「えっ、クマ!?」認知症の母が暮らす実家の見守りカメラに映った獣の正体と息子が取った緊急対策
岩手・盛岡に暮らす認知症の母を東京から遠距離介護している作家でブロガーの工藤広伸さん。今夏、岩手ではクマの出没情報が急増。東京にいる時は、母の様子を見守りカメラで把握できるようにしているのだが、まさか「クマ!?」の映像が…。母がデイサービスに出かけるときに利用する車庫の付近に不穏な動きが――。
執筆/工藤広伸(くどうひろのぶ)
介護作家・ブロガー/2012年から岩手にいる認知症で難病の母(83才・要介護4)を、東京から通いで遠距離在宅介護中。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護して看取る。介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。最新著『工藤さんが教える 遠距離介護73のヒント』。ブログ『40歳からの遠距離介護』https://40kaigo.net/ Voicyパーソナリティ『ちょっと気になる?介護のラジオ』https://voicy.jp/channel/1442
認知症の母が暮らす実家にクマが侵入?
東京・新宿で開かれた遠距離介護のイベントを終え、わたしは14時に会場を後にしました。東京メトロ丸の内線に乗ってしばらく経ったころ、スマホに1件の通知が来ました。
岩手の実家には見守りカメラが設置してあり、敷地内に人や車が入ると動体を検知し、通知が届く仕組みになっています。介護職の皆さんの車やポスティングスタッフ、郵便局のバイクが敷地に入った際も検知するため、東京にいながら実家を訪れる人をだいたい把握できています。
時間帯からしてポスティングだろうと思いながらスマホをタップしてみると、画面に映っていたのはまさかのクマらしき獣で、車庫のほうへ向かっていくところでした。
遠距離介護でどう対策するか?
実家の裏手には山があり、わたしが小学生のころにはニホンカモシカを見かけたこともある場所です。最近はクマの目撃情報が相次いでいるため、出かけるときは周囲をよく確認するようにしています。
また実家の玄関や勝手口の扉を開けるときも、まず少しだけ開けてクマがいないか確かめてから、全開にするようにしています。
岩手県には、『ベアーズ』というクマの目撃情報を誰でも投稿・閲覧できるLINEアプリがあります。実はスマホに通知が届いた前日、実家のすぐ近くにクマの親子2頭が現れたという情報をベアーズでつかんでいました。
その影響からか、カメラに映った獣がクマに見えたのです。クマを目撃したとき、まず何をすべきなのか知らなかったので、電車の中で急いで検索を始めました。
まさかクマが車庫に居座っている!?
母はデイサービスに出かけていて家にはいなかったので、心配ありませんでした。ただ、獣が車庫に入っていく際の通知はあったものの、出ていく通知や映像は確認できませんでした。
「なぜ通知が来ないのだろう。もしかして、車庫にクマが居座っているのでは? そういえば、ドアを開けて家に入った器用なクマもいたな。まさか家の中に入ったのか?」
見守りカメラの映像だけでは、詳しい状況はわかりません。デイサービスから戻ったときに、母やデイのスタッフさんがクマに襲われるのではないかという不安もありました。
母の帰宅まで、あと2時間。まだ時間はあると思ったのですが、もし郵便局員が配達に来て襲われたらと思うと、気が気ではありませんでした。
岩手県でクマを目撃したときの連絡先を調べた結果、危険が迫っているときは110番、実際に被害が発生したときは119番、それ以外は市町村の担当課に連絡すればいいようでした。
とはいえ東京にいる自分が110番したところで、岩手県警に直接つながるとは思えません。どうするかを考えつつ、もう1度映像を見直してみると、クマらしき獣が車庫へ向かう後ろで、車を止めて車内から獣を眺めている人も映っていました。犬や猫なら、わざわざ車を止めてまで確認しないはず。やはり、クマか?
岩手にいる妹に連絡して状況を確認
この日はあいにく、東京にいる妻の体調が思わしくなく、LINEの返信もありませんでした。途中で電車を降りて交番に駆け込もうかとも考えましたが、妻の様子も気がかりです。まずは東京の自宅に戻りつつ、最寄り駅前の交番に立ち寄り、岩手県警につないでもらうと決めました。
交番の前まで来たものの、この状況を警察に説明しても対応してもらえないかもしれないと思い、一旦帰宅して妻の様子を確かめました。それとは別に、ダメ元で岩手にいる妹にLINEを送ってみました。
すると妹からすぐ返信があり、実家から車で30分離れた場所にいるとのこと。さっそく妹にも獣の映像を確認してもらい、次のようなLINEのやりとりになりました。
妹「クマにしては小さいかも」
わたし「でも昨日、実家のすぐそばに親子のクマが出たよ」
妹「それはやばいね。わかった、実家に行ってみる」
わたし「危ないから、気をつけて」
しばらくして、妹が実家に到着。車庫のほか、家の中や庭も見てもらいましたが、獣はどこにもいませんでした。「大丈夫そうだから帰るね」と連絡をもらい、ひとまず胸をなでおろしました。
母がお世話になっている介護スタッフに連絡
妹に確認してもらったとはいえ、実家の近くに獣が潜んでいる可能性は捨てきれません。すぐに東京から、母がいる岩手のデイサービスに電話をしました。ベアーズで得たクマの目撃情報や、先ほど獣が車庫に入った話をして、十分注意して欲しいとお願いしました。
その流れで、翌日利用予定だった訪問介護や別のデイサービスにも、獣が潜んでいるかもしれないから注意してくださいと連絡を入れました。
見守りカメラに映った獣の正体は?
その後、実家を訪れた介護職の皆さんや妻に獣の映像を見てもらいました。最も多かった意見は鹿で、角のようなものがわずかに映っていたことが決め手になったようです。次いで多かったのが、イノシシでした。
裏手に山があるとはいえ、これまで実家に獣が来たことはありません。クマ同様、エサ不足で山から下りてきたのかもしれません。母も介護職の皆さんも無事で何よりでした。
今日もしれっと、しれっと。
