70才以上は自転車で「歩道」を走っていい?新たな反則金“青切符”はどうなる?道路交通法の改正による高齢者のメリット・デメリット
道路交通法の改正により、自転車にも青色切符(交通反則通告制度)が切られることになった。警察庁によると自転車関連の死亡重傷事故は、65才以上が最多となっており、高齢者はとくに新ルールについて知っておきたい。新たな法改正による高齢者への影響、メリット・デメリットについて、社会福祉士の渋澤和世さんに解説いただいた。
この記事を執筆した専門家/渋澤和世さん
在宅介護エキスパート協会代表。会社員として働きながら親の介護を10年以上経験し、社会福祉士、精神保健福祉士、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーなどの資格を取得。自治体の介護サービス相談員も務め、多くのメディアで執筆。著書『入院・介護・認知症…親が倒れたら、まず読む本』(プレジデント社)、監修『親と私の老後とお金完全読本』(宝島社)などがある。
道路交通法の改正「自転車の交通違反、青切符も」
2026年4月1日から施行された改正道路交通法により、自転車の交通違反に対して交通反則通告制度(青色切符、青切符ともいう)が導入され、16才以上の利用者が対象となりました。
あやふやになりがちな自転車走行マナーに基準ができたことは歓迎すべきですが、制度に不慣れなかたがたからは不安の声も上がります。また、高齢の親が自転車を利用する家族からすると、この法改正を受けて、事故の心配に加えて、ルール違反による摘発の不安もあるでしょう。新たな改正法は高齢者にどんな影響があるのか、解説します。
新たな交通ルールで「高齢者にメリットも」
今回の法改正より、自転車の交通ルールが厳しくなったことに不安を感じている高齢者やご家族も多いと思います。厳格化されるルールが多い中、高齢者が守られている側面もあります。
70才以上は例外的に歩道を走ってよい
自転車の車道走行ルールが厳格化され、自転車の歩道走行について取締りが強化されました。
道路交通法では自転車は原則として「車道通行」が基本ですが、例外として、13才未満の子供と70才以上の高齢者、『自転車通行可』の標識がある場合、車道の交通量が多い場合は「歩道の通行」が認められています。
つまり高齢者は、車道の交通量が多く危険と感じたら、安全な歩道を選択することができます。ただし、歩行者優先なので、車道寄りをすぐに止まれるくらいのスビートで徐行する必要があります。
また、歩道での歩行者妨害は青切符(反則金)の対象として明確に位置づけられているので、歩行者がいるときは一時停止や徐行などの基本的なマナーを守ることが大切です。
自動車の追い越しルールが強化された
自動車が自転車を追い越す際のルールが強化され、1〜1.5m以上の十分な間隔を空けることが義務化されました。
もしも「道幅が狭い」などの理由から、自動車が自転車と1m程度の間隔を確保できない場合には、自転車の速度に合わせて徐行しなければなりません。これは、「車道を走らざるを得ない」高齢者にとって、大きな恩恵といえます。
しかし、自転車側も自動車に対する配慮は必要です。筆者もときどき、高齢者が道の中央寄りをヨロヨロとしながらゆっくりと走行している姿を見かけたことがありますが、倒れてきたらと思うとヒヤヒヤします。
自転車に乗る側も「できる限り道路の左側端に寄って通行しなければならない」と気に留めておかなければなりません。
自転車ルールを巡る「高齢者へのデメリット」
親の自立を望む一方、もしものことがあって介護状態になったら家族は自分たちの生活に少なからず影響がでるという現実的な不安を抱えています。
改正道路交通法による高齢者への影響はどのようなものがあるのでしょうか。
事故の危険は?ヘルメットは努力義務
70才以上の高齢者は自転車で歩道を通行することが認められているものの、原則として「車道を走らなければならない」ことから、高齢者が意識的に車道を走るケースが増えることも考えられるため、接触事故などのリスクが高まることも懸念されます。
また、高齢者の自転車事故では、頭部の負傷が致命傷になるケースも目立ちますが、自転車走行時のヘルメット着用は「努力義務」です。高齢者はとくにヘルメットの着用が望ましいですが、「重い」「面倒」といった理由で着用を拒否する高齢者もいて、家族としてはもどかしい限りです。
社会的・経済的なリスク
今回の法改正により、新たに加わった不安要素として「社会的・経済的なリスク」があります。
70才以上の高齢者は、歩道の走行が認められているため、歩行者に接触して「加害者」になってしまうリスクもあり、高額な賠償責任も心配の種です。
さらに、傘さし運転や走行スピードなど、今まで違反意識が低かった行為も3,000円〜12,000円の反則金(青色切符)が設定されています。これも経済的に影響があるといえるでしょう。
日常生活への影響
過度に違反に敏感になると、移動手段である自転車を諦めてしまう高齢者も出てきてしまうかもしれません。外出が減ることで筋力の低下や引きこもりにつながる可能性もあり、結果として介護リスクが高まってしまうことも心配です。
自転車に乗る高齢者に対し、家族ができること
家族ができる対策はあるのでしょうか。「危ないから自転車は乗らないようにして」と言うのは簡単ですが、親にとっては自転車が生活の一部となっているケースもあるでしょう。その場合は、ルールと環境を一緒に再確認することが、予防として効果的です。
【1】ルールの確認
知らなかったでは済まない時代に入っています。自転車も自動車と同じように「違反=反則金」というルールが本格化するので、一緒にルールの確認をしておきましょう。
※警視庁「自転車の交通ルール・自転車安全利用五則」
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kotsu/jikoboshi/bicycle/rule.html
【2】ルートの見直し
よく自転車で出かける場所があるのなら、多少遠回りでも、車道が広い、安全な歩道があるルートを一緒に考えてみてはいかがでしょうか。
【3】青切符対象場所の確認
近所の一時停止や進入禁止の場所を一緒に確認しておくことで知らずに違反するリスクが減少します。
【4】個人賠償責任保険の加入
火災保険や自動車保険の特約に付いていることが多くあります。加入状況ならびに期間が有効か確認しておきましょう。万が一の際の「盾」を用意しておくことも大切です。
【5】自転車の点検・整備
点検ポイントは、「ぶたはしゃべる」です。時々、自転車の状態を確認しましょう。
ぶ/ブレーキはききますか
た/タイヤの空気圧は適切ですか
は/ハンドルは曲がっていませんか
しゃ/車体やサドルの高さは適切ですか、反射器は汚れていませんか
べる/ベル(音)は鳴りますか
自転車の交通ルールが「注意」から「責任を伴う仕組み」になりました。大切なのは、罰則への不安よりも安全に意識を向けることです。ルールを守ることが、大切な家族や自分自身の生活を守ることに直結するのではないでしょうか。
長年慣れ親しんだ運転習慣を急に変えるのは大変かもしれませんが、新たなルールを理解して守ることで、高齢者が安心して街に出られる社会であり続けることを願っています。
