介護、「自宅」と「施設」でかかる費用の比較 在宅介護の境界線は要介護2と3
「介護は突然やってくる」と経験者は口をそろえる。生命保険文化センターによると、介護にかかるお金は年間90万円を超える大きな出費。「自宅介護」か「施設介護」か、どちらを選択するかでも大きく金額は変わる。介護ジャーナリストの末並俊司さんが語る。
施設よりも自宅の方が安く済むが…
「一般に、施設より自宅の方が圧倒的に安く済み、金銭面だけで言えば『自宅』の圧勝です。しかし介護は、介護者の精神面も重視すべきです。自宅介護にこだわり、介護者自身が潰れて働けなくなるケースも見受けられます。
あえてボーダーラインを挙げるなら、要介護2までは自宅、要介護3からは施設を目安に検討するとよい。『自分で食べてトイレに行けるか』も分岐点です。1人で食事と排泄が難しい場合は施設入居を考えましょう。その判断をしたうえで、『介護保険サービス』をフル活用してほしい」
●介護保険サービスを使うには、要介護認定が必要
介護は介護保険サービスを使うのが基本。それには要介護認定を受ける必要がある。要介護度には要支援1、2から、要介護1~5までの7段階があり、制度内で使えるお金の上限が決められている。
「自宅介護の人が使える介護保険サービスには、自宅で掃除や食事の世話などを行う『訪問介護』。施設で食事や入浴などを提供する『デイサービス』などがあります。これらのサービスはお金がかかりますが、介護保険サービスを使えば、たとえば要介護2の人は、月額約19万7000円までなら自己負担は概ね1割で済むのです」(末並さん・以下同)
このほか、各自治体独自のサービスやボランティア団体のサービスもある。
「よく使われるのはおむつ代の助成。自治体により異なりますが、紙おむつ代の大部分を補助してくれます。また、簡単な身の回りの世話ならシルバー人材センターもお得。通常なら1時間約2000~4000円のところ、1200円程で利用できます」
→「要介護認定」のコツ|ケアマネは絶対教えてくれない【裏ワザ】
●自宅介護、施設入居でかかるお金はどのくらい?
実際、自宅介護にはどれくらいお金がかかるのか。
●自宅介護にかかる費用の一例
・ヘルパーが自宅に来て食事や入浴、着替えなど「身体介護」をする→60分1回約4100円×月24回。
・デイサービスに週3回(1回7時間)通う→1回約6800円×月12回。
これで計18万円。ほぼ毎日ヘルパーに来てもらえ、デイサービスにも通えて自己負担は1割(※)の1万8000円だ。
※収入によって、2割、3割の場合もある。
「逆に、施設入居は自宅介護より大幅に高くなります。最も安い公的施設の『特別養護老人ホーム(特養)』は要介護3から入居可能で、料金は月6万~15万円程度。比較的安価とされる『サービス付き高齢者住宅(サ高住)』は、月々8万~25万円ほど。介護付き有料老人ホームになると、入居金ゼロ~数千万円のほかに月々18万~40万円程かかります」
●施設に入所する場合の費用の一例
・特別養護老人ホーム(特養)→月6万~15万円程度
・サービス付き高齢者住宅(サ高住)→月8万~25万円程度
・介護付き有料老人ホーム→入居金ゼロ~数千万円に加えて月18万~40万円程度
老後の「上級生活」は計画性なくして手に入らないのだ。
→介護のお金|頼れる制度やサービスは案外ある。不安を軽減する方
お墓はどうする? 「霊園」VS「納骨堂」
人生最期にかかるお金といえば、お墓だろう。墓を建てる場合、永代使用料や墓石代、年間管理料などで一般的には150万~300万円ほどの費用がかかる。法要のたびにお布施や会食、引き出物などの費用も必要で、時間も手間も要する。
高齢化で墓の継承者が途絶えるなど社会問題となるなか、近年人気なのが納骨堂だ。
納骨堂は、コインロッカー式のものや棚式、仏壇式などさまざまな形があり、費用も一般的に数万~数十万円と手頃。費用に年間管理料が含まれる場合も多く、墓と比べて管理に手間もかからない。
もともと墓地が見つかるまでの一時保管場所だった納骨堂。長寿時代、老後のお金を確保するためにも時代に合った故人の弔い方を検討したい。
※女性セブン2020年1月1日号