高木ブーがウクレレの調べにのせて今こそ伝えたいこと
「マスクしてるか-! 手洗えよー! コロナに負けるなー!」。5月2日(土)夜にNHKBSで放送された『外出自粛の夜に~ウクレレでリレー音楽会~』(再放送あり)で、高木ブーさんはおなじみの「いい湯だな」をウクレレで奏でながら、日本中に呼びかけた。長く続く「ステイホーム」の日々、ブーさんは何を思いどう過ごしているのだろうか。(聞き手・石原壮一郎)
家族にダメ出しされた初めてのリモート撮影
このあいだ放送された『外出自粛の夜に~ウクレレでリレー音楽会~』(NHKBS1)は、おかげさまで好評だったみたいで、番組が終わってからすごくたくさんのメッセージやコメントをもらってます。僕にとっては、志村けんの追悼番組(4月1日、フジテレビ)以来、久しぶりのテレビ出演でした。
サザンオールスターズの関口和之君がトップバッターで、ジェイク・シマブクロ君や荻野目洋子さん、アマチュアの愛好家の人たちなど、日本とハワイの16人のウクレレ奏者をつないで、最後にバトンを受け取ったのが僕。志村のことや自分とウクレレの関係を少し話して、「ブルーハワイ」と「いい湯だな」を歌わせてもらいました。
フィナーレは、16人で「星に願いを」をリモートで合唱。それぞれが離れた場所で歌ってるんだけど、音楽は見てる人も含めてみんなの気持ちをつなげて、つらい気持ちを癒やしてくれるんだなって思って、ちょっと泣きそうになっちゃった。再放送(詳細はプロフィール欄に)も何度かあるみたいだから、よかったら見てください。
この番組では、今のご時勢ならではっていうか、自分の家でのリモート撮影にも初挑戦しました。娘のかおると旦那さんがそれぞれのスマホで撮影してくれたんだけど、ディレクター役の娘がなかなか厳しいんだよね。
「お父さん、目線をもっと上に」とか「表情をもっとやわらかく」とか、いろいろダメ出しされちゃった。それも含めて楽しかったな。
僕が歌っている後ろには、「飛べ!孫悟空」(TBS系、1977~1979年)のときのメンバー5人のぬいぐるみが並んでます。番組で実際に使われた人形をモデルにして、かおるの旦那さんの妹たちが手作りで作ってくれたんだけど、よくできてるよね。これがあると僕もメンバーといっしょに歌っている気持ちになれるし、見ている人がドリフのことを思い浮かべてくれるかなと思って。長さんも志村もいるしさ。
「ブルーハワイ」を歌っているときは、前にこの連載にも載せてもらったけど、1974(昭和49)年にドリフのメンバーみんなでハワイに行ったときの写真が画面に映し出された。もう46年前か。僕もみんなも若かったなあ。
「いい湯だな」を歌っているときは、「8時だョ!全員集合」のエンディングで「ババンババンバンバン」って踊ってたときの気持ちがよみがえってきた。見ているみなさんも、あの頃に戻ってくれたとしたら嬉しいです。
ほとんど外に出ない今、していること
このところ、たまに家の前の私道で深呼吸するぐらいで、ほとんど外に出てません。わりと時間があるから、いつもはできないことをやってる。昔やったハワイアンの楽譜を探してきて練習してみたり、コーラス用の譜面を書いてみたり。
古い写真の整理もしてて、それでハワイの写真も出てきたんだけどね。YouTubeで志村の追悼でアップされてる「ドリフ大爆笑」やWOWOWプライムでやってたドリフの映画も、立て続けに見ちゃった。
なんだかんだでやることがいろいろあって、それなりに充実してるのかな。ライブで歌えないのは寂しいけど、それはしょうがない。またできるようになったときに備えて、しっかり準備を重ねたり、やりたいことのイメージをふくらませたりしておきます。久しぶりのステージは、演奏するこっちも聴いてくれるお客さんも、また格別の気分だと思うよ。
こういう状況になってあえてよかったって言えるのは、家族そろってご飯を食べる機会が増えたことかな。感染の初期症状として味や匂いがわからなくなるって話もあったから、ご飯食べながら「うん、おいしいから大丈夫」なんて言い合ったりしてね。
かわいそうなのは、孫のコタロウだよ。春から高校に入学したのに、入学式もなかったし学校にも行けてない。高齢の僕がいるからって、外出も我慢してくれている。
このあいだ「エレキギターをやってみたい」って言うから、僕が持っていたのをひとつあげた。「ここはどうすればいいの?」「こう押さえるんだよ」なんて調子で、マンツーマンでエレキ教室をやってる。彼の興味がこのまま続いて、いつかセッションとかできたら嬉しいな。
コロナとの戦いは、まだ長引きそうです。番組でも言ったけど、今が踏ん張りどき。みなさん、なるべく家にいましょう。くよくよしたってしょうがない。がんばりましょう!
「音楽は、つらい気持ちを癒してくれるんだなって思ったら、涙が出そうになったよ」
高木ブー(たかぎ・ぶー)
1933年東京生まれ。中央大学経済学部卒。いくつかのバンドを経て、1964年にザ・ドリフターズに加入。超人気テレビ番組『8時だョ!全員集合』などで、国民的な人気者となる。1990年代後半以降はウクレレ奏者として活躍し、日本にウクレレブーム、ハワイアンブームをもたらした。CD『美女とYABOO!~ハワイアンサウンドによる昭和歌謡名曲集~』など多数。著書に『第5の男 どこにでもいる僕』(朝日新聞社)など。『外出自粛の夜に~ウクレレでリレー音楽会~』(NHKBS1)の再放送は、5月5日(火)午後2時~2時50分、5月9日(土)午後7時~7時50分、5月23日(土)午後2時~2時50分の予定。
いしはら・そういちろう
1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」など著書多数。この連載ではブーさんの言葉を通じて、高齢者が幸せに暮らすためのヒントを探求している。
撮影/菅井淳子