をしてあげよう。
トイレ周りを清潔に保つ意味合いでも、臭気をとる猫砂やスプレーを使用するのもおすすめだ。
教えてくれた人/獣医師・佐藤貴紀さん
麻布大学獣医学部卒業後、勤務医を経て独立し白金高輪動物病院を設立。院長として勤務後、JVCC二次動物医療センター目黒病院センター長を務める。現在、目黒アニマルメディカルセンター顧問(https://mamec.wolves-tokyo.com/)。専門は「循環器」。全国に100人しかいない「獣医循環器学会認定医」。「SuperDoctors 〜名医のいる相談室〜」(https://www.youtube.com/channel/UCUxW…)にて配信中。
取材・文/鳥居優美
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