世界中で研究が進む感染症に効果的な栄養素。免疫力を高める世界の食品とは
750万人以上が感染し、42万人以上が死亡した新型コロナウイルスの猛威は、いまなお世界で拡大を続けている。ブラジルでは新型コロナ感染者数が累計83万人を突破し、米国に次いで世界に2番目に多い(6月15日現在)。WHOは「南米が感染拡大の中心地となった」と警告。
当初は、温暖な地域では感染が拡大しにくいと予測されていたが、地球のどこにいてもこのウイルスから逃れられないことがはっきりした。
ウイルスに負けない「免疫力」をつけるには
数年先ともいわれるワクチンや特効薬が完成するまでの間、私たちにできるのは「新しい生活様式」による感染予防と、ウイルスに負けない「免疫力」を身につけることだ。
人の体には、ウイルスや細菌から体を守る「免疫機能」が備わっているが、加齢や生活習慣の乱れによってその機能は低下する。それを防ぐために、世界各国で感染症に効果的な栄養素の研究が進んでいる。名古屋学芸大学健康・栄養研究所所長で、『100歳まで自然に元気な和食の流儀』(白秋社)著者の下方浩史さんはこう解説する。
「いまのところ、新型コロナに直接効果がある食品は見つかっていません。しかし、ウイルス性疾患、特に呼吸器の感染症予防や治療に有益とされる栄養素については、さまざまな報告があります」
●ビタミンA、D。亜鉛、セレンに注目
4月16日に発表されたスリランカのコロンボ大学の研究者らによる論文では、ビタミンやミネラルなどの栄養素の有効性が指摘されている。ビタミンAには、皮膚や粘膜を保護して免疫機能を増強する作用があり、ビタミンDは欠乏すると「急性ウイルス性呼吸器感染症」のリスクが高まるという。
さらに、ミネラルの一種である亜鉛とセレンは、免疫機能に直接関係する。
「亜鉛が不足すると、免疫機能が下がって風邪をひきやすくなります。新型コロナで重症化のリスクが高いといわれる高齢者には降圧剤を常用している人も多いですが、降圧剤は亜鉛の吸収を抑えるため、高齢者ほど亜鉛の欠乏を起こしている可能性が高い。同じく、セレンが足りないと免疫機能が低下するうえ、認知機能低下のリスクが増大します」(下方さん・以下同)
魚介類に豊富に含まれる亜鉛やセレンは、ビタミンと一緒に摂取することで栄養効果が高まるといわれている。だからといって、サプリメントに頼りすぎると逆効果になることもある。
「ビタミンEは欠乏すると免疫機能が落ちますが、喫煙者がサプリメントでビタミンEを過剰に補給すると、肺炎のリスクが高くなるという研究結果があります。喫煙者に限らず、栄養素はあくまでも食事から摂取するのが基本ということを忘れないでください」
世界には、日本の食品の数倍の栄養価を持つ食品も存在し、その効果はサプリメント並みだ。
下方さんが選ぶ、「免疫力を高める世界の食品ベスト5」は以下の通りだ。
免疫力を高める世界の食品ベスト5
5位:テンペ(インドネシア)
テンペ菌で大豆を発酵させたインドネシアの納豆。大豆イソフラボン、食物繊維が豊富。揚げものや炒めものに最適。
4位:臭豆腐(しゆうどうふ)(台湾)
豆腐を納豆菌や酪酸菌で発酵させた汁に漬け込んで作る“おつまみ”。腸内細菌の良質なエサとなるオリゴ糖も含まれる。
3位:アンチョビ(ヨーロッパ)
熟成させた塩辛い小魚のオイル漬け。亜鉛やセレンなどのミネラル、ビタミンDがたっぷり。
2位:フェタチーズ(ギリシャ)
ヤギや羊の乳から作られた現存する世界最古のフレッシュチーズ。乳酸菌とビタミンAが豊富に含まれる。
1位:ザワークラウト(ドイツ)
キャベツを乳酸菌で発酵させた肉料理に欠かせないドイツのスーパーフード。食物繊維、抗酸化ビタミンが豊富。
教えてくれた人
下方浩史さん/名古屋学芸大学健康・栄養研究所所長。『100歳まで自然に元気な和食の流儀』(白秋社)の著者で「老化」と「食事」のパイオニア。
※女性セブン2020年6月18日号
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