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フランスベッド、日本初の介護用ベッドのレンタル事業を始めた理由と歴史「12年目に逆境からの挑戦【想いよ届け!~挑戦者たちの声~Vol.6前編】

 介護に役立つベッドや車いすなどの福祉用具は、公的な介護保険でレンタルすることもでき、使用する際は、レンタルという選択が一般的になった。介護保険制度が始まる以前、いち早くレンタル事業を始めたのが、ベッドメーカーの老舗、フランスベッドだ。その歴史は1980年代に遡る。

挑戦者たち/プロフィール

フランスベッド・取締役常務執行役員 メディカル事業本部長 米本稔也さん

大学では社会福祉学を専攻し、1991年フランスベッド入社。医療機器や介護ベッドなどの福祉用具のレンタル事業を手がけるメディカル事業に長年従事し、2025年取締役常務執行役員となる。趣味は「夫婦で街歩きや公園散歩」

フランスベッドがレンタルを始めるまで

「フランスベッドでは、介護ベッドなど福祉用具のレンタル事業を40年以上前から手がけております。私が入社したのは1991年ですが、入社するずいぶん前から続けてきた事業です」

 穏やかに語るのは、フランスベッド・取締役常務執行役員でメディカル事業本部長を務める米本稔也さん。スラリとした長身、バリッとスーツを着こなす米本さんだが、カメラの前では遠慮がちに「猫背になってない?」と周囲を和ませる。

 米本さんが真新しいスーツをまとい、フランスベッドメディカルサービスに入社したのは1991年。バブル時代の終わり、レンタル事業が大きく発展を遂げる過渡期でもあった。

「大学時代に社会福祉を専門に学んでいたので、フランスベッドが介護ベッドのレンタル事業を手がけていることは何となく知っていました。

 就職活動中、たくさんの企業が集う就職フォーラムに行ってみたら、フランスベッドのブースがあって、社員さんの話を聞いているうちに、トントン拍子に話が進んで。程なくして内定が出ました。これもご縁だろうと、入社を決めました」

 米本さんは入社以来35年、同社のメディカル部門で医療機器や介護・福祉用品のレンタル事業の普及・拡大に尽力してきた。

 フランスベッドと介護、その結びつきにピント来ない人もいるかもしれない。まずは同社の歴史を振り返ってみよう。

フランスベッドの歩み「前身は町工場」

 フランスベッドといえば、その名に“憧れの高級ベッド”のイメージを重ねる人もいるだろう。

 同社の前身となる双葉製作所は、東京・三鷹に家具やスクーター用シートの製造を生業とする町工場として1949年に誕生した。終戦からほどなく日本が復興に向けて力強く歩み始めた頃の話だ。

 そして1956年、同社は高度経済成長期へと一歩踏み出した時代、日本で初めて「分割ベッド」を発売。「ベッド」としても「ソファ」としても使えるもので、畳の上に布団を敷いて寝る暮らしが当たり前だった日本に、まさに憧れの西洋文化として「昼はソファ、夜はベッド」という新たな生活スタイルを提案した。

利用者の声から着想した新ビジネス

 この画期的なベッドは、社内公募で「フランスベッド」と名付けられた。そしてこの製品名が4年後の1961年に新たな社名として採用され、企業名を「フランスベッド」として歩み始めることとなった。

 そんな“憧れ”のフランスベッドが、日本初となるベッドのレンタルという新たなビジネスに着手したのは1983年のことである。

「介護保険制度が始まったのが2000年ですから、それより17年も前のことです。当時は福祉用具のレンタルを後押しする制度も環境も整っていませんでした。そんな中で、この事業を始めるきっかけになったのは、あるお客様からの声だったんです。

 親御さんのために療養用のベッドを購入したお客様から、『親が思いがけず早く亡くなり、不要になってしまったベッドを下取りしてほしい』という要望がありました。その話を聞いた今の社長(代表取締役社長・池田茂さん)が、ベッドを必要な期間だけレンタルするサービスへのニーズにいち早く着目したのです。

 当時、高齢者が将来的に増えていくことが確実な時代背景の中で、介護が社会の課題になり始めていました。

『これからの日本に介護用ベッドをレンタルするサービスは絶対に必要だ、高齢者とその家族の力になりたい』という池田の強い信念がありました。

 当然ながら、当時は在宅介護向けにベッドをレンタルするという仕組みはまだ世の中に存在していませんでした。今でこそ介護に必要なベッドや車いすといった福祉用具は、介護保険を使ってレンタルすることは浸透していますが、そもそも自宅で使うベッドを、お金を出して借りるという発想自体、斬新なものでした。

 しかし池田は、いつの時代も『お客様にとって良いもの』『社会に役に立つもの』の信念のもと、ニーズがあると判断すれば、スピード感をもって動き出す人物です。最初はたった2人の社員だけでレンタル事業を立ち上げました」

1983年ベッドのレンタル事業をスタート

 1983年、日本初となるベッドのレンタルサービスはこうして産声を上げた。しかしながら、事業は当初から逆風を受けていた。

「当時、社内ではビジネスとしての収益性に対する疑問の声もあったそうです。まだ世の中にないサービスなので、ノウハウや顧客にリーチする方法も模索する日々が続いていました。

 あるとき池田はサービスを周知するために、テレビCMを打って出ることにしたんだそうです。CMの放送時間にあわせて会社の電話の前でドキドキしながら待機し、電話が鳴ったら大喜びで受話器を取った、なんていうエピソードも社内で語り継がれています」

 その後1987年には「フランスベッドメディカルサービス」として事業を本格化。長年赤字が続く厳しい時期を経て、ようやくビジネスが黒字化したのは、スタートから12年目となる1995年のことだった。

「時代を先取りしたビジネスでしたが、だんだんと世の中が追いついてきたんですね。ベッドをレンタルされたお客様のご自宅に訪問すると、ご家族から喜びの声をいただくことが増えていったんです。

 介護や療養中のお客様はベッドで過ごす時間が長くなりますから、ご自宅のベッドを囲んで家族で大切な時間を過ごすことができたと感謝されることも多いんですよ。

 私自身もお客様のご家庭を訪問していましたので、ご家族の笑顔をよく覚えています」
(次回につづく)

撮影/柴田和衣子 取材・文/斉藤敏明

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