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色ボケはボケる?ボケる・ボケないを分ける生活習慣くらべてみた

「記憶力が衰えない人」と「物忘れが激しい人」の分け目はどこにあるのか。 『性格・環境・仕事でわかった! ボケた人・ボケなかった人』の著者で湘南長寿園病院院長のフレディ松川医師は「後天的要素が強い」と指摘する。

「海馬や前頭葉の機能低下は人によって程度が大きく異なります。遺伝的な要素もありますが、本人の生活習慣や生活環境など後天的な要素のほうが、記憶力の良し悪しを左右する」

 では、具体的な項目で比べていこう。

麺派の人vs.米派の人

 日々の食生活で大切なのは「よく噛む」ことだ。 「よく咀嚼すると脳への血流が増え、栄養素を多く取り込んだ脳が活性化されます。咀嚼が脳機能の低下を防ぎ、記憶力を維持させるのです」(前出・松川医師)  

 一方で「早食い」の人は噛む回数が少なくなり、脳が活性化しないため記憶力が低下しやすくなる。 「ラーメンやうどんなどのすすって食べる麺類は、米に比べて噛む回数が少なくなる傾向がある」(管理栄養士の内野未来氏)という。記憶力を維持する観点でいえば意識的によく噛む食事にしたほうが良い。  

 よく噛むために必要不可欠なのが「歯」だ。「“歯を失った人は認知症になりやすい”という話を耳にしたことがあるかと思います。それは、歯が少ない人は咀嚼の回数が減ることが原因です」(同前)

「朝はパン」と決めた人vs.メニューを決めてない人

「朝食はパンでないとイヤ」「ごはんとみそ汁に限る」などと決めている人もいるだろう。しかし、記憶力を維持するためには良い習慣とはいえない。『笑って付き合う認知症』の著者で榎本内科クリニック院長の榎本睦郎医師の話。

「メニューを固定してしまうと、メニューを考えたり、調理したりするために頭を働かせる機会を削いでしまう。そうなると、脳のネットワークを強化できません」

 食習慣だけではなく、食材や調理法も記憶力に大きな影響を与える。

お酒を飲む人vs.飲まない人

 飲酒も記憶力に影響がある。「適度なアルコール摂取は、動脈硬化を防ぐといわれている。動脈硬化が起こると脳に十分な酸素や栄養素がいきわたらなくなり、脳細胞がダメージを受けて記憶力が低下します」(前出・眞鍋医師)  

 つまり、適切な量であれば、飲酒は記憶にとってメリットがある。ただし、過剰摂取すると体内に脳細胞を傷つける物質の「活性酸素」が発生して逆効果になる。たまの飲み会で飲み過ぎるよりも、毎日適量を飲んだほうが良い。  

 厚労省の国民健康づくり運動『健康日本21』によれば、一日の適正飲酒量の目安はビールなら中瓶1本、ワインならグラス1杯、日本酒なら一合未満だ。

「この程度の飲酒量なら、記憶力維持に効果的でしょう」(同前)

「営業職」vs.「事務職」の人  

 認知症専門医として数千人を診察してきた前出・松川医師は、「職業」が記憶力に関係すると指摘する。

「もちろん一概にはいえませんが、同じサラリーマンでも、経理など黙々と作業をこなす事務系より、営業や企画開発など周囲とコミュニケーションを取りながらあれこれ知恵を絞る職種のほうが認知症になる人は少なく、歳をとっても記憶力が優れた人が多かった。仕事に工夫を求められる人は記憶力が低下しにくかったのでしょう。

 一方で、公務員や教師は、ルーティンワークが多く刺激が少ないからか定年後に認知症になる人が多いように思います」

「自己中心的」vs「おおらか」な人

「性格」も記憶力を大きく左右する。 「これまでの診察経験から言って、『おおらかな人』は記憶力を維持している。周囲の人に対応するために色々と考え、脳を使っているからだと思う。  

 逆に『几帳面な人』『融通が利かない人』『自己中心的な人』は周囲とのコミュニケーションが少なくなるため脳の活動が少なくなりやすい」(前出・松川医師)

子供と同居する人vs.一人で暮らす人

 全国34万人ともいわれる、一人暮らしの認知症患者。一人暮らしを始めてから認知症になったという話も少なくないが、松川医師によれば「子供や孫と同居している高齢者のほうが認知症になりやすい」という。 「一人暮らしだと最低限の身の回りの世話を自分で行なわなければならないので脳を使うが、面倒見の良い子供夫婦だと楽隠居させてしまう。認知症予防のためには、『庭の掃除くらいして』と働かせるくらいが本人のためになる」(同前)

女好きな人vs.枯れちゃった人  

 俗に好色な人物を「色ボケ」と言うが、言葉とは裏腹に女好きほどボケにくい。

「性欲が強いのは男性ホルモンである『テストステロン』の分泌が活発な証拠。これは性機能だけでなく、脳細胞の活動を活性化させ、認知機能改善も期待できる」(前出・眞鍋医師)

 11年に東京大学の秋下雅弘教授らが発表した研究によれば、平均年齢81歳の認知症の男性24人を2グループに分けてテストステロンを毎日摂取させたところ、6か月後にはテストステロンを飲んだグループは“非認知症”といえるレベルまで認知機能が改善した。

7時間寝られる人vs.寝られない人  

 脳の機能低下を防ぐには「睡眠」も重要だ。ロンドン大学が35~55歳の男女5431人を睡眠時間で分けて記憶力や語彙力をテストすると、7時間睡眠のグループが最も成績が良かった。

 ただ、夜中に目がさめてしまったりして、毎日7時間も寝られないという中高年は少なくないだろう。そんな人たちには「30分~1時間の昼寝」が効果的だ。国立精神・神経センターの朝田隆医師(当時)らが2000年に337人の認知症患者と、そうでない260人について調査を行なった結果、「1日30分~1時間の昼寝をするグループ」は昼寝しないグループに比べて認知症になるリスクが5分の1に低下した。しかし、「1日1時間以上の昼寝をするグループ」は発症リスクを高めた。

 未来の自分のために、今からでも習慣づけできることはある。

※週刊ポスト4月21日号

朝田隆(あさだ・たかし)

「家族みんなで 無くそう逆走」監修。1955年生まれ。メモリークリニックお茶の水院長、筑波大学名誉教授、東京医科歯科大学医学部特任教授、医学博士。数々の認知症実態調査に関わり、軽度認知障害(MCI)のうちに予防を始めることを強く推奨、デイケアプログラムの実施など第一線で活躍中。『効く!「脳トレ」ブック』(三笠書房)など編著書多数。

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