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見守りIoTの先駆け、象印マホービン『みまもりほっとライン』活況化する市場、どのように普及活動をするか「商品を見てもらいたい…地域包括支援センターなど回っています」【想いよ届け!~挑戦者たちの声~Vol.5中編】

 離れて暮らす親がポットでお茶を入れると子どもにメールが届く象印マホービンの『みまもりほっとライン』。見守り家電の先駆けとして誕生して24年。IoTを活用した見守り家電やサービスの市場が群雄割拠となった今、ロングセラー商品の新たな販売戦略とは。同社で普及に奔走する担当者が熱い想いを明かす。

挑戦者たち/プロフィール

象印マホービン CS推進本部 シニアアドバイザー 樋川潤さん

1985年象印マホービン入社。10年以上にわたり家電量販店などでの提案営業やその活動を全国の営業担当に広げる業務などに従事。マーケティングや広告宣伝、中国での旗艦店の起ち上げにも関わる。100周年事業の式典企画や社史編纂を経て、2019年にCS推進本部に着任。『みまもりほっとライン』の営業・宣伝活動に従事。趣味はランニング。

見守りサービス市場は今、レッドオーシャンの危機

 日常生活で毎日使う電気ポットを介して、離れて暮らす親をさりげなく守る『みまもりほっとライン』は、2001年にサービスを開始。月額定額料金制(現在でいうサブスク)と導入しやすいレンタルの仕組みを採用したビジネスモデル、そして業界に先駆けたIoT家電として話題を呼んだ。

「契約者は約10年で劇的に飛躍しました。サービス開始当時は、大手企業はまだほとんど見守りサービスに参入していませんでしたから、市場はまさにブルーオーシャン。しかし、2009年頃から新たな契約者数が伸び悩み、ここ数年は苦戦が続いています」

 象印マホービン・CS推進本部の樋川潤さんはこのピンチに立ち向かうべく、現在全国を飛び回り普及活動をしている。

「契約者数が伸び悩んだ原因としては、東日本大震災(2011年)を機に親の見守りを見直す人や、コンパクトな電気ケトルの台頭で電気ポットを使う家庭が減ってきたことも考えられます。

 そもそもここ数年、見守りサービス市場はレッドオーシャン状態です。ホームセキュリティやライフラインの大手企業が提供する見守りサービスなど、数々の企業が参入しては数年で撤退を繰り返しています。

 入れ替わりの激しい市場で、ユーザーが契約したサービスが突然終了してしまい、路頭に迷ってしまうということも少なくありません。その意味では、『みまもりほっとライン』は24年間続いていること自体、強みともいえる。今後も続けていく意義があると思っています」

愛用者に寄り添い続けて24年

 長年続くこのサービスは、ほぼ四半世紀にわたり培ってきた企業努力やものづくりの技術が結集している。

「『技術をやさしさで包む』というのが我が社のものづくりのモットーです。このポットにも精密な技術が詰まっているのですが、使い勝手や見た目は普通のポット。利用者は給湯する、お茶を飲むという日常の行為だけで、見守るお子さんに安心を届けられるという実にシンプルなサービスなんです」

 高齢者にとって使い方も簡単、アフターフォローも丁寧だ。

「最初の1か月は無料で、その間に合わなかったらキャンセルしていただければ初期費用をご返金します。入院などでしばらくご使用にならない場合は、休止制度もあります(年間最長2か月間)。5年使っていただくと無料で新品に交換させていただいています。

 また、ポットの洗浄剤を半年に1度の頻度でお送りし、ユーザーサポートは高齢者でも気軽にご連絡いただけるようにと、フリーダイヤルで対応しています。電話で直接相談したいとおっしゃるお客様は多いんです。

 お客様ひとり一人に丁寧に寄り添うサービスなんです。なんとしてでももっと多くのご家庭に届けたいんです」と、樋川さんの言葉は熱を帯びる。

見守りポットにかける情熱と営業戦略

 樋川さんは長年、営業畑でセールスを担当してきたが、そのノウハウを『みまもりほっとライン』の普及にも存分に発揮している。

「家電量販店で炊飯器を販売していたとき、他社の炊飯器も並べてメリット・デメリットの比較表を提案したら、その手法がお店のかたに好評で、全国の量販店の提案営業に採用されたことがありました。

 象印マホービンはものづくりの会社。開発陣が精魂込めた製品を知ってもらう、買ってもらうには、現場に立って売り場で店員さんやお客様の声を直接聞くことが大事なんですよ」(樋川さん)

 入社以来、営業やマーケティングなどさまざまな部署を経験してきたが、現場に足を運び、切り開いていくというスタイルを貫き通してきた。中国・上海に赴任し、現地の人たちに炊飯器やポットなどの使い方を知ってもらうために旗艦店の立ち上げに奮闘したこともある。しかし50代半ば、病が発覚した。

肺がん克服し、フルマラソンにも挑戦

「肺がんがわかり、中国から帰国することになりました。実は肺を片方とったんですが、今はこの通り元気。上海でも部下たちと一緒に広い公園を時々走っていたんですよ。趣味のランニングは今でも続けていて、フルマラソンにも挑戦しています」と、樋川さんはあっけらかんと言う。

 現在は社内で初めて『みまもりほっとライン』の渉外担当として、電気ポットを持って全国を駆け巡っている。

「一度使っていただければ、5年、10年と長く愛用いただけるサービスなのですが、ここ数年は目立った宣伝や普及活動をしてこなかったんです。新たなユーザーを増やすためには、どうしたらいいのか。今はもうインターネット広告を投下してただ待っているだけでは売り上げが伸びないんです。

 レッドオーシャンの荒波を乗り越えるには、商品を見てもらう、足を使って広げていくしかないと考えて、営業の原点に立ち返りました」

地域包括支援センターを回る日々

 樋川さんは、自治体の高齢福祉課や社会福祉協議会、地域包括支援センター、各種イベントなどを巡り、サービスの普及活動を行うことを決めた。

 営業畑で長く活躍してきた樋川さんにとって、リアルな場でのコミュニケーションはそもそも得意技だ。

「高齢者がよく出入りする場所がいいだろうと思いましてね、大阪市内の地域包括支援センターやほとんどの社会福祉協議会には足を運びました。雨の日にはポットを入れたキャスターケースを転がしながら事業所に入っていくと、『そんなに濡れて、タオルを貸すから中にお入りなさい』って、通してくれることもありました。

 これ(ポット)持ってきたんですよ~って、説明を始めると、だんだん人が集まってくる。最終的には『所長に伝えるから、パンフレット置いていって』といった感じで。ベタな営業手法ですけどね、1件1件回りました。

『CMで見たことはあったけど本物は初めて見たわ』というかたも多くて、まだまだ商品を知ってもらう余地はたくさんあると感じています。地域包括センターからの紹介で申し込みいただくお客様も少しずつ増えてきています」

 そんな樋川さんの地道な活動が、『みまもりほっとライン』の価値を今も支え続けている。

 この取材日は、東京・文京区が開催した『認知症に寄り添う機器展(認PAKU)』に出展中で、来場者の対応の合間を縫って取材に応じてくれた。またある日は、『国際福祉機器展(H.C.R.)2025』でもブースを設け、来場者を集めてプレゼンの現場に立つ。

「商品を知ってもらってなんぼですから」と樋川さんは現場に足を運び続けている。

「やっぱり実際に商品を見てもらいながら説明すると興味を持っていただけます。知っていただくとそこを起点に口コミで広がっていくので、サービスの意義を知ってもらうためには人と直接対話するのが一番なんです。

 発売から24年、お客様に寄り添う形でモデルチェンジも実施してきました。実は定年まであと2年なんですけどね、高齢者社会でどこまで裾野を広げていけるのか。必要とする人がいる限り、このサービスを知ってもらうために走り続けたいと思います」

■みまもりほっとライン 0120-950-555
https://www.zojirushi.co.jp/syohin/pot_kettle/mimamori/index.html

取材・文/斉藤俊明 撮影/横田紋子、黒石あみ

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