薬食同源の食材で免疫力を鍛える｜東洋と西洋の医学をバランスよく取り入れる料理
薬膳とは、中国伝統医学の理論に基づいて作られた料理や献立のこと。健康増進に効果のある食材や生薬を、季節や一人ひとりの体質・体調に合わせて作る食療法の1つだ。日常の食事によって健康を維持し、病気を治し、長寿を保とうという東洋医学の「薬食同源」思想が基盤となっている。
10年前に乳がんを患い、手術、抗がん剤治療、ホルモン治療等を行った本誌記者（59才・その後、再発なし）が、各種治療とともに真剣に取り組んだのが「食生活の見直し」。食事、運動、睡眠など日々の生活が、がん予防にいかに大切か、自らの体験を踏まえつつレポートします。
【目次】
西洋、東洋の医学のよいところを取り入れる
東洋医学では体全体のバランスを考えながら、本来人間に備わる自然治癒力を高めようと、食品や薬用植物の利用法を追求。一方で西洋における栄養学は、病気と食事との関係を科学的に分析・検証し、健康指針や食品開発に役立ててきた。
この2つの医学のよいところを取り入れ、がんの漢方治療や食のアドバイスを行っているのが、医師の福田一典さんだ。
「食べる人の体質や症状、季節に応じて、日常メニューを少し工夫するだけで、毎日の食事を立派な薬膳にすることができます。
食養生に用いる食材の選択基準は、
【1】容易に材料を入手できるもの。
【2】有効性が期待できるもの。
【3】安価であるもの。
【4】通常の摂取量なら長期間 食しても害のないもの。
を選ぶとよいでしょう」
そこでここでは、東洋の食養生に西洋の栄養学も取り入れて、免疫力を高め、がんや感染症予防に効果のある薬食同源料理と食材を紹介する。
薬食同源食材と料理
●薬食同源食材：鮭
胃腸を温めて消化機能を増進。水分代謝をよくし、むくみを解消する。血の巡りをよくし、風邪をひきやすい人や冷え症の人に効果がある。
●薬食同源食材：陳皮（ちんぴ）
陳皮はみかんの皮を乾かしたもの。胃の働きを活発にし、胃もたれや食欲不振に効く。風邪やがんの予防にも効果があるとの報告もある。
●薬食同源食材：にんじん
免疫力をアップしさまざまな病気を予防するカロテンや、食物繊維（水溶性、不溶性両方を含む）を豊富に含み、便秘解消や整腸作用に効果的。
料理レシピ：鮭と陳皮と野菜の酢じょうゆ和え
＜材料＞（2～3人分）
鮭…2～3切れ
陳皮（※）（千切り）…少々
パセリ（みじん切り）…少々
＜Ａ＞
パプリカ（千切り）…1/2個
玉ねぎ（スライス）…20g
にんじん（千切り）…20g
（ほか、水菜など好みの野菜）
＜B＞
しょうゆ…大さじ1
酢…大さじ4
グラニュー糖…大さじ1
オリーブオイル…大さじ3
だし…大さじ3
塩・こしょう…少々
（※）陳皮は薬膳専門店や自然食品店、通販などで購入可能。自分で作る場合は、なるべく農薬量の少ないみかんの皮を使用するとよい。
＜作り方＞
【1】＜Ａ＞を＜B＞に30分ほど漬け込む。
【2】鮭をグリルで焼き、粗熱が取れたら食べやすいサイズにほぐして【1】に加え、器に盛る。陳皮とパセリを散らせば出来上がり。
●薬食同源食材：ごま（胡麻子）
古くから不老長寿の妙薬として珍重されてきた食材。抗酸化作用の高いセサミンを多く含み老化を防止。貧血、便秘、冷え症なども改善する。
●薬食同源食材：くず（葛根）
葛根はマメ科植物のくずの根で、古くから漢方の生薬としても使われてきた。発汗、解熱作用があり、風邪のひき始めや免疫力の維持に効果がある。
料理レシピ：ごま豆腐
＜材料＞（2人分）
くず粉…50g
練りごま…50g
水…500ml
塩…少々
砂糖…少々
※わさびやしょうゆをかけるとおいしい。
＜作り方＞
【1】すべての材料を鍋に入れてよくかき混ぜ、弱火で約15分、練りながら煮込む。
【2】バット（流し箱）に【1】を入れ、冷蔵庫で冷やせば完成。
●薬食同源食材：くこの実（枸杞子）
血行をよくし血糖値やコレステロール値を下げる。貧血、ひざや腰の痛み、目の疲れにもよい。長く続けることで肝臓や腎臓を丈夫にし、免疫機能を高める。
●薬食同源食材：春菊
腸の機能を整える葉緑素が多く、老廃物の排泄を促し解毒。肌の老化や不眠、イライラ、のぼせなどを解消。痰を切り、咳を鎮める効果もある。
料理レシピ：春菊とくこの実の玄米雑炊
＜材料＞（2人分）
米（冷やご飯）…2カップ
春菊（一口大）…2本
しらす…適量
水…3カップ
白だし…大さじ2
塩…少々
くこの実（枸杞子）…少々
＜作り方＞
【1】土鍋に春菊以外の材料を入れて沸騰させる。
【2】沸騰したら弱火にして約5分加熱し、春菊を入れて一煮立ちさせれば完成。
●薬食同源食材：山いも
消化酵素を多く含み、下痢など消化機能の改善に効果がある。滋養強壮、免疫力を高める作用もあり、老化防止の薬として古くから食されている。
●薬食同源食材：くるみ
良質の不飽和脂肪酸を含み、血液の粘性や血管の老化を抑え、動脈硬化などの生活習慣病を予防。ただし高エネルギー食品なので、食べすぎには注意。
●薬食同源食材：えび
えびに多く含まれるタウリンは、高血圧が原因となる血管障害を予防。疲労回復、血行促進、食欲増進、足腰の冷え、めまいなどに作用。
料理レシピ：山いもとえびのくるみ和え
＜材料＞（2人分）
いも（千切り）…50g
むきえび（背わたを取る）…30g
ブロッコリー（小房に分ける）…40g
くるみ（細かく砕く）…適量
酢水…適量
ポン酢…適量
塩…少々
＜作り方＞
【1】長いもを酢水にさらす。
【2】ブロッコリーとむきえびを、さっと塩ゆでする。
【3】【1】、【2】、くるみを和えて、ポン酢をかければ完成。
●薬食同源食材：干ししいたけ
がん予防に効果のあるβ-グルカンが豊富。体や脳の細胞を活性化させ免疫力を高める。日光に当てるとビタミンDが増え、カルシウムの吸収率が高まる。
●薬食同源食材：鶏肉
良質なたんぱく質を含み、消化機能を高めて造血作用を強化。体にスタミナをつける働きを持つ。食欲不振、体力増強、疲労回復、下痢改善などにも効果的。
料理レシピ：鶏肉と干ししいたけのスープ
＜材料＞（2～3人分）
鶏肉（もも）…150g
干ししいたけ…大1本
小松菜…50g
くこの実（枸杞子）…適量
水…3カップ
＜A＞
しょうが（細切り）…1片
にんにく（すりおろし）…1片
ねぎ（小口切り）…適量
＜B＞
しょうゆ…小さじ1（好みで調節）
塩・こしょう…少々
＜作り方＞
【1】干ししいたけを水1カップでもどし細切りにする（もどし汁はとっておく）。
【2】鍋に水2カップと鶏肉、＜A＞を入れて中火で煮立ててアクをとる。
【3】【2】に【1】の干ししいたけのもどし汁、ざく切りの小松菜を加え弱火で10分ほど煮て、＜B＞で味を調える。器に盛り、仕上げにくこの実を添えれば完成。
●薬食同源食材：にんにく
消化吸収をよくし、免疫力を高めて風邪やインフルエンザ予防に効果を発揮。疲労回復、抗がん作用、血糖値の低下など幅広い薬効をもつ食材。
●薬食同源食材：しょうが
血行をよくして新陳代謝を高め、免疫力を高める。体を温めて発汗させ熱を下げる作用があるので、風邪のひき始めに食すると効果がある漢方の生薬。
●薬食同源食材：豚肉
虚弱体質の改善や病後の体力回復、滋養強壮に適した食材。体に潤いを与える働きがあり、乾燥肌や喉の渇き、空咳、便秘の緩和にもおすすめ。
料理レシピ：豚肉とほうれん草のしょうがにんにくがけ
＜材料＞（2人分）
豚肉（バラ肉かしゃぶしゃぶ用の薄切り肉）…120g
ほうれん草（ざく切り）…半束
＜Ａ＞
にんにく（すりおろし）…1片
しょうが（すりおろし）…10g
玉ねぎ（すりおろし）…1/4個
ポン酢…適量
＜作り方＞
【1】食べやすい大きさに切った豚肉を熱湯でサッとゆで、ざるにあげて水気を切る。
【2】ほうれん草も軽くゆでて水気を切り、皿に盛る。
【3】【2】に【1】をのせて、＜Ａ＞をかければ完成。
●薬食同源食材：いちご
空咳や喉の痛み、消化不良を予防。ビタミンCや食物繊維が豊富で、胃の消化を助け、食欲不振やお腹のはり、便秘を解消する効果がある。
●薬食同源食材：豆乳
腸内細菌の働きを活発にするオリゴ糖を含み、腸内の環境を整えて便通をよくする。大豆のイソフラボンには、がんを抑制する効果も期待されている。
料理レシピ：豆乳の杏仁豆腐
＜材料＞（2人分）
調整豆乳…250ml
きな粉…適量
はちみつ…適量
ゼラチン…3g
水（ゼラチンふやかし用）…適量
＜A＞
いちご…適量
バナナ…適量
＜作り方＞
【1】鍋にふやかしたゼラチンを入れる。
【2】ゼラチンが溶けたら豆乳を加えて温める。
【3】豆乳が温まったら器に流し入れ、冷蔵庫で冷やして固める。
【4】【3】に＜A＞を添えて、きな粉、はちみつをかければ完成。
教えてくれた人
医師・福田一典さん／1953年、福岡県生まれ。米国でがんの分子生物学的研究を行い、国立がん研究センターでがんの予防法を研究。現在は西洋医学に漢方を取り入れた医療で食事指導なども行う。銀座東京クリニック院長。著書に『がんに効く食事、がんを悪くする食事』『福田式 がんを遠ざけるケトン食レシピ』など多数。
撮影／茶山浩
※女性セブン2020年6月25日号
●食事で体を整える養生法「薬膳」レシピ｜免疫力をアップしてがん予防
