4月から介護保険料率アップ!いくら上がる?現役世代の負担増へ。「子ども・子育て支援金」も新たに始まり増え続ける社会保険料
物価が上昇する中、介護保険料など社会保険料の値上げも実施される。令和8年度から介護保険料率が改訂され、4月から負担増となる人がいる。介護保険の基本を始め、新たな改訂内容――対象となるのはどんな人なのか、負担額などについて、社会福祉士でファイナンシャルプランナーの資格をもつ渋澤和世さんに解説いただいた。
この記事を執筆した専門家/渋澤和世さん
在宅介護エキスパート協会代表。会社員として働きながら親の介護を10年以上経験し、社会福祉士、精神保健福祉士、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーなどの資格を取得。自治体の介護サービス相談員も務め、多くのメディアで執筆。著書『入院・介護・認知症…親が倒れたら、まず読む本』(プレジデント社)、監修『親と私の老後とお金完全読本』(宝島社)などがある。
4月から介護保険料改訂「介護保険」
かつての日本は、介護は家族が担うべきもので、行政の支援は困窮者に限定された措置でした。その後、高齢化や核家族化が進み家族の負担が限界に達したため、2000年に介護保険制度が創設され、同時に介護保険料の支払いも始まりました。
いつから支払い義務を負うのか――それは”40才になったとき。自らも介護が必要になるリスクが生じ、同時に親の介護にも直面する時期というのが基準のひとつになっています。
介護保険とは、40才以上を対象に、介護費用を社会全体で負担する制度です。介護が必要になったら所得に応じて1~3割の負担で介護保険サービスを利用することができます。
そんな「介護保険料」が4月から改訂されます。どんな人がいくら上がるのか?確認していきましょう。
いくら上がる?「40~64才」「65才以上」世代別に解説
介護保険料を支払う対象者は、日本国内に住所を持つ「40才以上のすべての人」ですが、 年齢によって「第1号被保険者(65才以上)」と「第2号被保険者(40〜64才)」に分かれ、それぞれ保険料の徴収方法が異なります。
世代別・徴収方法
・40〜64才(公的医療保険に加入)…医療保険料と一体で徴収(給与天引きなど)
・65才以上…年金からの天引き(特別徴収)か、納付書や口座振替(普通徴収)
40~64才は4月から負担増
40~64才の会社員などは、協会けんぽ等の健康保険を通じて徴収されるので、金額に無頓着なかたもいるかもしれませんが、今年、4月支給の給与から介護保険料率が2025年度の1.59%から1.62%に引き上げられています。
会社と本人で保険料を半分ずつ負担(折半)するので、負担率は0.81%となります。負担額の目安は以下の通りです。
介護保険料の負担額(月額)の目安
給与(額面)|月々の天引き額(2026年4月〜)|2025年度との差額
20万円|1,620円|+30円
30万円|2,430円|+45円
40万円|3,240円|+60円
50万円|4,050円|+75円
介護保険料の負担額(年額)の目安
年収(額面)|年間負担額(試算)(2026年4月〜)
400万円|32,400円
600万円|48,600円
800万円|64,800円
1,000万円|81,000円
介護保険料自体の上げ幅はわずかのように見えますが、2026年4月から「子ども・子育て支援金」の徴収も新たに始まるため、社会保険料全体としては負担が増える見込みです。
65才以上はどうなる?今後の負担増も?
また、65才以上のかたの保険料に関しては「第9期介護保険事業計画(2024〜2026年度)」に基づいてあらかじめ決まっており、2026年4月で急激に制度が変わるわけではありませんが、2026年度中には第10期(2027年度〜)に向けた議論が行われます。金融資産を保険料算出に反映させるかなどの負担増の検討も予定されています。
現役世代の多くの人が介護保険料徴収に無関心?
現役で働くかたの多くは、介護保険料の徴収に関して無関心のように見えます。かつての私もそうでしたし、今でも知人たちとの会話でその話題になることはありません。その理由は明確です。
給料から天引きされる健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料は、毎年のように少しずつ改定されていて、それぞれの上げ幅はわずかなものです。しかし、先述した子ども・子育て支援金の徴収など新規の引き落としがいきなり入ることもあり、トータルで考えると社会保険料の負担は、ここ数十年で大きく増え続けています。
保険料がいくら値上がるのかということよりも、「給料の手取りが減る」という現実に目が向けられることが多く、介護保険料の存在が埋もれてしまっている気がします。
今回の改訂を機に改めて感じたのは、介護保保険料は40才を過ぎてから寿命が尽きるまで支払うことを考えると、かなりの額になるということ。せっかく支払ってきたのですから、親の介護や、将来自分に介護が必要になった際、「介護保険サービスをしっかり使わなければ」という意識に変わるかもしれません。
介護保険料の徴収額を減らすことはできるのか?
今回の改正で負担増となる64才以下(第2号被保険者)が収める介護保険料について、安くする裏ワザのような方法はあるのでしょうか。
結論から言うと残念ながらほとんどありません。この世代の保険料は給与額(標準報酬月額)に加入している健康保険組合の料率を掛けて機械的に決まるため、節税対策がほとんどできません。ただし、以下のようなケースがあるので覚えておくとよいでしょう。
【1】会社員は保険料の半額は会社負担
自営業(国民健康保険)のかたは全額自己負担となり、自治体によっては世帯人数分支払う必要があるケースも。一方で、会社員の場合は介護保険料の「半額」を会社が負担しています。会社員であること自体が「保険料の負担を減らせている」と考えることもできます。
【2】配偶者の保険料は無料
会社員のかたが、40〜64才の配偶者を扶養に入れている場合、自身の保険料の中に配偶者分も含まれている計算となり、個別に徴収されることがありません。
【3】社会保険料控除による節税効果
介護保険は「社会保険料控除」の対象になります。会社員で給与から天引きされている介護保険料は自動的に控除済み、自営業者の場合は確定申告をすることで、一定の節税効果が得られます。
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2026年6月からは「介護報酬改定」もあり、時代に合わせて介護にまつわる制度は、仕事と介護の両立を重視する方向へと進んでいます。4月から増額になる介護保険料率についてもこの介護報酬改定が大きく関わっています。
介護保険料は40才から長年収めなくてはならず、保険料も年々上昇傾向です。「お金ばかり取られる…」と悲観的になるかたもいらっしゃるかもしれませんが、発想の転換や視点を切り替えることが大切かもしれません。介護保険制度がなかったら、すべての介護サービスは全額自腹となり、費用が払えない場合には仕事を辞めざるを得ないかもしれません。
今、介護保険料を支払うことは、親の介護や将来の自分のため、仕事を選ぶための手段のひとつ、家族の安心を守る選択でもあるといえるのではないでしょうか。
