《頭を傾けると首に27kg相当の負荷?》整形外科医が教える首痛を防ぐ「上を向く生活」とお手軽な体幹ケア
普段から筋肉に過度な負担がかかっていたり、血流が悪くなる姿勢が続いていたりすると、首の痛みの原因となる。一方で、日常生活から首の負担を意識しておけば首の痛みは予防することができる。そこで、『首の痛み・コリ・しびれ 自力でできるリセット法』(アスコム)を上梓した整形外科専門医の吉原潔さんに、日常生活からできる首の痛みを予防するためのポイントについて教えてもらった。
首は日常的に無理のない範囲で動かすことが大切
首の痛みを経験したことがある場合、首を動かすのが怖いと感じることがあるだろう。しかし、動かさないでいると筋肉が硬くこわばってしまい、慢性化してしまう可能性がある。
そのため、「まずは『痛くない方向』にだけ、ほんの少し動かすことから始めてみましょう」と吉原さん。ゆっくりと、ストレッチをするような感覚で動かすのが大切だ。
「首のケアで大切なのは、『休ませすぎず、がんばらせすぎず』。体の声を聞きながら、できる範囲で少しずつ動かしていくことが、結果的に回復への近道になります」(吉原さん・以下同)
首を支える筋肉を守る首の動かし方
首まわりの筋肉に負担をかけず、首を動かす方法として、吉原さんがすすめているのが次のやり方だ。
《筋肉を傷めない首の動かし方》
【1】背筋を伸ばし、肩の力を抜く。
【2】両肩を軽く持ち上げる。
【3】首をゆっくり時計回りに5回、反時計回りに5回ほど回す。
「反動は使わず、ゆっくり回します。呼吸を止めないように心がけましょう。ゆっくり動かすことで筋肉や靭帯を傷めずに柔軟性を高めることができます」
首の痛み予防には体幹を鍛える体操「バードドッグ」も有効
背骨や骨盤を支え、姿勢を安定させる土台である「体幹」も、鍛えておくと首の痛みの予防につながる。体幹が弱いと日常動作で姿勢が安定せず、首や肩に余計な負担がかかってしまうためだ。体幹を鍛える方法としては、吉原さんは「バードドッグ」という体操をすすめている。
《バードドッグのやり方》
【1】平らな場所で四つん這いになる。肩の真下に手首、お尻の真ん中に膝がくるようにし、背中はまっすぐに保つ。
【2】【1】の姿勢から右手を前に、左足を後ろに伸ばす。床と平行になるようにまっすぐ伸ばすことを意識し、5秒静止して元の四つん這いに戻る。左手と右足でも同様に行い、左右の手足を入れ替えて2セット行う。
「腹筋と背筋をバランスよく使うことで、体幹が安定し姿勢が整う点が、この体操の最大のメリットで、猫背や反り腰の改善にも効果を発揮します」
スマホやパソコンで下を向きがちに
首を動かすことと合わせて意識しておきたいのが、「首の角度」だ。現代の生活では、スマホやパソコンの操作などで前かがみの姿勢になることが多いが、頭が15度傾いていると約12kg相当、60度傾いていると約27kg相当の負荷が首にかかるとされている。
「長時間にわたって下を向いたり、前かがみの姿勢でスマホを操作したりすることは、首にボウリングの球を何個も乗せた状態に近い負担をかけ続けている、ということになるのです」
前かがみになる家事も首の痛みに繋がる
普段そこまでスマホやパソコンを使用しないという場合でも、首の痛みにつながる動作はさまざまあるため注意が必要だ。
例えば、洗濯物を干す、床を拭く、料理で食材を切る、アイロンをかけるといった動作も、意識しないと前かがみになり、首に負担がかかりやすい。また、歩くときにバッグをいつも同じほうの肩にかけるという人も要注意。
「片側だけに重さがかかると、筋肉のバランスがくずれ、首や肩の片側だけに負担が集中します。それにより、左右差のあるコリや痛みが生じやすくなります」
日常的に「上を向く」
吉原さんがすすめているのは、「上を向く生活を意識すること」だ。スマホやパソコンを見るときは、下を向かず、できるだけ目と同じ高さに近づけたり、ときどき画面から目を離して遠くを眺めたり意識的に天井を向けたりなど、少しの工夫で首への負担は軽くなる。
また、下を向いてばかりいると、胸が閉じて呼吸が浅くなり、心理的にネガティブになりやすいことが医学的にも心理学的にも報告されている。思考がネガティブになると、自分で治そうという意欲も薄れてきてしまう。
「だからこそ、上を向いてほしいのです。背すじがピンと伸び、新鮮な空気を胸いっぱいに吸えるようになれば、自力で治そうという意欲も自然とわいてくるはずです」
教えてくれた人
吉原潔さん/整形外科専門医
よしはら・きよし。整形外科専門医、フィットネストレーナー、医学博士、アレックス脊椎クリニック名誉院長、日本整形外科学会専門医、日整会内視鏡下手術・技術認定医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会(NESTA)公認パーソナルフィットネストレーナー、食生活アドバイザー。運動療法や筋力トレーニングにも精通した医師として、多角的な診療に定評がある。著書に『ドクターズスクワット 医者が考案した「30秒で運動不足を解消する方法」』(アスコム)など。
●《ジム通いが続かない人に》体力向上のために医師がすすめる日々の習慣「とりづらい場所にリモコン」でも運動に、寝る前には寝転んで「自転車こぎ」
