介護保険料を滞納すると3倍負担だ!介護保険料支払いの意外と怖い話
介護保険料は40歳から支払う義務がある。実はこの介護保険料、滞納するとペナルティが用意されているのだ。なんと2年滞納すると負担額がなんと3倍にも跳ね上がるという。滞納したままでいると意外と怖い介護保険料の支払いについて、ファイナンシャルプランナーの大堀貴子さんに解説いただいた。
介護保険料とは
40歳から加入する国の公的制度『介護保険』に支払うお金のこと。介護保険料を支払い続けることで、要支援・要介護認定を受けたのちに、介護保険サービスの料金を1~3割負担で利用できるようになり、上限はあるが、残りの金額が介護保険から支払われる。
介護保険料の支払額の例(立川市の場合)
介護保険料は所得により異なり、さらに給与天引きなら勤めている企業、自営業、65歳以上の人は住んでいる市区町村により異なるが、例えば東京都立川市を例にあげると、住民税課税世帯で年金収入等が120万円以上200万円未満の場合、介護保険料は7525円(月額)となっている。
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介護保険料の支払い方法は?
会社員・公務員の場合
会社員・公務員の場合、40歳になると給与から健康保険料と同様に毎月介護保険料が天引きされる。また、介護保険は会社が半額分を負担してくれる(健康保険も同様)。
なお、会社員に扶養されている妻は、会社全体で健康保険料と介護保険料を負担してくれるため、自分で別途支払ったり、夫が妻の分を支払ったりする必要もない。
ただし、会社の健康保険制度に『特定被保険者制度』がある夫が40歳未満(介護保険に加入していない)で、妻が40歳以上65歳未満(介護保険の加入年齢)のときは、妻の分の介護保険料を支払うことがある。
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年金受給者の場合
年金を受給するようになると、年金から介護保険料が天引きされる。年金は2か月毎の受給になるため、介護保険料も2か月分天引きされる。なお、扶養されていた妻が年金受給者となると、自分の年金から介護保険料が徴収されるようになる。
自営業者の場合
自営業者等は40歳になると、支払っている国民健康保険に上乗せする形で介護保険料を支払う。国民健康保険には会社員の健康保険のような扶養という概念がないため、40歳以上の人に対してそれぞれ介護保険料がかかる。
また、会社員のように半額負担してくれるという制度はないため、自分で全額支払わなければならない。
支払方法は口座振替や納付書により自分で支払う。
「特別徴収」と「普通徴収」滞納しがちなのはどっち?
介護保険料の支払いは大部分の人が年金や給与からの天引きで支払う。これを「特別徴収」という。
一方、自営業者、無職の人、年金受給者でも年間受給額が18万円未満の人は、納付書や口座振替により自分で支払う。これを「普通徴収」をいう。
天引きで滞納はおきにくいが、普通徴収の場合はうっかり滞納してしまうということも…。以下で滞納について詳しく解説していく。
介護保険料滞納のペナルティー|1年、1年半、2年以上でどうなる?
滞納してもすぐに支払えばただちにペナルティがあるわけではない。
ただし、1年以上滞納している場合は悪質とみなされ、以下で紹介するペナルティ、さらには差し押さえ等の処分を受けることがある。介護保険法に定められた滞納期間ごとのペナルティーを見ていこう。
■1年以上の滞納は介護サービスの利用料を一度全額支払う(介護保険法第66条)
通常介護保険の要介護・要支援認定を受けて介護保険サービスを受けるときには、支払いは負担割合1~3割のみを支払えばよい。しかし、滞納が1年以上となると、いったん介護保険サービスの費用全額を支払ってから、後日払い戻しを受けることになる。
例えば、要介護4で28万円の介護保険サービスを利用した場合、1割負担の人なら2万8000円の負担で済む。しかし、介護保険料を1年以上滞納している場合は、一度28万円を全額支払う必要がある。その後25万2000円の払い戻しを受けることになる。
■1年半以上滞納すると保険給付の支払いを差し止めに(介護保険法第67条)
1年以上の滞納の時点でいったん全額を支払い、後で払い戻しを受けることができるが、その払い戻し金額が差し止められ、差し止められた金額が介護保険料にあてられる。
例えば、要介護4で28万円の介護保険サービスを利用した場合、1割負担の人なら2万8000円の負担で済むため、いったん28万円を支払ってから滞納している介護保険料を差し引き、残りが払い戻されることになる。
■2年以上滞納すると介護保険サービス利用料の自己負担が3割・4割負担に(介護保険法第69条)
介護保険料の支払いは2年を超えると時効となり、後でお金に余裕ができて支払おうと思っても払えない。滞納があった期間は、ペナルティとして介護保険の負担割合が1、2割だった人は3割負担に、3割負担だった人は4割負担へと負担額が上がってしまう。
つまり、介護保険料は変動しないものの介護サービス利用時の負担割合が増える。
例えば、要介護4で28万円の介護保険サービスを利用した場合、1割負担の人なら2万8000円の負担で済むところ、2年以上滞納すると、ペナルティとして3割負担の8万4000円と3倍の負担となってしまうわけだ。
介護保険料の支払いが大変なときは…
このように介護保険料は滞納を続けると負担が大きくなり、2年を超えると取り返しがつかないことになる。もし特別な事情により、介護保険料を支払えない状況であれば、市区町村の窓口に問い合わせをすべきだ。市区町村により異なるが、以下のような対策が用意されている。
また、現在は新型コロナウイルスの影響により支払いが困難になった場合などの特別制度を実施している場合もある。
介護保険料を納付できない場合の対策(例)
・徴収猶予…一定期間支払いを延期できる制度
・分割納入…一括納付ができないときの制度
・減額…要件を満たす場合の支払額を減らす
・免除…要件を満たす場合は支払いを免除される
国で定められた介護保険料の支払いは、できるだけ滞納せず毎月しっかり払っておくのが賢明だ。とはいえ、生活や状況に応じて納付できない場合の措置もあるので滞納を放置せず、早めに自治体に相談しよう。
文/大堀貴子さん
ファイナンシャルプランナー おおほりFP事務所代表。夫の海外赴任を機に大手証券会社を退職し、タイで2児を出産。帰国後3人目を出産し、現在ファイナンシャルプランナーとして活動。子育てや暮らし、介護などお金の悩みをテーマに多くのメディアで執筆している。