がん治療中の爪の悩み・ネイルケア|グリーンネイル、黒ずみ…ケアを専門家が解説
がん闘病中に生じる副作用などによる見た目の変化は、脱毛は広く知られているが、実は爪のトラブルも多い。爪が黒っぽくなったり、爪が薄くなったり…。がん治療中に伴う爪のトラブルへの対処法を専門家に聞いた。正しいマニュキュアの塗り方を動画付きでお届けする。
爪の黒ずみや剥離、乳がんや子宮がんで爪にトラブル
「がん治療の副作用で、爪が黒っぽくなってしまったり、爪がもろくなって浮いてきたりすることがあります。主に乳がんや子宮がんの治療で使う抗がん剤などによって爪にトラブルが出る人が多いのですが、爪のケアに関する正しい情報はまだまだ少ないと感じています」
こう話すのは、正看護師の国家資格を有しネイリストの資格も持つ森本恵さんだ。がん闘病中の人のネイルケアを専門に行っている森本さんに、正しいケア方法を教えてもらった。
がん治療中の爪にはオイルで保湿が第一
「がん治療で弱ってしまった爪には、まず保湿が大切です。ネイルオイルは、爪の表面ではなく、爪と皮膚がくっついているキワの部分に塗ります。さらに、爪の剥離を防ぐためには爪の裏側にもオイルを塗っておきましょう」
さらに、オイルを使うときは、気を付けるポイントがあるという。
「がん治療中は免疫力が低下しているため、感染症も心配。たとえば足の水虫などの雑菌がオイルの筆に付着し、それを手の指に使うと水虫菌を手にも移してしまったり、ささくれなど小さな傷口から感染を広げてしまったりすることも。オイルを使うときは、手と足に使うものを分けたほうが安心です。また、スポイトタイプなら直接爪や皮膚に触れないので手足で兼用できます」
がん治療中のマニキュアは「水溶性」を
「がん治療で黒っぽく変色した爪の色をカバーしたり、もろくなった爪を保護したりするためにマニキュアを使うなら、つんとした臭いや刺激が少なく爪にやさしい水溶性のマニュキュアを選ぶのがおすすめです。水溶性なら手指用の消毒液で落とすことができます。一般的なアセトンを含む除光液は爪の乾燥を助長させるのでおすすめできません。
マニキュアを落とすときに爪が乾燥するので、色落ちしてきたからといって何度も落とすのではなく、重ね塗りしてカバーする方法もあります」
がん治療で弱った爪にマニュキュアの塗り方を動画解説
「マニュキュアを塗るときは、爪の“生え際”ギリギリまで塗らず少し残した状態にしておきます。皮膚の上にくっつかないように塗ることでマニキュアのもちが良くなりますし、ネイルオイルの浸透も妨げません。また、爪の先端部分にも塗っておき爪を保護しましょう。
また、黒ずみをカバーするには、真っ赤など強い色味ではなくても、濃い目のベージュやレンガ色を選ぶと変色が目立ちにくくなりますよ」
グリーンネイルも心配…ジェルは治療を終えてから
「ジェルネイルは爪の強化になりますが、がん治療中の爪にはおすすめできません。抵抗力や免疫力が下がっているがん治療中は、ジェルと爪の間にできた隙間に緑膿菌が繁殖し、グリーンネイルと呼ばれる状態になってしまう事例も…。看護師時代には緊急搬送で運ばれた患者さんのジェルネイルを無理にはがさなければならない緊急事態も見てきました。ジェルネイルは、治療を終えて爪の状態が良くなってからにしましょう。また、担当の医師に相談することも大切です」
抗がん剤などの副作用によって髪や爪にトラブルを抱えた患者さんを多く見てきたという森本さんは、現在がん患者のためのアピアランス(見た目)ケアに力を注いでいる。森本さんがネイリストとして所属する「一般社団法人アピアランス・サポート東京」では、爪や指先のトラブルのほか、脱毛の悩み、ウィッグの助成金制度などについても相談できる。
教えてくれた人
森本恵さん/12年間看護師として勤務した経験を活かし、がん患者の悩みに寄り添うネイリストとして活動。『一般社団法人アピアランス・サポート東京』(https://app-sup.com/)でネイルケアやアピアランスに関する相談、カウンセリングを行う。
取材・文/介護ポストセブン編集部