【神奈川県川崎市】注目のサ高住と介護付有料老人ホームまとめ
オープン間近の話題の施設や評判の高いホームなど、カテゴリーを問わず高齢者向けの住宅全般を幅広くピックアップし、実際に訪問して詳細にレポートしている「注目施設ウォッチング」シリーズ。
武蔵小杉駅周辺の開発もあり、年々人口が増加している神奈川県川崎市。若いファミリー層が移り住んではいるものの、高齢化率は2017年に20%を超え、高齢者向け施設のニーズも高まっているという。そこで今回は、150万人近くが暮らす政令指定都市・川崎市にあるサービス付き高齢者向け住宅と介護付有料老人ホームを紹介する。
多様なニーズに対応したサービス付き高齢者向け住宅「ココファン柿生」
「高齢者住まい法」の改正により誕生した、介護・医療と連携したバリアフリー構造の賃貸住宅である「サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)」。法改正が行われた2011年から7年が経ち、段々と一般の高齢者にも「サ高住」という言葉が浸透してきていることを感じる。しかし、家族や友人が入居していない場合、実際に訪れてみたことのない人も多いのではないだろうか。
今回ご紹介する「ココファン柿生」は、株式会社「学研ココファン」の運営するサ高住だ。学研ココファンは9月時点でサ高住を5412室提供しており、業界2位と安心感のある実績を持っている。ココファン柿生には、生活スタイルや身体の状態に合わせて選べる4タイプの部屋があるという。1人暮らしはもちろん、夫婦で入居したい高齢者のニーズにも応えているそうだ。
ココファン柿生には、訪問介護の「学研ココファン柿生ヘルパーセンター」とデイサービスの「デイサービス ココファン柿生」が併設されている。入居者も利用することができるので、馴染みのスタッフからサービスを受けられるという。デイサービスでは、東北大学の川島隆太教授との共同研究に基づき、学研が開発したオリジナルの脳活性プログラム「脳元気タイム」を提供。100種類ほどある「脳活性度」を高くするアクティビティの中から、デイサービスに適したものを選んでいるそうだ。
サ高住への入居を検討する際に気になるのが、介護が必要になっても住み続けられるのかどうかということ。ココファン柿生は、更新のない終身賃貸借契約ができる高齢者住宅として川崎市の認可を受けている。また、学研ココファンが運営する訪問介護やデイサービスを提供する介護サービス事業所が併設されていること、介助が必要になっても入浴できる個浴室があることも安心材料になりそうだ。
日々の食事は、管理栄養士監修の栄養バランスの整った食事を1食単位で頼むことができるという。また、ミニキッチンのついているタイプの居室では自炊もできるので、自身の生活に合わせた食生活を送れるそうだ。
「0歳から100歳を超える高齢者までとよく言っていますが、サ高住を拠点として、ただ住むだけでなく、シニアと子どもの交流など世代間交流も積極的に進めています。訪問看護もサ高住を拠点にして展開していこうとしています。サ高住に見学に来る方から医療面について聞かれることも多いので、訪問診療だけではなく、訪問看護もプラスして、より安心感のあるサービスを展開していきたいと思っています」(ココファン柿生事業所長の丸山奈津美さん)
学研は今後、「学研版地域包括ケアシステム」を推進していこうとしている。サ高住を拠点として、高齢者だけではなく、地域の子育て世代など多世代が安心して暮らせる街づくりを目指しているのだという。
→多様なニーズに対応したサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)<前編>
→親子で満足度が高いサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)<後編>
看取りまで対応している住宅型有料老人ホーム「ヒルデモアたまプラーザ・ビレッジ l」
東急田園都市線「たまプラーザ」駅北口より歩くこと13分、ヒルデモアたまプラーザ・ビレッジl、ll、lllが見えてくる。広大な敷地に3棟が建ち、それぞれが特徴を持ちながら、一体で運営されている。今回主に紹介するビレッジlは介護型で、llとlllは自立型。自立型のll、lllに入居し、介護が必要になった場合、lに移り住むことができる。慣れ親しんだ場の中での引っ越しなので、スタッフや入居者も顔見知りで安心感があるという。実際に移り住んだ入居者もいて、口コミで評判が広がっているそうだ。
「ずっと住める」ことを謳っている介護施設は多いが、規約をよく読んでから契約することをお勧めしたい。認知症の症状が進行したり、入院で長期間不在になった場合にどうなるのかを見学の際に確認しておくことが必要だ。最期が近づいたときに頼れないのでは、本人も家族も困ってしまう。しかし、ここでは契約書という最も重要な約束事で終の住処を作る覚悟を示しているという。
「認知症や長期間不在を理由に、私たちの方から入居契約を解除できる規定は設けていません」(ヒルデモアたまプラーザ・ビレッジ l支配人の岩佐茂さん、以下「」は同)
会社として退路を断ち、終の住処として過ごせる場にしようと努力を続けているのだ。施設の特徴が書かれた「三つ星ムック」という冊子があり、入居者から三つ星をもらえるような介護を目指すための約束事が書かれている。認知症ケア、ターミナルケアについての考え方も明確に示されているので、入居を検討する際には一読しておきたい。
「特に認知症をお持ちのご入居者の場合は、言葉での表現や行動でご自身の望みを示すことが難しく、ケアスタッフもご本人が真に望んでいることを探りきれないことがあります。当社では、周囲の関わりやサポートによってご本人のより良い時間を増やすヒントを見つけるために、認知症ケアマッピング(Dementia Care Mapping=DCM)という行動観察手法を取り入れています。まさに地図を作るように、5分毎にご入居者の様子を観察・記録し、チームでのケアの検討に活かしていきます」
ここでは「パーソン・センタード・ケア」というイギリスで提唱された考え方に基づいて認知症ケアを行っている。認知症によって起こる行動は人それぞれで、ケアスタッフは表面的に行動を見るのではなく、本人の望んでいることと自分たちにできるサポートを探りながら工夫を行うそうだ。そのためにはまず人格を尊重し、声にならないメッセージを受け止める必要があるという。
→「終の住処」を追求する介護付有料老人ホーム<前編>
→看取りまで対応している住宅型有料老人ホーム<後編>
リハビリ特化型を目指す介護付有料老人ホーム「フローレンスケアたまプラーザ」
「フローレンスケアたまプラーザ」はリハビリ特化型の介護付有料老人ホームを目指しているという。その中心的な役割を担うのが、理学療法士の原崇さん。原さんは常勤の機能訓練指導員として、日々のリハビリに取り組んでいる。総合病院などで経験を積んできた原さんの役割は、リハビリだけではなく、福祉用具の選定にも及ぶ。リハビリを推進していくための中心的な役割を果たしているという。常勤しているので、日々入居者と接し、その状況を的確に把握できるそうだ。
「病院とはリハビリの目的が違いますね。病院では医師の指示のもとで回復を目指しますが、ここは終の棲家として生活の質を上げていくことに重きをおいています。そのため、年単位でのお付き合いになります」(原さん)
介護サービス課課長の伊東大貴さんは、病院のリハビリとの違いをこう説明する。
「フローレンスケアの中でもそれぞれ特徴付けをしていて、たまプラーザはリハビリ強化型ホームとして打ち出しています。有料老人ホームのリハビリは、病院のリハビリとは違います。病院のリハビリの目的は退院ですが、ここは終身でご入居されていますので、どれだけ状態を維持・向上していくのかが重要です。中には在宅復帰したいという方もいらっしゃいます」(伊東さん)
リハビリを行うには、理学療法士と介護職員の連携が重要だ。ここでは、お互いに入居者の情報を伝えあいながら、リハビリの計画に落とし込んでいるのだという。
「身体機能は変化していくので、介護職員に入浴介助の仕方や居室内で移動する際の福祉器具などのアドバイスをすることもあります。職員からは実際の様子の報告を受けて、リハビリの内容を変えていっています」(原さん)
ここでは、入居者一人ひとりに個別・集団・生活リハビリを行っていくための計画書を作っているという。「生活全部がリハビリ」という位置付けが職員全体に浸透しているのだ。認知症の予防のための脳リハビリや作業レクリエーションもあり、廊下に昔懐かしい「回想写真」を貼り出すといった取り組みも行っている。
生活リハビリには介護職員の協力が欠かせず、理学療法士との連携が試されるという。また、これらのような施策を進めるため、フローレンスケアの本部にはリハビリの指導役がいる。リハビリの現場を経験した作業療法士の資格を持つ職員が、各施設の現場の指導、アドバイスを行っているそうだ。
フローレンスケアたまプラーザの職員の56%が介護福祉士の資格を持っており、正社員の比率も76%と高い。フローレンスケアの他の施設では、介護福祉士の割合が8割を超えるところもあるという。パンフレットやホームページに書いてある入居者と職員の比率だけを見て、手厚い介護が提供されているのかを判断するのではなく、介護福祉士や正社員の比率もチェックするようにしたい。
→理学療法士が常勤しリハビリ特化型を目指す介護付有料老人ホーム<前編>
→理学療法士が常勤しリハビリ特化型を目指す介護付有料老人ホーム<後編>
いかがだっただろうか。同じ川崎市内の高齢者施設といっても金額やサービスの内容、建物・設備もそれぞれ違う。自宅や家族の住まいからの距離など、条件にあった場所をピックアップしておくと、いざという時に慌てないで済みそうだ。
撮影/津野貴生 取材・文/ヤムラコウジ
※施設のご選択の際には、できるだけ事前に施設を見学し、担当者から直接お話を聞くなどなさったうえ、あくまでご自身の判断でお選びください。
※過去の記事を元に再構成しています。サービス内容等が変わっていることもありますので、詳細については各施設にお問合せください。