浅い呼吸が病気を招く|IT猫背で細胞の酸欠に!チェックリスト
2月11日に虚血性心不全(※1)で野村克也元監督(享年84)が急逝したが、その原因は心臓などの細胞に酸素が届かなかったこと。細胞の酸欠は、ほかにも臓器の不具合などを引き起こすのだ。ハーバード大学やソルボンヌ大学などで最先端医療に携わるスーパードクター、根来(ねごろ)秀行さんに、呼吸の大切さを教えてもらった。
※1 虚血性心不全は、心臓の細胞に血液(酸素や栄養素)が届かなくなる「狭心症」や「心筋梗塞」の総称。胸痛や不整脈などを起こし、しばしば致命的なものとなり得る疾患。
生活習慣病の要因の1つは呼吸の仕方
現在、日本人(成人)がかかる疾病の約9割が生活習慣病といわれている。
「食生活や睡眠などの生活習慣も大きな要因ですが、呼吸の仕方もその要因の1つと考えられます」と、総合内科専門医の根来秀行さんは言う。
「そもそも、呼吸には2種類あります。息を吸うことで酸素を肺に取り込む肺呼吸(外呼吸)ともうひとつ、体内に入った酸素が血液によって毛細血管を介して全身の細胞に運ばれ、細胞が酸素を取り込む細胞呼吸(内呼吸)です。体内には、約60兆個の細胞があり、血流にのって栄養素や免疫細胞とともに酸素がきちんと全身の細胞に届けられないと体に不具合が起こり、生活習慣病などにつながるんです」(根来さん・以下同)
つまり、健康で長生きするためには、食や生活習慣の改善とともに、細胞呼吸がきちんとできるようにする必要がある。
IT猫背など影響で、現代人の呼吸は危機的状況
「それに加え、赤血球の中のヘモグロビンは酸素を運ぶ役割を果たしますが、実は二酸化炭素濃度が一定以上に満たないと酸素を切り離しにくくなる仕組み(※2)になっています。だから、浅い呼吸で呼吸数が多くなると、二酸化炭素が不足し、細胞呼吸の効率が逆に下がるのです」
※2 ボーア効果と呼ばれる。
実はいま、IT猫背などの悪影響で「現代人の呼吸は危機的状況」なのだそうだ。
「IT猫背で骨盤が傾くと、肺を大きく動かせず呼吸が浅くなりがち。また、前屈みで画面操作すると、首の後ろの血管が圧迫され、頭痛などを起こしやすくなります」
だからこそ、正しい姿勢と呼吸法を身につけることが大切だ。
あなたの呼吸は大丈夫? 自分の呼吸が浅いかどうかを下のリストで自己点検してみよう。
■「浅い呼吸」リスク度チェック
□【1】息を吸ったとき、肩のラインが上がる
□【2】息を吐いたとき、肩のラインが下がる
□【3】口呼吸の癖がある
□【4】声が小さい
□【5】人前で話すとき、声が震える
□【6】ガードルなど矯正下着をつけることが多い
□【7】スキニーパンツやタイトスカートをよくはく
□【8】猫背もしくは反り腰である
□【9】デスクワークなどで座っている時間が長い
□【10】スマホやタブレット、パソコンをよく使う
□【11】頭痛、首や肩こり、腰痛がある
□【12】検査では異常がないのに息苦しいことがある
□【13】疲れやすく、すぐに意気が上がる
□【14】忙しくてなかなか落ち着く時間がない
□【15】夜、気が立って眠れないことが多い
<姿勢の悪さやストレスが悪影響>
【1】と【2】に該当する人は、浅い呼吸が悪化すると肩で息をするようになる。【3】は睡眠時などに口呼吸の人は要注意。【4】と【5】は呼吸が浅いと声量も出づらくなる。【6】と【7】は腹部の締め付けで細胞呼吸がしづらい傾向に。【8】~はIT猫背が姿勢を悪くし、呼吸筋の力も弱める。~は浅い呼吸の人には不定愁訴が出やすい傾向がある。とは交感神経優位な人の典型的弊害だ。以上、該当する項目が多いほど呼吸が浅い可能性が大きいのだ。
※チェック項目は、最新刊『病まないための細胞呼吸レッスン』(集英社)より抜粋引用。
教えてくれた人
根来秀行さん/医学博士・総合内科専門医。ハーバード大学医学部客員教授専門は内科学、腎臓病学、抗加齢医学、 遺伝子治療、長寿遺伝子、 睡眠医学など多岐にわたる。最新著書は『ハーバード&ソルボンヌ大学Dr.根来の特別授業 病まないための細胞呼吸レッスン』(集英社)。
イラスト/鈴木みゆき
※女性セブン2020年3月12日号
●腰痛、肩こり、不眠に効く「究極の呼吸術」で健康寿命を10年延ばす