《ながらでOKだから続く》医師も実践!筋肉を増やし一生歩ける体をつくる「ゆるトレ」のやり方
老後の健康にも不可欠な筋肉を維持するためには、たんぱく質やBCAA(アミノ酸)を摂ることに加えて、トレーニングも大切だ。しかし、運動しようと思っても、なかなか続かないという人も多いだろう。そこで、『医者が考案したたんぱく質をたっぷりとる長生きスープ』(アスコム)を上梓した医師の土田隆さんに、自身も実践している、ながらでもできる「ゆるトレ」について教えてもらった。
教えてくれた人
土田隆さん/医師
つちだ・たかし。よこはま土田メディカルクリニック院長、日本医師会認定産業医、日本体育協会公認スポーツドクター。東邦大学医学部卒業後、東邦大学医療センター大森病院脳神経外科学教室入局、磯子脳神経外科病院設立と同時に赴任。1989年、同院副院長就任。磯子中央病院合併と同時に同院副院長就任。磯子中央病院健康管理センター発足とともにセンター長兼任。2011年、よこはま土田メディカルクリニック開設。著書に『たった2週間で内臓脂肪が落ちる高野豆腐ダイエット』(アスコム)など。
自立した生活の維持を重視した「ゆるトレ」
土田さんが実践する「ゆるトレ」は、日常生活を支える筋肉作りを重視している点がポイントだ。「ベッドから起き上がる」「かがむ」「階段を上り下りする」など、自立した生活を行うために必要な筋肉を重点的に鍛えられる内容となっている。
「『ゆるトレ』は、子どものころに親しんだラジオ体操のようなものと考えてみてください。追い込むことだけが運動ではありません。”ながら”でもいいので、コツコツと自分の体と向き合うことが大切です」(土田さん・以下同)
筋肉を増やすのに遅いということはない
そうはいっても、年を重ねるほどに、今さら筋肉をつけても遅い、と考える人もいるだろう。しかし、「筋肉を増やすのに、『遅すぎる』ということはありません」と土田さん。スペインのナバラ公立大学理学療法学部のミケル・イズクイエルド教授らの研究からも、90代であっても筋肉は増やせるということがわかっているそうだ。
「筋肉をつけていけば、認知機能を高められ、動脈硬化や糖尿病の予防も期待できます。姿勢が改善され、見た目も美しくなります。何より、自分の足でどこへでも出かけていき、人生をもっと楽しめるようになります!」
「ゆるトレ」の前にかならずやりたいストレッチ
ゆるトレを始める前には、「準備運動ストレッチ」を行うのがおすすめだ。体を動かさない生活をしていると、体はどんどん固まってしまい、そんな体の状態で突然運動を始めると、つったり、けがをしたりする可能性がある。そのため、こわばった筋肉をほぐし、間接の可動域を広げることが大切だ。
また、ストレッチで筋肉そのものの柔軟性が増すと、血流がよくなり、効率よく酸素が運ばれ、運動の効果もアップする。
「『今日は運動、気が進まないな……』というときも、先にストレッチをして固まった体をゆっくりとほぐすことで『気持ちいいなぁ』『もう少し体を動かしてみようかな』とやる気が少しずつ出てきます」
「準備運動ストレッチ」のやり方
土田さんがすすめる準備運動ストレッチは「バンザイ背中開き」と「脱力8の字運動」の2つだ。
《バンザイ背中開きのやり方》
【1】足を肩幅くらいに開いて立ち、両腕を斜め上に持ち上げて、気持ちよく伸びをする。
【2】背中を開くように意識して、胸を張って3秒キープ。
【3】【1】~【2】を5回繰り返し、背面の筋肉を全体的にほぐす。
《脱力8の字運動のやり方》
【1】足を肩幅よりやや広めに開いて立ち、全身の力を抜いて、ひざをうまく使いながら体をしならせるようにして、両手を体の前で8の字に大きく動かす。
【2】8の字を1回描くのに8秒かけて、ゆっくりと10回行い、前面の筋肉を全体的にほぐす。
「まずは準備運動としてこの2つのストレッチを行い、体の前面と背面の筋肉をしっかりほぐしましょう」
歩ける体を維持するための「ゆるトレ」
準備運動ストレッチが終わったら、ゆるトレにトライしよう。
姿勢よく歩くための「大胸筋持ち上げ運動」
「大胸筋持ち上げ運動」は胸の大きい筋肉である「大胸筋」と、背中の大きい筋肉である「広背筋」を鍛えることができる。この2つの筋肉がしっかり鍛えられていると、まっすぐ立つことができるそうだ。
《やり方》
【1】背筋を伸ばし、両ひじを上げて、手は胸の前で軽く握る。立っても椅子に座ってもどちらでもOK。
【2】握った手と腕を、左右一緒になるべく上へ引き上げる。このとき腕と一緒に胸が持ち上がるのを意識する。
【3】【2】で上げた腕の高さを保ったままで、両ひじを後ろに引いて肩甲骨を寄せ、その状態で3秒キープ。
【4】【1】~【3】を10回繰り返す。
「この2か所を鍛えると、体の前後のバランスが上手に取れるようになるために、よろけずに安定して歩けます。姿勢がシャンとして、気持ちも明るく、前向きになります」
転ばないための「両足プッシュ運動」
「両足プッシュ運動」は、よろめきやつまずきの原因となる、すねの前側にある前脛骨筋とふくらはぎの腓腹筋を鍛えるための運動だ。
《やり方》
【1】椅子に座り、足首(アキレス腱のあたり)で左右の足を交差させ、床から少し上げる。
【2】両足で押し合うように、上の足は手前に引き、下の足は前方に向かって押す。この状態で5秒キープする。このとき、交差した足を高く上げすぎると負荷が分散してしまうため、床から少し上げる程度にすることが重要。
【3】【1】~【2】を5回行ったら、足を上下組み替えて、同様に5回行う。
「この運動で、スタスタ楽に歩ける足を作りましょう」
階段をスムーズに上り下りするための「踏み台運動」
「踏み台運動」は、背中からお尻、もも裏までの筋肉を広範囲で鍛えることができる運動だ。使う踏み台は、15㎝未満のもので、両足がしっかり収まる大きさのものを使うようにしよう。
《やり方》
【1】踏み台の前の、ごく近い位置に立ち、踏み台に右足をのせる。
【2】転倒に注意しながら、左足も引き上げて、踏み台の上に両足をのせて立つ。このとき、下を向くと体のバランスをくずしやすいため、なるべく足元は見ないようにする。
【3】左足から台の向こう側に下り、両足を床に下ろす。
【4】180度回転して、今度は左足から踏み台にのせ、【1】~【3】の動きを行い、往復で10回実施する。
「加齢とともに体の後ろの筋肉の筋力が低下すると、背中が曲がったり、全身のバランスがくずれて転倒のリスクが高まったりします。ここを鍛えていくことで体の前後のバランスが整って、階段の上り下りが楽になり、転びにくい体を作ります」
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