《後期高齢者医療制度》の特例「75才未満で加入できる条件とは」ファイナンシャルプランナーが解説
75才になると医療保険は「後期高齢者医療制度」に切り替わり、それまで2~3割負担だった医療費が、原則1割負担になる。実は75才になる前でもこの制度を利用し、保険料の負担を抑えられるケースがある。親の介護経験をもつファイナンシャルプランナーで行政書士の河村修一さんに解説いただいた。
この記事を執筆した専門家
河村修一さん/ファイナンシャルプランナー・行政書士
内外資系の生命保険会社を経て、2011年に母の介護経験をもとに介護者専門FPとして独立。その後、2018年にカワムラ行政書士事務所を開業。介護や相続、親の介護をめぐる家族会議支援など、将来に備えるサポートを幅広く行う。
介護が始まると「医療費」はかかり続ける
介護は突然始まることもあります。一本の電話で遠方に暮らす親が倒れたことを知り、介護がスタートすることもあるのです。
令和4年版高齢社会白書によると、介護が必要になる主な原因(65才以上)は、認知症が18.1%、脳血管疾患(脳卒中)が15.0%、高齢による衰弱が13.3%、骨折・転倒が13.0%となっています。
このように、病気やケガがをきっかけに介護が始まることも多く、介護費用に加え、医療費も必要になります。病院の診療費、通院費、薬の処方代に加え、歯科受診の費用などもかかることがあるでしょう。つまり、介護の費用は「医療費」も含めて検討する必要があるということです。
そして、介護はいつまで続くかわからないもの。医療費も長くかかり続けることもあるため、医療保険の制度について知っておくことが大切です。
※内閣府 令和4年版高齢社会白書(全体版)(PDF版)
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2022/zenbun/pdf/1s2s_02.pdf
医療保険、75才以降は「後期高齢者医療制度」へ
日本では、すべての人が何らかの医療保険に加入しており、これを「国民皆保険制度(こくみんかいほけん)」といいます。この制度により、医療機関などの窓口で支払う医療費は、原則として1割~3割の自己負担で済むようになっています。
会社員や公務員は、協会けんぽ、健康保険組合、共済組合に加入します。一方、自営業やフリーランスの方は国民健康保険に加入します。そして、75才になると「後期高齢者医療制度」へ自動的に移行します。
このように、働き方や年齢によって加入する保険は異なりますが、どの保険でも医療費の大部分は保険で賄われています(先進医療など適用されないものもあります)。
医療費の自己負担割合は年齢により変わる
医療費の自己負担割合は、基本的には年齢により異なります(70才以上は所得も考慮されます)。
70才から74才までのかたは、原則2割負担で、現役並みの所得者は3割となります。
また、70才未満の方は3割負担、6才(義務教育就学前)未満の場合は2割負担となっています。そして、後期高齢者医療制度に加入した75才以上のかたは、原則1割負担となります。ただし、現役並み所得者は3割、現役並み所得者以外の一定以上の所得がある場合は2割となります。
このように、医療保険料は年齢が上がるにつれて「3割」から「2割」、「1割」と負担が軽くなっていく仕組みになっています。
年齢別・医療費の自己負担額
・75才以上…1割負担(現役並み所得者以外の一定所得以上の者は2割負担、現役並み所得者は3割負担)
・70才~74才まで…2割負担(現役並み所得者は3割負担)
・70才未満…3割負担
・6才未満(義務教育就学前)…2割負担
※厚生労働省「我が国の医療保険について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken01/index.html
75才未満で「後期高齢者医療制度」に加入できるケースとは?
75才以上が対象の「後期高齢者医療制度」ですが、75才になる前でも加入でき、医療費の負担を抑えられるケースがあります。実は私の亡き母親も突然脳出血で倒れ、突然介護が始まりました。その後、認定基準に該当したため、75才になる前から後期高齢者医療制度に加入していました。
どんな条件なのか、確認していきましょう。
65才以上の人は、75才未満でも「一定の障害状態にある」と認定された場合、後期高齢者医療制度に加入することができます。ただし、加入するには申請が必要で、障害の程度が確認できる手帳などを添付し、広域連合の認定を受ける必要があります。
一定の障害とは、次のような状態です。
・障害年金1級または2級
・身体障害者手帳1級~3級、または4級の一部
・精神障害者保健福祉手帳1級または2級など
認知症をはじめ、脳血管疾患など、一定の障害状態に該当した場合、上記手帳の取得などにより「後期高齢者医療制度」に加入できるケースがあります。
後期高齢者医療制度の対象になると、自己負担は原則として1割負担となります(所得に応じて2割・3割になる可能性もある)。また、高額療養費制度についても後期高齢者医療制度の区分が適用されます。
詳しい条件については、お住まいの自治体で確認してみましょう。なお、後期高齢者医療制度に加入した場合でも、一定の障害の状態に該当しなくなったときや、申請を撤回したときは脱退することができます。
※厚生労働省「後期高齢者の医療費の窓口負担割合の見直しに関するQ&A<制度の概要について>」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/newpage_21060.html
後期高齢者医療制度の特例【まとめ】
65才以上で、要介護状態となった場合、一定の障害状態に該当すると75才未満であっても後期高齢者医療制度に加入できる可能性があります。
後期高齢者医療制度に変わることで、自己負担割合の基準が変わり、医療費が抑えられるケースがあります。ただし、所得によっては負担割合が変わらない場合もあります。
また、例えばご夫婦で医療保険制度が異なる場合(国民健康保険と後期高齢者医療制度など)は、高額医療・高額介護合算制度において、同じ世帯であっても合算することができないこともあります。
なお、一定の障害状態に該当するかどうかは個別の判断となるため、気になる場合は事前に自治体へ相談してみましょう。
