《医師が解説》こむら返り予防に効果的な食習慣 朝は「バナナと牛乳」、就寝前に1杯の水を
こむら返りを予防するには、食事や水分補給の方法も大切だ。「体内の電解質バランスを保つこと」がポイントだと話すのは、『足の名医がついにたどりついたこむら返りと手足のつりリセット法』(アスコム)を上梓した、整形外科医の北城雅照さん。こむら返り予防に効果的な食事や水分補給法について教えてくれた。
教えてくれた人
北城雅照さん/整形外科医
きたしろ・まさてる。日本整形外科学会認定整形外科専門医、医療法人社団円徳理事長。2009年北里大学医学部卒業、2011年慶應義塾大学医学部整形外科学教室入局、2017年慶應大学院医学部医学科博士号取得。再生医療やリハビリテーションに力を入れ、最新の医療技術を取り入れた治療を提供しているほか、理事長を務める足立慶友整形外科・リウマチ科では、整形外科外来も担当。
こむら返りを防ぐ食事方法とは
こむら返りを防ぐために必要なのは体内の電解質バランスを保つことだ。こむら返りの対策として、マグネシウムを積極的に摂ることが推奨されているが、筋肉の収縮と弛緩はマグネシウムだけでなく、カルシウムやカリウムとも連携して成り立っているため、こむら返りを予防する食事として大切なのは、複数のミネラルをバランスよく摂ることだといえる。
なかでも意識して取りたいのはカルシウムだ。
「『骨の材料』というイメージが強いカルシウムですが、心臓や骨格の筋肉を動かすための収縮機能、神経から筋肉への信号を伝える神経筋伝達、ホルモンの分泌調整など、その役割は多岐にわたります。こむら返りを予防するためにも、カルシウムは重要なミネラルのひとつといえるでしょう」(北城さん・以下同)
マグネシウムとカルシウムは1対2~3の割合で
ミネラルバランスの目安は、マグネシウムとカルシウムを1対2~3の割合で摂ることだ。マグネシウムが多い食品は、ひじき・海苔・切り干し大根・納豆・ナッツ類などが身近だが、なかでも無塩のナッツ類は、おやつやおつまみとしてそのまま食べても、砕いてサラダにトッピングしても良く、普段の食事に採り入れやすくておすすめ。
カルシウムは、牛乳・チーズ・ヨーグルトなどの乳製品、小魚、わかめや海苔などの海藻類に豊富だ。
「そして、カルシウムとマグネシウムの両方を豊富に含んでいるのが『緑黄色野菜』です。カルシウムが豊富な緑黄色野菜の代表例が小松菜で、マグネシウムを多く含む代表例はほうれん草。緑黄色野菜の『緑』の部分に含まれるクロロフィル(葉緑素)が、マグネシウムを多く含んでいます」
朝食で栄養と電解質を補給
起床時は1日のうちで最も体が脱水しており、電解質バランスも乱れがちなため、1日の中で朝食が最も重要だ。起床したらまずコップ1杯の水を飲み、そのうえで栄養と電解質をしっかり補給できる朝食をとるのがおすすめ。
朝食の定番である和食の場合は、大豆製品を取り入れることを北城さんはすすめている。納豆や豆腐、味噌、醤油など、大豆製品にはカルシウムやマグネシウムといったミネラルが豊富。さらに、植物性のたんぱく質も同時に摂ることができるため、筋肉の維持や強化にも効果的。
「例えば、主食にごはん、お供に納豆を添えて、副菜に冷奴、汁物はみそ汁というメニューにすると、これらすべてで、大豆の恵みでできています。さらに、小松菜やほうれん草をおひたしやみそ汁の具にすれば、ミネラルがさらに充実。そこにひじきの小鉢が加われば、こむら返りに負けない朝食として申し分ありません」
飲み物は「水」の見直しから
こむら返りの予防には、食事に加え、水分補給も重要だ。まず見直したいのが、日常的に摂取している「水」。体の大きさや性別、季節にもよるが、成人は、食事とは別に1日1200~1500mlの水分を摂る必要がある。しかし、この量を一度に摂ると、体が処理しきれず、体内の電解質バランスが崩れてしまうためNGだ。
「水分は『こまめに補給』が基本だと覚えてください」
朝のバナナと牛乳がこむら返り予防に
1日の中でも、脱水状態になりがちな朝は水分補給が重要だ。北城さんがすすめているのは、朝に牛乳とバナナのセットをとること。牛乳には、神経伝達をサポートするカルシウムが豊富に含まれており、バナナには、筋肉を正常に機能させるカリウムや、カルシウムと同じく神経伝達を助けるマグネシウムなどの電解質が含まれているためだ。
「『カルシウム+カリウム+マグネシウム』が一気に摂れるこのセットは、まさに”朝のお守り”。さらに、牛乳に豊富なたんぱく質は、筋肉の修復や維持にも役立ち、筋肉疲労の蓄積を防ぐうえでも心強い味方です」
夜はコップ1杯の水分補給
夜も寝る前にコップ1杯の水分補給をすることが大切だ。コップ1杯の水を摂ることで、就寝中の脱水状態を防ぎ、脱水によるこむら返りを防ぐことにつながる。
何もしなくても、口からの呼吸や皮膚呼吸などによって、人の体からは1時間に約「体重(kg)×0.5」ml分の水分が失われているという。体重が50kgの人が8時間眠ったとすれば、寝ている間に自然と失われる水分量は200mlの計算になる。
「就寝前に180mlほどの水を飲んだとしても、これは就寝中に体から失われる水分量以下。よって、トイレが近くなる理由とはなりません」
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