補聴器を拒否する家族を前向きにするには? 効果的な声かけと工夫を専門家が指南
日本ではまだまだ「補聴器=年寄りくさいもの」と感じているかたが多いと話すのは、「うぐいす補聴器」代表の田中智子さん。しかし、難聴を放っておくと家族との会話が減り、脳の働きにも影響が出る可能性があります。そこで今回は、補聴器に積極的でない人への賢い誘い方を紹介します。
教えてくれた人
田中智子さん/認定補聴器技能者
補聴器専門店「うぐいす補聴器」代表。ドイツの大手補聴器メーカー勤務時に、MBAを取得。訪問治療を行う病院の事務長を経て、現職。個人のライフスタイルに合った補聴器の提案を行う。自治体での講演多数。
補聴器の負の印象を覆すにはメリットを上手に伝えることがポイント
難聴に悩む多くの高齢者を抱える日本。にもかかわらず、補聴器利用率は約15%。欧米諸国の約30~55%に比べて著しく低い。
「当店にも、お子さんに連れられて、気が進まない様子の高齢のお客様がよくいらっしゃいます。日本ではいまだに『補聴器=年寄りくさいもの』という負の印象が強いようです」
とは認定補聴器技能者で、補聴器専門店代表の田中智子さん(「」内、以下同)。
会話がままならず、家族が困っているのに本人は耳が遠くなるほど年を取っていないと思い込み、事実を認めないケースは多い。
「補聴器のイメージを覆し、興味を持ってもらうには、つけるメリットを上手に伝えることが大切です。補聴器で聞こえづらさが改善された人は、『家族皆でテレビを見られるようになった』『孫との会話が増えた』など、楽しそうに話してくださいます。
難聴は認知症の一因になる可能性も
WHO(世界保健機関)は、難聴を認知症の危険因子のひとつと位置付けている。音の刺激が入ってこなかったり、会話が聞こえず人と会うのが面倒になったりすると、脳の機能が衰えるからだ。「放っておくと認知症になるかも」と考え、補聴器の装用に前向きになる人もいる。
「補聴器は買って終わりではなく、技能者と相談しながら細かな調整をし、約3か月かけて自分に合った聞こえ方を作っていき、装用を習慣化できるように手助けします。ご家族の『今日は聞き返しが少ないね』など、本人が効果を実感できる声かけも有効です」
受診のすゝめ。耳鼻咽喉科ではどんな診察が行われる?「補聴器」への道順
【1】問診
いつから、どちらの耳が聞こえづらいか、家族歴、職歴の確認。服用薬(抗がん剤など)の副作用による可能性の確認など。
【2】診察
鼓膜や外耳道のチェック。聞こえづらさの原因が、鼓膜にこびりついて硬くなった耳あかのケースもある。
【3】聴力検査
聞こえづらさの原因や程度を判定し、治療の方法を決定する。状態によっては福祉手当の適用を考慮することも。
【4】必要に応じて認定補聴器専門店を紹介
取材・文/植木淳子 イラスト/藤井昌子 写真/Getty Images
※女性セブン2025年8月14日号
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