《高額療養費制度改正》2026年8月から段階的な上限額見直しで医療費の負担はいくらアップする?高齢者への影響は?【FP解説】
高齢者や介護が必要な人にとって「医療費」はじわじわと増え、家計への負担も大きくなっていく。そんな中、新たに8月から「高額療療養費制度」の上限額の見直しにより、負担額は増える人も…。どんな人がいくらくらい負担増になるのか、介護経験をもつファイナンシャルプランナーで行政書士の河村修一さんに解説いただいた。
この記事を執筆した専門家
河村修一さん/ファイナンシャルプランナー・行政書士
内外資系の生命保険会社を経て、2011年に母の介護経験をもとに介護者専門FPとして独立。その後、2018年にカワムラ行政書士事務所を開業。介護や相続、親の介護をめぐる家族会議支援など、将来に備えるサポートを幅広く行う。
高額療養費制度とは
「高額療養費制度」とは、入院や手術などで医療費が高額になった場合、負担が軽減される仕組みです。1か月(同じ月の1日〜末日まで)に支払った医療費が一定額(上限額、年齢や所得により異なる)を超えた場合、超えた分が後から払い戻される制度です。この上限額が、令和8年8月から引き上げられ、支払う医療費が上がってしまう人がいます。
高齢者や介護がはじまると、医療費はじわじわと増えていくため、「医療費には自己負担の上限がある」こと、そしてその上限額が変わることを知っておくことが大切です。
どんな人が負担額が上がる?
今回の見直しでは、令和8年、令和9年にかけて、段階的な引き上げが予定されています。引き上げの理由として、厚生労働省は「高齢化や高額薬剤の普及等により高額療養費の総額が年々増加し、現役世代を中心とした保険料負担が増加していることから、高額療養費制度の役割を維持しつつ、被保険者全体の保険料負担の軽減を図るため」としています。
実際にどんな人が、どの程度引き上げられるのでしょうか。一例として、年収500万円の人が医療費100万円かかった場合、これまでの自己負担額は8万7,430円(月額)でしたが、今回の改正により自己負担の上限額は、8月から9万3,130円、来年の8月から10万5,430円となり、2年間で約1万8000円も引き上がることになります。
なお、長期療養が必要で医療費がかかり続ける人や低所得者への配慮として「据え置き」措置なども設定されています(後述)。
今回の改訂では、現役世代だけでなく、高齢者も所得に応じた負担が求められることになります。医療や介護費の負担が大きい70才以上への影響を中心に考えてみましょう。
70才以上で主に改正の影響がある人
・70才未満の中・高所得層(年収370万円以上の世帯)
・75才以上の後期高齢者で現役並みの所得がある人
何がいくらぐらい負担増になる?
70才以上のかたには、通院時の自己負担限度額「外来特例」が見直され、70才以上でも一般所得者(年収約156万〜約370万円)の場合、現行の月額1万8,000円から、令和8年8月には4,000円増となり、2万2,000円に引上げられます。さらに令和9年8月からは所得区分が細分化され、所得に応じて最大2万8,000円まで引き上げられる予定です。
また、住民税非課税(一定所得以下は除く)の場合は現行の8,000円ですが、8月から1万1,000円、来年8月からは1万3,000円へと引き上げられます。
ただし、外来特例には年間上限額が設けられています。一般所得者の年間上限額は、現行の14万4,000円から21万6,000円へ引き上げられます。一方、住民税非課税の場合には年間上限額は現行と同じ、9万6,000円に据え置かれています。
長期にわたり高額な治療が必要な人への措置
病気やけがなどで長期間にわたり高額な治療が必要なかたには、「多数回該当」という仕組みがあります。これは、直近12か月以内に高額療養費制度を3回以上利用した場合、4回目以降は自己負担限度額が引き下げられる制度です。
一般所得者の場合、4回目以降の自己負担限度額は44,400円となっていて、8月以降もこの多数回該当の仕組みは維持されます。一方で、多数回該当に該当しない長期療養者は、負担が増える可能性があるため、新たに「年間上限額」が設けられました。
一般所得者の場合、年間上限額は8月から53万円、来年8月以降は所得区分が細分化され所得に応じて53万円または41万円の上限額が適用される予定です。
80代脳梗塞で入院した父親のケース
医療費がかかり続ける人にとって支えとなる「高額療養費制度」。過去に私の父親の介護中にも活用し、助けられた制度です。父親のケースを振り返り、改正のポイントや高齢者への影響を考えてみましょう。
父は当時80代前半、年金収入が約240万円、単身世帯でした。脳梗塞で倒れて入院したことをきっかけに、医療費が一気に増えました。本来なら20万円以上かかった医療費は、「高額療療養費制度」が適用されたことで、自己負担限度額は月57,600円でした。
今回の改正に照らし合わせて考えてみると、上限額は61,500円となり、月3,900円の負担増となります。さらに来年8月からは、自己負担限度額は65,400円に引き上がり、月7,800円も負担が増えることになります。
「高額療養費制度」見直しの影響【まとめ】
「高額療養費制度」は、医療費が高額になった際に家計を支える重要な負担軽減制度です。
ただし、8月以降は自己負担限度額の引き上げが予定されており、高齢者にも一定の影響が出る可能性があります。特に、年金生活の高齢者世帯では、医療費だけではなく、継続的に発生する介護費用や物価上昇など、さまざまな支出増も重なっています。
「高額療養費制度があるから安心」だけではなく、「今後はどの程度負担が増える可能性があるのか」という点も踏まえながら、今後の生活設計を考えていく必要があるでしょう。
参考/厚生労働省 「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html
厚生労働省保険局「高額療養費制度の見直しについて」令和7年1月23日
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001393881.pdf
