高齢者を狙った悪質商法・訪問詐欺の種類と実例9選|騙させれないための4つの対策「騙されやすい人の特徴は?」【社会福祉士解説】
自分だけは大丈夫、騙されるはずがない――。「聡明でプライドが高い人ほど、その思い込みから詐欺に遭いやすいものです」と、社会福祉士の渋澤和世さん。消費者庁*によると、近年は特に、屋根工事などの「住宅修理詐欺」や消化器屋火災報知器など「点検商法」に関する相談件数が増加傾向で、高齢者が全体の6割以上を占めている。高齢者を狙う悪徳商法や詐欺の予防と対策を解説する。
*消費者庁「高齢者の消費者トラブル」より
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/white_paper/2023/white_paper_136.html
この記事を執筆した専門家/渋澤和世さん
在宅介護エキスパート協会代表。会社員として働きながら親の介護を10年以上経験し、社会福祉士、精神保健福祉士、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーなどの資格を取得。自治体の介護サービス相談員も務め、多くのメディアで執筆。著書『入院・介護・認知症…親が倒れたら、まず読む本』(プレジデント社)、監修『親と私の老後とお金完全読本』(宝島社)などがある。
覚えておきたい!高齢者を狙った悪質商法と実例
高齢者は、年金収入がある、健康面に不安がある、孤立傾向にあるなどの理由から悪質商法のターゲットになりやすいといわれます。高齢者が興味を持ちやすい健康話、老後の経済的不安に付け込んだ投資話、恋愛感情を利用したおねだりなどあらゆる場面を狙ってきます。
高齢者は自宅にいることが多いので訪問販売や点検商法によるトラブルに巻き込まれやすいのも特徴です。長時間居座ったり、大声で怒鳴りつけたりして強引に契約を迫るケースもあります。今回は、高齢者を狙う悪質商法について確認していきましょう。
まずは、どんな種類の悪質商法が横行しているかを知っておくだけでも防犯になります。不審な人物とやりとりをしている場合は、これらに当てはまるかどうかをチェックしてみてください。
【1】住宅修理詐欺
業者を装って屋根や水回りの修理を持ちかける。点検に訪れる人、実際に工事を行う人など劇場型の演出で、高額なサービスを契約させる。
実例「いきなり訪れたが感じがよく、屋根の修理と点検で60万円の契約をしてしまった」
→63才男性、屋根の修理詐欺に「まさか自分が…」高齢者が陥りがちな危険な思考と身を守る心得【社会福祉士解説】
【2】利殖商法
電話や訪問などで様々な投資話を「確実にもうかる」と勧誘する。
実例「担当者が丁寧に説明してくれたので信じてお金をつぎ込んだしまった」
【3】訪問販売・訪問買取
家に訪ねてきて強引にモノを売りつける。売れるものはないかと電話がありその後、訪問される。貴金属や着物、骨とう品を奪うように安く買い取る。
実例「試食してしまったので断り切れず、菓子セットを購入した」
【4】送り付け商法
勝手に商品を送り付け、代引き支払いを促す。
実例「家族が注文したと思って代金を支払ってしまった」
【5】健康商法
万病に効くなどと、健康食品を販売する。
実例「がん宣告された時期で藁にもすがる思いだった」
【6】霊感商法
悪霊がとりついているなどと脅し、水晶玉や壺を売りつける。
実例「精神的につらい時期で除霊のためと信じ込んでしまった」
【7】点検商法
消防署のほうから来ましたなどと言い、消火器等を売りつける。
実例「作業着のそれらしい服装で人柄も良さそうだったので信じて購入してしまった」
【8】催眠商法
無料で商品を配り会場などで高額商品を売りつける。
実例「健康講座に参加したら羽毛布団を紹介された。誰かが買うまでドアを開けてくれなかった」
【9】デート商法
相手に好意を抱かせて高額商品を購入させる。
実例「異性から示談金がいると相談され、貸したら音信不通になった」
騙されないための「4つの心得」
このように実に様々な商法があるものです。対策としては、自宅に訪問されたら居留守を使うなどで相手を家に入れないことが大切です。話を聞きたいのであれば改めて家族がいるときに再訪問してくれと交渉するのが賢明です。
警視庁から悪質商法の被害にあわないためのポイントとして、「悪質業者は、う・そ・つ・き!」が紹介されています。
■警視庁「悪質商法の被害にあわないために」
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/keizai/akushitsusyouhounohigainiawanaitameni.pdf
お金が絡む話は要注意です、少し大きな字で書いて、玄関や電話近くに貼っておくと注意喚起になります。
「う」うまい話を信用しない!
うまい話、絶対もうかる話には、必ず大きな落とし穴…
「そ」そうだんする!
ひとりで判断せず、家族・知人・相談機関に相談を
「つ」つられて返事をしない!すぐに契約しない!
悪質業者は、言葉巧みにすぐ契約するように迫ってきます
「き」きっぱり! はっきり! 断る!
あいまいな返事をせず、キッパリ! ハッキリ! 断る!
騙されやすい人はどんなタイプ?
消費者庁から被害防止のためのセルフチェックシート*が公開されています。合計点が高いほど悪質業者の勧誘を断れず、契約してしまうリスクが高いとされています。
*消費者庁「だまされやすさを測る心理傾向チェック!」
https://www.caa.go.jp/future/project/project_001/material/pdf/project_001_190329_0001.pdf
「騙されやすいタイプ」とは、どんな人なのでしょうか。
実は、詐欺にひっかかってしまうかたの多くは、人の話を素直に聞けないプライドの高い人なのです。そういう人は「自分は優秀だから大丈夫」と思っているため、「詐欺かもしれないよ?」「騙されているんじゃないの?」という周囲の心配や忠告を聞き入れない傾向にあります。むしろ、「自分に限ってありえない」「余計なお世話だ」と思っているのです。
独断で物事を進めてしまうので気づいたときは手遅れという状況に陥ってしまうのです。逆に、自分の意思がなく他人に頼ってばかりいる人や極度に人を信じやすい人も注意が必要です。
また、筆者は「数量限定」や「先着〇名様限り」が大好きでついつい購入してしまう傾向があるのですが、このタイプも危険です。
消費者庁から公開されている「霊感商法等の悪質商法対策に係る啓発チラシ」もチェックしておくといいでしょう。
若年者、一般社会人、高齢者の各世代に向けて、霊感商法等の悪質商法に関する具体的手口等について注意喚起する啓発チラシが公開されていますが、それぞれの年代の弱みにつけこんで詐欺を働く悪質さがみてとれます。
■消費者庁「霊感商法等の悪質商法対策に係る啓発チラシ」【高齢者向け】
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_education/public_awareness/teaching_material/material_011/assets/material_011_240426_03.pdf
もし訪問販売でおかしいなと思ったとき、断り切れずに商品を購入してしまったなどの困りごとがあったら消費者ホットライン「188」に電話で相談をしてみてください。
また、騙されたと思ったら警察に相談してみましょう。最寄りの警察署か電話で「♯9110」へ。専門の相談員が対応してくれます。
■消費者庁「消費者ホットライン」 188
■警視庁「警察相談専用窓口」 ♯9110
人を信じられない何とも生きにくい世の中になってきました。高齢者も、親を心配する子世代も、自分の守るために本記事を参考にしてみてください。