料理の達人が「ぬか床」を公開|フルーツ、魚、卵もおいしくぬか漬けに…
かき混ぜる人によっても味が変わるというほど、個性があふれ出るぬか床。ぬか漬けを愛する料理家4名に、マイぬか床へのこだわりと独自の手入れ法を教えてもらった。ぬか漬けを使ったレシピもご紹介する。
→失敗しない【ぬか漬け】入門|ぬか床の作り方、野菜別漬け方、ぬか漬けのお悩みQ&A
フルーツもぬか漬けに|米料理研究家しらいのりこさん
最近はフルーツのぬか漬けにハマってます! と話してくれたのは、お米料理研究家・しらいのりこさん。
「今年新しく作ったぬか床は、昆布で表面を覆っています。ぬかが空気に触れすぎず、乳酸菌がゆるやかに活動するため味のバランスがよくなりました」
ぬか床からはフルーティーで爽やかな香りがする。
「果物はりんごのほか、柿や梨もおすすめ。バナナは溶けてしまって失敗でした(笑い)。野菜の古漬けは1時間~ひと晩水にさらすと塩気がやわらぎ、少しアレンジを加えるだけでご飯によく合うおかずに早変わりします」
★しらいのりこさんのマイぬか床
● 1か月目のぬか床
● ホーロー容器
● 果物も漬けるので、風味付けには爽やかな香りの実山椒を入れている。
「果物を漬けたらフルーティーな香りがぬかに加わり、風味がよくなりました」。
常時きゅうりやりんごなど3~4種類の食材が漬かっている。
「昆布は表面を覆うように置くと旨みが広がり、酸っぱさがやわらぎます」。
■濃厚な甘みが広がるおやつに欠かせない2トップ
「りんごは2日くらいしっかり漬けると甘さが際立ちます。アボカドはトロリとした食感に、まろやかな塩気がよく合います」
ぬか漬けを使ったアレンジレシピ
■かぐや茶漬け
<作り方> 作りやすい分量
【1】ぬか漬け(きゅうり、にんじん、なす、みょうがなど)をせん切りにしてボウルに入れ、すりおろししょうが1片を汁ごと加え、白煎りごまと和える。
【2】【1】をご飯にのせ、煎茶適量をかける。
■ぬか漬けと豚肉の肉みそ
<作り方> 作りやすい分量
【1】ぬか漬け(きゅうり、にんじん、セロリなど)はぬかをつけたまま5mmの角切りにする。
【2】フライパンにごま油適量を熱し、豚ひき肉150gを炒め、肉の色が変わったら【1】を入れる。
【3】【2】にみそ・酒各大さじ1、砂糖小さじ2を加えて炒め、全体がなじんだらラー油適量を回しかける。
教えてくれた人
お米料理研究家 しらいのりこさん /夫との料理ユニット『ごはん同盟』や炊飯教室、雑誌へのレシピ提案などで活躍。著書に『これがほんとの料理のきほん』(成美堂出版)など。
魚も肉も18年目のぬか床へ|料理研究家・山田奈美さん
「ぬか漬けは我が家の健康の秘訣。夏の暑さで弱った体を整えてくれます」
と教えてくれたはの、料理研究家・山田奈美さん。ぬか床には旬の野菜4~5種類の他、肉や魚、チーズなども漬けるという。
「硬い肉も乳酸菌の働きで驚くほど柔らかくなり、焼くだけでもグッとおいしくなります。魚は生で食べられるもの以外はくさみを取るため、塩を振ってください。ぬか床が思い通りの味にならなかったら半分除いて新たなぬかを足すなど、何度でもやり直せる点もぬか漬けの魅力です」
★山田奈美さんのマイぬか床
● 18年目のぬか床
● 木樽
● 旨みの追加には干ししいたけやきなこ、甘みはドライフルーツ、香り付けにはゆずやみかんの皮を加えている。水分には、水ではなくだしを加えることも。
樽は樹齢100年の吉野杉製。
「木樽は通気性がよく水分がほどよく蒸発するのが利点。その反面、適切な水分量を保つのが難しいんです」。
■木樽のぬか床は毎日のかき混ぜが必須
「木樽のぬか床は発酵が活発なのでこまめな管理が必要。手間はかかりますが樽自体の微生物も加わり、年々味に深みが出てきます」
■魚や肉は小分けにして漬ける
ぬかににおいがつきやすい魚や肉は保存袋などで別漬けに。鯛の刺し身は水気を拭き取り、表面にぬかをまぶす。
崩れやすいアボカドも別漬け。皮と種を除き、全体にぬかを薄くまぶしてポリ袋に
■新鮮で栄養豊富な旬の野菜が何倍もおいしくなる
きゅうりやなすなどの定番野菜はもちろん、アボカド、パプリカなども。ズッキーニは漬かりが遅いので、縦半分に切って漬ける。なすとラディッシュは色が抜けやすいので塩もみをしてから漬ける。
ぬか漬けを使ったアレンジレシピ
■魚のぬか漬けのマリネサラダ
<作り方>
【1】鯛の刺し身のぬか漬け半身は削ぎ切りにする。
【2】赤玉ねぎ1/4個、ラディッシュ1/2個は薄切りに、パクチー1束の茎はみじん切りにする。
【3】【2】をせん切りにしたしょうが1/3片、塩・黒こしょう各少量、純米酢大さじ4、オリーブオイル 大さじ1で和え、15分なじませ【1】を合わせる。
【4】ベビーリーフ1/2袋とパクチーの葉を器に盛り、【3】をのせる。
教えてくれた人
料理研究家 山田奈美さん/神奈川・葉山の『古家1681』で発酵食などのワークショップを開催。著書に『はじめる、続ける。ぬか漬けの基本』(グラフィック社)など。
うずらの卵のぬか漬け|フードスタイリスト新田亜素美さん
旨みのきいたぬか床づくりにこだわるフードスタイリスト・新田亜素美さん。
「旨みや塩気よりも酸味が強くならないように、最低でも2日に1回はかき混ぜ、2週間に1回程、干ししいたけやかつおぶしなどの旨み素材と、酸味を和らげる粉辛子を追加します。ぬかは、お米屋さんで精米したての新鮮な生ぬかを購入。冷凍すれば3~4か月は保存できますよ」
★新田亜素美さんのマイぬか床
● 3年目のぬか床
● ホーロー容器
● 基本の旨み素材の他、味の変化に応じて常時4~5種類を追加している。
「キャベツなどの葉物野菜を漬けると、ぬか床自体に少し甘みが加わります」。
「夏場は冷蔵庫で管理していますが、寒くなってきたら冷暗所においています。高温環境ではすぐに酸っぱくなるので要注意です」
■防腐と香り付けを兼ねた実山椒は欠かせない
「ぬかくささを抑え、野菜の味を際立たせる実山椒は、時期を逃すと手に入りにくいので冷凍保存。生麹を入れるとほのかに甘みが出ます」
■うずらの卵は燻製のような独特の香りが絶品
うずらの卵は漬ける期間によって食感や味が少しずつ変化するのも楽しい。ゴーヤーは縦半分に切って断面に塩を振ると味がよくなじむ。
ぬか漬けを使ったアレンジレシピ
■ぬか漬けとじゃこのポテトサラダ
<作り方>
【1】じゃがいも2個は皮をむいて乱切りにして茹で、火が通ったら水気を切り、ボウルに入れて潰す。
【2】【1】とマヨネーズ大さじ1 1/2、塩・こしょう各少量、乾煎りしたちりめんじゃこ大さじ2、食べやすい大きさに切ったぬか漬け適量(パプリカ、ゴーヤー、にんじん、うずらの卵など)を和える。
教えてくれた人
保存袋で気軽にぬか漬けを|料理家・榎本美沙さん
発酵マイスターの榎本美沙さんのぬか床は、酸味をしっかりと感じられるのが特徴。
「乳酸発酵ならではのすっきりとした酸っぱさのあるぬか床が好きなので、旨み素材は少なめにしています。食材を漬けたら1~2時間は常温においておくと、発酵が活発になっておいしくなりますよ。ぬか自体にも栄養が豊富なので、洗わずにそのまま食べることも多いですね」
★榎本美沙さんのマイぬか床
●2~3週間目のぬか床
●ジッパー付き保存袋
●旨み素材は、昆布、赤唐辛子、干ししいたけ、煮干し、かつおぶしの5種類が基本。
「風味付けには毎年、新鮮な実山椒をアク抜きして加えます。香り高く仕上がるのでおすすめです」。
「保存袋を使えば少量でも、短期間でも気軽に始められます。底の隅までしっかり混ぜると、全体の乳酸菌が活発になりおいしくなります」
■かぶとパプリカは酸っぱいぬか床と相性抜群
ぬか漬けを使ったアレンジレシピ
■まぐろと長いものタルタル&パプリカの白和え
■まぐろと長いものタルタル
卵黄のコクとぬかの旨みのコラボ
<作り方>
【1】まぐろの刺し身200g、長いものぬか漬け100gは1~2cmの角切りにする。
【2】ボウルに【1】、しょうゆ小さじ1を入れて混ぜ、器に盛る。
【3】【2】にごま油適量をかけ、卵黄1個をのせ白煎りごま適量を散らす。
■パプリカの白和え
マイルドな甘みの中に酸っぱさが際立つ
<作り方>
【1】パプリカのぬか漬け1個は、小さめの乱切りにする。
【2】ボウルに絹ごし豆腐1/2丁、すりごま大さじ3、しょうゆ・砂糖各大さじ1/2を入れてなめらかになるまで混ぜ、【1】と和える。
教えてくれた人
撮影/菅井淳子
※女性セブン2020年9月10日号
https://josei7.com/