《60代から増える「変形性膝関節症」》ひざ関節を専門とする整形外科医が解説する「軟骨復活法」と「ひざを守る歩き方」
60代から急に増える「変形性膝関節症」。70代女性の約7割が患者だといわれる。高齢になってひざの痛みや歩行のトラブルを抱える代表例の病気といえるだろう。
すり減ったひざの軟骨は再生しないと思われているが、「少しでも軟骨が残っていれば再生する」と言うのはひざのスーパードクターで整形外科医の巽一郎さん。そのための方法が「足放り」という体操。これと同時に軟骨がすり減らない歩き方を心がけることも大切だ。
巽さんが「関節を痛めずに全身を鍛える」たつみ式体操を初公開した著書『足腰復活100年体操』(サンマーク出版)から一部抜粋、再構成してお届けする。
教えてくれた人
医師・巽一郎さん
医師。ひざのスーパードクター。1960年生まれ。静岡県立薬科大学薬学部卒業後、大阪市立大学医学部に入学。薬学部4年時にバイクで大けがをし生死の境をさまようなか、亡き父の「本当に好きなことをやれ」という言葉に奮起、薬学部卒業後に大阪市立大学医学部に入学という経緯を持つ。卒業後は同附属病院整形外科に入局し手術三昧の日々を送りながら、米国(メイヨー・クリニック)と英国(オックスフォード大学整形外科留学)などに学び、世界最先端の技術を体得。人工膝関節手術の常識を変える「筋肉を切らない・傷口の小さい」手術の開発や、からだへの負担を最小限にする「半置換術」の積極的導入など、日本屈指の技術と、患者の立場に立った診療方針で全国各地から人が絶えない。評判の手術の腕の一方で「すぐには切らない」医師として話題を集める。「手術は最後の手段」と、オリジナルの温存法を提案し患者とともに挑戦の日々。湘南鎌倉総合病院人工膝関節センター長を15年務めた後、2020年より一宮西病院人工関節センター長に。
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軟骨復活! 足放り
軟骨は全体の7〜8割が水分。寝ている間、その水分が偏ってしまい、一部が渇いてしまいます。起きてすぐ立ち上がると、関節に体重の5倍の荷重がかかり、カラカラ軟骨は削れてしまいます。いくら削れても軟骨には神経は通っていないから痛みを感じません。これが「軟骨がすり減る」最大の原因です。
ひざの軟骨は十分に関節液でうるおっていると、「すり減りにくく」なります。
自力でうるおす唯一の方法が「足放り」。半月板のダメージにも有効です。ベッドサイドや布団の近くのイスに座って行います。
両手の指を組んで太ももを持ち上げ、ちょっとブラブラし、太ももの脱力ができたら、今度は手で足を前に放ってさらにブラブラさせます。左右30回、わずか40秒で完了します。足をブラブラさせやすい高さのイスを置いておくのもいいですね。朝イチで動き始める前に行いましょう。
ひざを守る歩き方をしよう,
足放りで軟骨が再生しても、毎日軟骨がすり減る歩き方のままであれば、軟骨は減ってしまいます。せっかく足放りで増やした軟骨が「減らない」歩き方をお伝えします。
変形性膝関節症は、О脚の人はひざの「内側」の軟骨が、X脚の人はひざの「外側」の軟骨がすり減る疾患です。正常な方、О脚、X脚それぞれのひざレントゲンを図に示します。
ほぼ正常な人と比べてO脚の人は歩くたびにひざ関節が外側へ押し出されてしまいます。X脚の人は歩くたびにひざ関節が内側へと押し込まれます。それぞれ軟骨のすり減る場所が違います。
日本人に多いО脚の人ならば、О脚を改善するために、X脚のように歩く。ひざを足より内側に入れると、ひざ関節の内側が開いて痛くなくなります。親指重心で、小指は浮くイメージです。
X脚の人なら、О脚の人のように歩く。ひざを足より外側に入れると、ひざ関節の外側が開いて痛くなくなります。小指重心で、親指は浮くイメージです。
重心を反対に傾けることで、狭くなった関節の隙間が開き、軟骨が減ることがストップします。また、関節の隙間が開くと、外に飛び出していた半月板が元の位置に戻って、痛みが減ってきます。
ひざが痛い人は、痛みがなくなるまで杖を使って行います。杖は「一度使ったら一生必要」というわけではありません。期間限定で使い、ひざの痛み改善に取り組みます。
決めては自分にピッタリ合う「長さ」。調節機能がついたものを選びましょう。まっすぐ立って杖をついたとき、軽く肘が曲がる長さに調整します。肘ががっつり曲がったり、逆に腕が伸び切らないように。杖をつく位置は前すぎず後ろすぎず、いつもの土踏まずの横へ着くようにしましょう。
