快眠の秘訣は寝る直前に《身体の熱を逃がす》こと 寝る前に実践する「末梢ストレッチ」「自立神経を整える呼吸法」を専門医が解説
快眠のカギは、寝る直前の「体温コントロール」にあると、1万人以上の睡眠に悩む患者を診てきた睡眠専門医・白濱龍太郎医師は語る。入眠時に深部体温を下げるためには、手足の先から効率よく熱を逃がすことが重要だ。白濱医師が勧める、ストレッチや寝姿勢など具体的な方法を見ていこう。
教えてくれた人
白濱龍太郎さん/睡眠専門医
快眠の決め手は「深部体温」
「夜なかなか寝つけない」「眠りが浅く熟睡できない」。そんな悩みを抱える人は多いが、快眠のアプローチとして、「深部体温」がカギとなることはあまり知られていない。深部体温とは、内臓や脳など体の深い部分の体温のこと。人間はこの深部体温が下がることで眠気を感じるため、入眠までに深部体温をいかにスムーズに下げられるかが、ポイントとなる。そこで意識したいのが、寝る直前に「身体の熱を逃がす」ことだ。
手のひら・足裏から熱の発散を促す
入眠までに深部体温を下げるため、寝る直前に「身体の熱を逃がす」ことがカギとなる。
「体内の熱は手のひらや足の裏から発散されやすい。つま先や手首、手のひらをストレッチすることで血流をアップすると、体の末端から熱が逃げて快眠につながります」
白濱医師が指摘する「末梢ストレッチ」の方法は下記の通りだ。
睡眠時の姿勢や恰好も、体内の熱の放出に関わってくる。白濱医師は「仰向け大の字」で寝ることを推奨する。
「手と足を上下左右に大きく広げて眠ると体に熱がこもりにくく、手足の先から熱が放出されやすくなります。体が圧迫されないため血行がよくなるメリットもあり、胃酸の逆流などの消化器系トラブルも起きにくくなる。眠り始めはできるだけ大の字姿勢を心がけましょう」
寒い冬の時期は靴下を履いて眠る人も多いが、深部体温を下げる観点ではNGだという。
「靴下を履いたままだと体内の熱がうまく放出されず、入眠しづらくなります。湯たんぽも同様で、ウトウトしてきたら布団の外に出したほうがよい。末端冷え性などで靴下・湯たんぽを使用している方で、もし寝つきが悪い場合は見直しを検討してみましょう。
また、冬場にエアコンをつけずに寝て、掛け布団を何枚も重ねる方もいますが、布団の重さやこもった熱が安眠の妨げになるケースもある。エアコンで室内を適温に保ち、布団を減らしたほうがよいかもしれません」
寝る直前に深部体温を下げる「末梢ストレッチ」3
大切なのは、できる範囲で続けること。無理のないペースで毎日続けよう。
1.かかと・つま先立ち
【1】壁の近くに立つ。壁の近くに足を肩幅に開いて立ち、転倒防止のために壁に手をつく。
【2】かかと立ちをする。つま先を上げてかかとで立ち、3秒キープ。
【3】つま先立ちをする。次につま先で立ち、3秒キープ。ふくらはぎの筋肉に負荷をかけて足の血流を促進させるのが目的のため、左右のひざがくっつかないように注意する。【2】【3】を5回繰り返す。
2.寝たまま手首ストレッチ
【1】手のひらを真上に突き出す。布団の上で仰向けに寝る。両腕を真上に突き出す。片方の手のひらを上にして、もう一方の手で下に押し5秒キープ。前腕屈筋群をしっかり伸ばすことで血流を促進。
【2】手の甲を真下に向ける。続けて手の甲を上に向け、もう一方の手で下に押し5秒キープ。前腕伸筋群をしっかり伸ばすことで血流を促進。左右の手で【1】【2】を3回繰り返す。
3.寝たまま手のひら1回転
【1】両腕を真上に突き出す。布団の上で仰向けに寝る。両腕を真上に突き出す。
【2】手のひらを1回転させる。手のひらを顔のほうに向け、小指同士をくっつけた状態から、矢印の方向に回転させ、手の甲を合わせる。この過程を3回繰り返す。腕全体をひねることで血流を促進。
「明るすぎる照明」や就寝前の「スマホ」や「パソコン」も安眠を妨げに
快眠には深部体温に加えて自律神経を整えることも欠かせない。白濱医師が提唱するのは、「自律神経を整える呼吸法」の実践だ。
「自律神経のリズムが乱れ、身体の活動時に活発化する交感神経が優位なまま夜を迎えると質のいい睡眠は望めません。寝る前に深呼吸などを行ない、身体を休ませる働きを持つ副交感神経を優位にすることが大切です」
住環境や習慣にも見直すべきポイントがある。
「日本の照明は海外に比べて明るいので、知らず知らずのうちに不眠の要因となっています。寝る直前に暖色系の照明に切り替えるとよいでしょう。就寝2時間前からはスマホやパソコンの使用も避けてください」
「自律神経」を整える呼吸法2
寝る前のリラックスタイムに行うのがおすすめだ。照明は暖色系に切り替えると、より望ましい。
1.リラックス腹式呼吸
【1】鼻から息を吸う。布団の上で仰向けに寝て全身の力を抜き、両手をおなかに置く。鼻からゆっくり息を吸い、空気を入れておなかを膨らませる。
【2】口から息を吐く。口からゆっくり息を吐き、おなかをへこませる。【1】【2】を5回繰り返す。
2.寝る前の「大の字」深呼吸
【1】胸を大きく広げて。「大の字」に寝て、巻いたバスタオルを背中の下に入れて胸を高く上げる。鼻から息を吸いながら胸を大きく広げ、ゆっくり呼吸をしながら10秒キープ。
【2】全身の力を抜く。口から息を吐きながら全身の力を抜く。【1】【2】を10回繰り返す。
撮影/横田紋子 モデル/吉岡由梨菜 取材・文/池田道大 イラスト/タナカデザイン
※週刊ポスト2026年2月13日号
