リピート率は約94%!また会いに行きたくなる73才ゲレンデアイドル
原田知世の出世作『私をスキーに連れてって』(1987年公開)から早30ウン年。令和となった今、中高年の間でスキー復帰の輪が広がっている。その中心にいるのがカリスマ添乗員の“せっちゃん”だ。今年は暖冬で雪不足とのニュースが絶えない中、大盛況の彼女のツアーにお邪魔しました。
ピンクの帽子で参加者を笑顔で迎える小柄な女性。彼女が今回の主役の“せっちゃん”こと、高山せつ子さん、73才。
「もともと人の面倒を見るのが好きな世話焼きなんです。だから定年した時、好きな旅行でお世話したいと思い、55才からこの仕事を始めたんです」(せっちゃん・以下同)
金型製作会社で金型作りをしていた彼女は、退職後スキーを始め、今やスキーツアーの売れっ子添乗員をしている。
「とはいえ、“スーパーボーゲン”ですけどね」と満面の笑みで語るが、彼女のツアーは大盛況。その理由を尋ねると、
「普通のツアーだとスキー場に着いたら送り出して終わりですが、私の目標は、一人参加でも初対面でも、お客さん同士を友達にさせることです。だから、スキーの上手下手にかかわらず、私はみんなと一緒に毎回滑っています。宿泊時の部屋割りもするのですが、リピーターなら相性で、初参加なら年齢や事前情報をもとに知恵を絞るんです」
そんな細やかな心遣いが届いてか、彼女が添乗員をしている『四季倶楽部旅』のシニア向け「ナイスミドルスキーツアー」は、参加者の平均年齢74才。9割が一人参加で、リピート率は約94%を誇る。
今回のツアーは、30~60代のスキー復帰組をターゲットとした、2泊3日の「大人のスキーツアー」だったが、やはり彼女は大人気。その気配りが一体感を生み、初参加者が多いにもかかわらず、まるで大人の修学旅行のようだった。
ゲレンデは自由に。でも、昼食は一緒に
翌朝8時半。食事を済ませた参加者を出迎えたせっちゃんは、ひとりで滑りたい人、教室に入りたい人、初心者クラスのひよこ組に分け、自身はひよこ組を先導していく。
「スキーはまったくの未経験で、この仕事をしながらお客さんから教わったんです。だから私の滑りはひよこ組。でも、信州、蔵王、ニセコ、スイスにも行き、どんな斜面でも凍ってなければ転ばないし、怖くありません(笑い)」
20年ぶりにスキーを履いた記者のへっぴり腰をよそ目に、みんな、あっという間に勘を取り戻して、どの人も風に乗って気持ちよさそうだ。
例年より少なめではあるものの、青空の下、白銀の世界は開放感大。記者がようやく昔の感覚とスキーの楽しさを思い出したところで、待望のお昼の時間に。
「スキーは別々でも、みんな一緒に食べます。一緒に食べた方が楽しいでしょ。この後は、地図を見たらすぐ覚えて、どこへでも行けるという私の強みを生かして、スキー場の隅々まで案内します!」
せっちゃんの温かさが広げるスキーヤーの輪
今回の参加者の1人、A子さん(60代)は、こう話す。
「かつては仲間とスキー場通いをしていましたが、結婚し、子育てでスキーとは疎遠になりました。周りにスキーをする人がいなくて諦めていたのですが、知人からせっちゃんのことを聞いて、思い切って参加し、今回2回目です」
「私もスキーをする知り合いがいないのですが、一人参加で、1~2泊でスキーができるツアーはほとんどありません。そんな中で見つけて参加したのですが、このツアーは一人参加同士が相部屋なので、友達の輪が広がりますね」(S男さん・50代)
スキーツアーというと、深夜発の若者向けが多い中、19時発・深夜着で、座席もゆったりした大人向けのツアーはあまりないだけに、このツアーが人気の理由もうなずける。しかも、バスの中からゲレンデ、宿泊先まで、せっちゃんの気配りが行き届く。この温かさが人を惹きつけるゲレンデアイドルの秘密のようだ。
撮影/浅野剛
※女性セブン2020年2月6日号