繰り返すこむら返りは病気の予兆の可能性も 「脊柱管狭窄症」や「糖尿病」との関連を医師が解説
単なる足のつりかと思いきや、実は病気の前兆だったというケースがあると話すのは、整形外科医で『足の名医がついにたどりついたこむら返りと手足のつりリセット法』(アスコム)の著者・北城雅照さん。実はいくつかの病気とこむら返りは密接に関わっており、初期症状としてこむら返りが発生していることもあるそうだ。こむら返りと関連性の高い病気について詳しく教えてもらった。
教えてくれた人
北城雅照さん/整形外科医
きたしろ・まさてる。日本整形外科学会認定整形外科専門医、医療法人社団円徳理事長。2009年北里大学医学部卒業、2011年慶應義塾大学医学部整形外科学教室入局、2017年慶應大学院医学部医学科博士号取得。再生医療やリハビリテーションに力を入れ、最新の医療技術を取り入れた治療を提供しているほか、理事長を務める足立慶友整形外科・リウマチ科では、整形外科外来も担当。
病気が潜む可能性があるこむら返り
こむら返りは、筋肉の縮み過ぎを感知するセンサーである腱紡錘(けんぼうすい)の衰えや筋肉量の減少、電解質バランスの異常、筋肉疲労、血流障害、神経障害などが主な原因だが、1週間のうちに何度もこむら返りが起こり、かつ何か月も続いている場合は、ただのこむら返りではなく、病気が潜んでいる可能性がある。
神経の圧迫が起こる脊柱管狭窄症
「とくに多いのが『脊柱管狭窄症』。この病気は、脊髄の神経が圧迫されることで神経の伝達が乱れ、足のしびれや痛み、そして、こむら返りが頻繁に起こるようになります」(北城さん・以下同)
背骨の中には「脊柱管」という神経の通り道があり、脳から伸びる「脊髄」や足につながる「馬尾神経」が脊柱管の中を通っている。「腰椎」と呼ばれる腰の部分の脊柱管は、加齢や骨の変形などにより狭くなることがよく起こり得るが、その結果、神経が圧迫されてしまうことがある。
「これを脊柱管狭窄症のなかでも、とりわけ『腰部脊柱管狭窄症』と呼び、国内だけで数百万人が抱えているといわれるほど身近な病気なのです」
七大生活習慣病の糖尿病
日本には約1900万人の患者と予備軍がいると推計されている糖尿病は、エネルギー源となる「糖(ブドウ糖)」を細胞に取り込む際に必要となる「インスリン」の働きが低下したり、体がインスリンに対する反応を失ったりすることで、血液中の糖が処理されず、慢性的に高血糖の状態が続く病気だ。
糖尿病になると、高血糖で末梢神経がダメージを受け、筋肉をコントロールする機能が乱れる。さらに、血流が悪化し、酸素や栄養が体に行き渡らなくなったり、高血糖で尿量が増え、ミネラルバランスが崩れたりすることで、筋肉の収縮と弛緩のバランスが崩れ、こむら返りが起こりやすくなる。
「まさに、こむら返りは、血糖の異常を告げるSOSサイン。頻繁にこむら返りが起こるうえに、のどが渇く、尿の量や回数が増えている、疲労感が抜けないなどの症状がある場合は、病院で検査を受けることをおすすめします」
見た目が変化する下肢静脈瘤
命に関わる病気ではないが、「下肢静脈瘤」の初期症状としてこむら返りが出ることがあるという。下肢静脈瘤とは、ふくらはぎや太ももの静脈が太くなり、こぶのように浮き出る状態を指し、足の血管が浮き出て、肌が赤黒くなるのも特徴。
下肢静脈瘤の原因は、足の静脈にある「逆流防止弁」が正常に機能せず、血液が逆流して静脈が拡張してしまうことや、ふくらはぎのポンプ機能が低下し、血流が滞ることなどだ。つまり、こむら返りが起こりやすい状態を放置していると、下肢静脈瘤になるリスクがあるといえる。
こむら返りセルフチェックシートで自分の症状をチェック
自分のこむら返りが単なる疲れなのか、病気のサインなのかを判断するなら、北城さんが考案した「こむら返りセルフチェックシート」を使うのがおすすめだ。
「あなたのこむら返りが加齢や生活習慣によるものなのか、それとも病院で診てもらうべきものなのかを、簡単にチェックできます。ぜひ、一度試してみてください。もしかすると、今が健康を見直すチャンスかもしれません」
チェックリストの項目にひとつでも当てはまるものがある場合は、該当するカテゴリー内になるいずれかの病気が潜んでいる可能性がある。ただし、このチェックリストは診断を行うものではないため、不安な症状がある場合などは医療機関を受診し、専門医の診断を受けよう。
こむら返りセルフチェックシート 循環器・血管系
《チェックシート》
・歩行時に足やふくらはぎに痛みやしびれが出現し、休むと改善する(間欠性跛行)
・足の冷感、色調変化(蒼白・チアノーゼ)がある
・足の脈拍が触れにくい、または触れない
・下肢の腫脹、むくみが持続している
・片側の下肢に急激な膨張と痛みが出現した
・下肢の血管が浮き出て見える、皮膚の色素沈着がある
《可能性のある病気》
・貧血
・下肢静脈瘤
・深部静脈血栓症
・閉塞性動脈硬化症
こむら返りセルフチェックシート 神経・脊椎系
《チェックシート》
・腰痛とともに下肢のしびれや脱力がある
・長時間の歩行や立位で腰から下肢にかけて症状が悪化する
・前かがみの姿勢で症状が軽減する
・咳やくしゃみで腰痛や下肢痛が増強する
《可能性のある病気》
・脊柱管狭窄症
・腰椎椎間板ヘルニア
こむら返りセルフチェックシート 代謝・内分泌系
《チェックシート》
・多飲、多尿がある
・手足のしびれや感覚低下がある
・傷の治りが悪い、感染しやすい
・動悸、息切れ、易疲労感(通常よりも疲れやすい状態)が強い
・顔色が悪い、めまいや立ちくらみがある
《可能性のある病気》
・糖尿病
・甲状腺機能低下症
・副甲状腺機能低下症
こむら返りセルフチェックシート 肝腎機能系
《チェックシート》
・尿量の減少、むくみ、息切れがある
・黄疸(皮膚や眼球の黄染)がある
・腹部膨満感、腹水の貯留がある
・食欲不振、悪心・嘔吐が持続している
・大量飲酒の習慣があり、手の震えや発汗がある
《可能性のある病気》
・アルコール障害
・腎機能障害、腎不全
・肝機能障害、肝硬変
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