要介護ではないが高齢のため日常生活のちょっとした困りごとが増えた!そんな人に頼れるサービスの探し方【社会福祉士解説】
高齢者でも介護を受けるほどではないが、体力が落ちて以前にはできていたことが億劫になる。そんな介護未満の高齢者世代には、「ちょっとした困りごとを頼めるサービスを探しておくといいですよ」と、介護経験をもつ社会福祉士の渋澤和世さん。どんな依頼先があるのか、探し方や活用方法について解説いただいた。
この記事を執筆した専門家/渋澤和世さん
渋澤和世さん/在宅介護エキスパート協会代表。会社員として働きながら親の介護を10年以上経験し、社会福祉士、精神保健福祉士、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーなどの資格を取得。自治体の介護サービス相談員も務め、多くのメディアで執筆。著書『入院・介護・認知症…親が倒れたら、まず読む本』(プレジデント社)、監修『親と私の老後とお金完全読本』(宝島社)などがある。
できないことが増えてきた?
高齢になると、以前はできていたことがしんどくなり、自分自身では対応が億劫になることもでてきます。親族が近くにいて頻繁に助けを求められれば良いのですが、そういう環境のかたばかりではありません。
しかし身体介護、生活援助などの介護保険サービスは、直接利用者の援助に該当しないものは依頼することができませんし、そもそも要介護認定を受けていなければ、介護保険サービスは利用できません。
要介護認定を受けないと介護保険サービスは使えない
高齢者の多くが介護を受けていて、介護保険サービスを使っているイメージがあるかもしれませんが、令和6年7月時点、65才以上のかたは3,590万人で、そのうち要介護(要支援)認定を受けている人は717万人です。
つまり、65才以上で要介護認定を受けているのは約5人に1人(19.6%)。約5人に4人は受けていないのです。
※厚生労働省「介護保険事業状況報告の概要」(令和6年7月暫定版)
https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/osirase/jigyo/m24/dl/2407a.pdf
このように介護保険を使っていない多くのかたは、何か困ったことがおきたとき、自分で対応するのが億劫になってきた場合や、誰かの手助けが必要になったとき、誰に頼めばよいのでしょうか。
そこで介護保険の認定を受けているかたはもちろん、受けていないかたでも利用できるサービスについて解説していきます。
高齢者が日常生活で困ること(一例)
歳を重ねることでの困りごとは何も介護に限ったことではありません。筆者が普段の生活の中で相談を受けた困りごと、億劫に感じる作業は一例として以下のようなものがあります。
・食事の準備や後片付け(調理中の事故も心配)
・洗濯や洗濯ものを干したり取り込んだりすること
・居室など家の中の清掃
・ベランダ、庭などの掃除や手入れ
・見守り・安否確認・声掛けの不足
・買い物(必要なものを買い忘れる)
・郵送物の管理、手続き
・高い場所や力のいる作業
・送迎や公共交通機関の利便性
・スマホ、パソコン、家電の操作
ほぼ日常的に感じる困りごともあれば、不定期に起こりうるもの、加齢により理解や動作が難しくなる作業まで様々です。
庭の掃除など人に依頼してまで解決するものではないと、そのままにしている世帯も多いようですが、長期間そのままにしておくと害獣や害虫の住処となり近隣に迷惑をかけてしまうことも想定されます。
もし、許容範囲の金額であるのなら、困ったことは本人や家族だけで抱えこまずに、外部にサポートを求めることも時には必要となります。
「ちょっとした困りごとの依頼先」5選
物価高で生活費のやりくりが大変な昨今、特に成果にこだわりがない作業(例として草むしり)などは、比較的安価であるシルバー人材センターやボランティア団体のサービスを先に検討することもひとつの手段です。
【1】シルバー人材センター
シルバー人材センターとは、主に60才以上の人材に働く機会を提供するための機関で指定を受けた公益社団法人が事業を担っており、高齢者の生活の安定や地域社会の発展を目的としたサービスを提供しています。原則、都道府県知事の許可を受けていて市区町村単位に設置されています。
・全国シルバー人材センター事業協会
「あなたのまちのシルバー人材センター」で最寄りのセンターを検索できる。
https://zsjc.or.jp/center/anatano
シルバー人材センターで行っている主な仕事は、技術分野、技能分野、事務分野、管理分野、折衝外交分野のほか、訪問介護事業に近い内容として「一般作業分野」「サービス分野」があります。
各地のシルバー人材センター毎に対応できる仕事は異なりますが、軽度生活援助では掃除や洗濯などの日常家事、庭木の手入れや除雪などのサービスも可能です。
依頼したい内容を自身がお住いの自治体のシルバー人材センターで対応可能か否かは確認が必要となり、委託料金は、1時間1,000円~2,000円位の費用感ですが地域や内容によって異なります。
本来は短期的な就業を条件に派遣されますが、介護のように特別な知識 、技能を必要とする仕事については継続的に依頼できるのがポイントです。
【2】ボランティアセンター
ボランティアセンターとは、ボランティア活動をしたいかたと、してほしいかたの橋渡し役の位置づけで、全国の各市区町村社会福祉協議会などに設置されています。家事援助や外出付き添いボランティアを依頼したいと思ったら、まずは対応できる団体が登録されているかをお住まいの市町村社会福祉協議会に確認してみましょう。
参考/地域福祉・ボランティア|全国社会福祉協議会
https://www.shakyo.or.jp/bunya/chiiki/index.html
【3】社会福祉協議会
社会福祉協議会は、地域の社会福祉活動推進を目的としている非営利組織です。中には高齢者向け生活支援サービスを提供しているところもあります。
サービスの利用時間ごとに一律料金を定めていることが多く、1時間当たり1,500~2,000円ほどになります。民間に比べると費用が安く支援が受けられるのは魅力です。
社会福祉協議会は所属している会員に対してサービスを提供するのが基本なのですが、中には非会員向けに少し費用を上乗せして提供している地域もあります。
お金の管理なども日常生活自立支援事業のなかで相談が可能です。
参考/日常生活自立支援事業
nshien_1.pdf
【4】市区町村の居宅サービス
各市区町村では、配食サービス、訪問理美容、布団乾燥、家事代行などの高齢者向け居宅サービスを独自に展開しています、高齢者のみの世帯が対象ですが、中には要介護者でなければ利用できないサービスもあるため、利用条件と料金もしっかり確認することが必要となります。お住いの自治体のホームページか高齢福祉課、介護保険課などで確認をしてみてください。
【5】民間企業や介護保険事業者からの居宅サービス
民間企業からは介護保険外サービスが数多く提供されています。利用条件が定められていないため、介護認定の有無も高齢者という枠にも限らず誰でも利用できます。
た、介護サービス事業者の中には、介護保険サービスと介護保険外サービスの両方を提供している事業者も少なくありません。
神奈川の例ですが、市町村介護予防・生活支援サービス情報提供システムとして、目的に合わせて対応できる事業所を公開しています。
※参考/神奈川県「市町村介護予防・生活支援サービス情報提供システム」
https://kana.rakuraku.or.jp/
「生活情報関連 千葉」など、お住いの都道府県名で検索すると近い情報が得られるかもしれません。
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今回、ご紹介した依頼先はサービス利用開始までの手続きが比較的簡単です。また要介護認定に縛られず家族でも依頼できるサービスもあります。
日常の生活支援での活用もですが、趣味・娯楽に関するサポートも提供されています。日常的に依頼するというよりも、時々、困った際に依頼できるところがあるという情報として抑えておくこと、そしてその時期が来た際は依頼も検討してみてください。