ウオーキングするなら《後ろ歩き》がいい理由「善玉ホルモンが増える」驚きの健康効果や歩き方を医師が解説
古代ギリシャで活躍した医学の祖とされるヒポクラテスは「歩くことが一番の良薬」という言葉を残した。ウオーキングは簡単にでき、健康に良い効果がある。さらに効能がアップするのが「後ろ歩き」だ。専門家に理由と具体的なやり方を教えてもらった。
教えてくれた人
辻大士さん/筑波大学体育系助教、石井好二郎さん/同志社大学スポーツ健康科学部教授、市川貴章さん/歩行専門リハビリ施設アルコネクト代表・理学療法士
長寿遺伝子を活性化する「ウオーキング」
筑波大学でビッグデータを活用して運動の健康効果を調査している、体育系助教の辻大士さんが答える。
「運動によって健康効果の違いは存在しますが、一般的にいわれている運動習慣は、健康にとって間違いなく有益です」
専門家たちが「健康に寄与する」と太鼓判を押すのが、ウオーキングだ。
「ウオーキングは有酸素運動の一種で、全死亡リスクを減らします。エネルギーを消費することで、古い細胞や老廃物を壊すオートファジーと、長寿遺伝子を活性化します」(同志社大学スポーツ健康科学部教授の石井好二郎さん)
「後ろ歩き」こそ究極の運動術
健康への効果が高いウオーキングだが、「後ろ歩き」は通常の前歩きにはないプラスアルファの効用がある。
もともとはリハビリの現場でバランス感覚を保つ練習として実践されてきたが、腰痛や肥満の改善など病気の治癒にも効果があることがわかってきた。歩行専門リハビリ施設アルコネクトの代表で、理学療法士の資格を持つ市川貴章さんが解説する。
「手軽にできる運動で特別な器具も必要ありませんが、普通に歩くよりもエネルギーを多く消費するため、高い運動効果が得られます」
後ろ歩きは、背中を向けて歩くので、背後に何があるのかわからない。この“視覚に頼らずに歩く”ことにこそ意義があるという。
「人体の姿勢は、視覚のほかに筋肉や神経の情報を脳に送る固有感覚、触覚や温覚などを感じる体性感覚によって保たれています。後ろ歩きは視覚に頼れないため、普段使わないほかの感覚や体の部位の動きが促進され、運動量が増える傾向があります」(市川さん)
「後ろ歩き」のポイント
視覚情報に頼らないため、普段使わない神経の感覚や体の部位の動きが促進される。
ダイエットや糖尿病、動脈硬化などの予防効果も
もたらされる効能は運動量の増加だけではない。
「肥満者の健康状態が改善するなど、ダイエット効果が期待できます。また、肥満によって減少しがちな『アディポネクチン』を増やす効果があります。
この物質は善玉ホルモンの一種で、糖尿病や動脈硬化などの予防に効果があると考えられています。肥満が改善、解消されるとひざにかかるストレスが軽減されるため、膝関節症のリスクを減らすことができますし、腰痛で背筋が萎縮していたかたは、腰の筋肉の働きがよくなったという報告もあります」(市川さん)
効果的な後ろ歩きは、足をしっかり地面につけ、姿勢をまっすぐに保ちながら行うのがコツだ。これを1回あたり20~30分ほど、週に3回以上繰り返す。
「普段通りの速度でテンポよく歩くのが理想ですが、無理をせずゆっくりでも構いません。視覚に頼ることができなくなりますから、障害物がなく、人がいない安全な室内で取り組んでください」(市川さん)
運動に変化をつけるために、自分のペースで始めてみよう。
写真/PIXTA
※女性セブン2025年5月8・15日号
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