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暮らし

高齢者のための服選び5つのポイントを介護経験をもつ社会福祉士が解説「自分で着替えることを目標に」

 介護が必要な人や高齢になって身体が思うように動かなくなると、服の着替えがしにくくなってくる。「1日中パジャマで過ごしていては生活のリズムができませんし、家にこもりきりになってしまうことも」と、親の介護経験をもつ社会福祉士の渋澤和世さん。実体験をふまえ、高齢者の「脱ぎ着」がしやすい服選びについて解説いただいた。

この記事を執筆した専門家/渋澤和世さん

渋澤和世さん/在宅介護エキスパート協会代表。会社員として働きながら親の介護を10年以上経験し、社会福祉士、精神保健福祉士、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーなどの資格を取得。自治体の介護サービス相談員も務め、多くのメディアで執筆。著書『入院・介護・認知症…親が倒れ

身をもって感じた着替えの大変さ

 筆者はアラカン世代ですが、年相応という言葉を無視して好きな服、着たいと思う服を選んでいます。ほぼ毎日人に会う生活なのですが、疲れていて何も考えたくないときはワンピースが重宝しています。しかし、ワンピースには首の後ろにループボタンがあるタイプが多いのが難点です。右手首を骨折した後、首の後ろのボタンをとめるのに苦戦しました。

 また、突然肩が痛くなって腕を上がにくくなる、いわゆる五十肩になったときは、すべての服を着るのが苦痛でした。この先加齢や病気によって体の可動域が狭くなると、もっと服を着替える動作が難しくなるかもしれません。

 身体を動かすことが大変になっても配慮された形状の服があれば、自分で着替えることも可能です。私自身、誰かに着替えさせてもらうのではなく自分で着替えができる状態をなるべく長く続けたいと思っています。

 そこで、高齢になってからも着脱しやすい服の特徴を考えてみたいと思います。

高齢者が着替えやすい服の選び方

 高齢者が着替えやすい服の特徴は、「幼児がひとりで着替える」ときに選ぶ服と似ています。例えば下記のようなものです。

ゆったりとした大きさのもの

 同じサイズでも窮屈なつくりは手足が通りにくく着ていて息苦しくなることも。身幅がゆったりした服は全体的に楽に着ることができます。ゆったり着せようとサイズの大きなものを選んでしまうと、袖や肩幅が必要以上に長く広くなることもあります。胸からお腹にかけてのゆとり具合がポイントです。

伸縮性に優れた素材のもの

 綿100%は肌触りが良くて快適ですが、伸びがなく着替えの負担になります。伸縮性のある素材がおススメです。イメージはスウェット、トレーナー、ジャージ、ニットセーターみたいなものです。

 ジャージ素材はポリエステル製のものが多く乾きやすいです。運動時に着るイメージですが、高齢者は失禁や食べこぼしで汚しやすいことから洗濯の機会も多いので、速乾性があるのは助かります。

前後がわかりやすいもの

 前開きの服は、拘縮が強いかたの介助でよく利用されます。自分で着るとき、背部から前に衣類を回す動作が難しい場合があり、かぶるタイプの服のほうが着やすいこともあります。その場合でも前後がわかりにくいと反対に着てしまうこともよくあります。前にデザインがある服を選ぶとか、ワッペンなどで服の前に目印をつけるといいでしょう。

首回りはほどよくフィットするものを

 首回りは広すぎるとはだけてしまいます。高齢になると女性の中には、首元のシワが気になり隠したいというかたも多いものです。首元が大きく開いた服は苦手なかたもいらっしゃるので、夏物でもなるべく首のまわりは狭めのほうが安心です。

 とはいえ、首元が窮屈だと苦しい、頭が出にくいなど着替えにくいことも。程よいフィット感のものを選んで欲しいと思います。

 また、服に袖を通しにくい人には、ラグランスリーブがおすすめです。腕まわりが広いので比較的ラクに袖を通せます。肘の通りやすさをポイントにしてみてください。

ボトムスのウエストはゴム仕様のもの

 ズボンはウエストにゴムが入ったものが安心です。腰回りの上げ下げのしやすさは、自分で着替えるための大きなポイントです。また腰まで包み込むくらいの深さがあるものだと前かがみになったときに背中が出ず、腰も冷えないので安心です。

ボタンは大きめのもの

 大きめボタンは扱いやすく手先のリハビリにもなります。通常のボタンホールは縦や横になっていますが、シニア向けに斜めのボタンホールの服もあり、片手でもとめやすくなっています。それも難しい場合は、スナップボタンもあります。パチッと押すとボタンがとまるので、指先が思うように動かしにくいかたも簡単に着替えることができます。

高齢者の身体の特徴に配慮した服とは?

 高齢になると、身体状況が変わることがあります。近年はその状況に合わせた洋服も販売されています。

腰が曲がっている

 お辞儀をしているかのように腰が曲がってしまう変性後弯症、脊柱後弯症は60~80代の女性に多い病気といわれています。腰が曲がった状態で上着やズボンを着用すると前に重心がかかり、どうしても背中側が出てしまいます。

 こうした悩みを抱える人のために、前は短め、後ろを長めに縫製された服が販売されています。ズボンも股上が深く後ろ側が長いものなら、立っても座っても背中が出にくい仕様になっています。「高齢者 腰曲がり 服」で検索すると、様々な商品を確認することができます。

車いすを利用している

 車いすに座ると、一般的なズボンだと裾が上がってしまい、足首が出てしまいます。また、座ったときにシャツや背中が出てしまうこともあります。

 ズボンの場合、膝にタックがあり座ったり立ち上がったりしても、裾の位置が変わらないというものも販売されています。「車いす用 ズボン」などで検索してみてください。

 アウトドアブランドのmont-bellでも車いすのかた用のパンツを販売しています。お尻の部分に縫い目がなく長時間車いすに座ったときのことを考えて縫製されています。

■車いす用のストレッチパンツ

パラ トラウザーズ/モンベル
https://webshop.montbell.jp/goods/list.php?category=67001

色:黒・紺
価格:1万2100円

■インクルーシブウェアを手軽に通販で

キヤスク with ZOZO
https://zozo.jp/brand/kiyasukuwithzozo/

 障害や病気のある人向けの服のお直しサービス「キヤスク」(コワードローブ)とZOZOが協業し、車いす利用者にも着やすいインクルーシブウェアをオンラインで受注販売。

***

 高齢になると、身体の衰えや気力の低下から洋服の着替えが億劫に感じることがあるかもしれません。入院時のようにパジャマのまま1日を過ごす日々が続くと、生活リズムが崩れるだけでなく、日付や季節感を忘れ、認知機能の低下につながるともいわれています。

 着替えは気持ちに変化をもたらし手足を動かす運動にもなります。着脱しやすい形状のものを選び、長く自分で着替えることを目標にしてみてください。

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